愛知県西尾市のPFI事業見直しに伴う工事中止命令で発生した増加費用約5900万円を、特定目的会社(SPC)「エリアプラン西尾」が市に支払いを求めた訴訟の判決が3月26日に名古屋地方裁判所で言い渡された。唐木浩之裁判長は市側に約3400万円の支払いを命じた。19年秋に裁判所が示した和解案と同じ内容となった。市側は先の和解案を受け入れずに争ってきたが、判決を受けて一段と難しい対応に迫られそうだ。

 愛知県西尾市は、PFI事業見直しで2019年4月にSPCとの契約変更を通知し、2工事を市で単独発注した。世論に訴えてSPC「エリアプラン西尾」側の抵抗を抑え込もうとしたが、2工事のうち一つは国家賠償請求訴訟に発展。もう一つも西尾市が申し立てた民事調停の足枷となる事態に陥っている。2つの工事の経緯を振り返るとともに、改めて西尾市に現状を突破する打開策があるのかを検証する。

 愛知県西尾市のPFI事業の見直しが始まって2年半―。2020年1月から民間事業者による国家賠償請求訴訟が始まるほか、2018年5月にスタートした特定目的会社(SPC)の損害賠償請求訴訟の判決は20年3月に言い渡される。19年4月からは西尾市の申し立てによる民事調停も始まったが、話し合いは暗礁に乗り上げている模様だ。これまでPFI事業見直しを主導的に進めてきた中村健市長の任期も20年7月で残り1年となる。次期選挙に向けて見直し成果をアピールしなければならない時期だが、事態は混迷を深め、泥沼の様相を呈している。

 愛知県西尾市のPFI事業を実施しているSPC(特定目的会社)のエリアプラン西尾(社長・岩崎智一氏)は、西尾市と中村健市長に対して、PFI事業見直しで発生した2017年度分の増加費用約6000万円の支払いを求め、名古屋地方裁判所に8月6日付けで提訴した。西尾市とSPCとのPFI事業見直し協議は継続中で、2018年度分の増加費用の支払いも含めて、今後の協議が一段と難航すると予想される。

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 西尾市が見直し方針を打ち出したPFI事業は、2014年3月に策定された「公共施設再配置実施計画2014→2018」に基づいて進められてきた。名古屋大学の恒川和久准教授は、公共FM(ファシリティーマネジメント:施設管理)の専門家として、数多くの地方自治体をサポート。西尾市でも公共施設再配置アドバイザーを務め、18年2月にはPFI事業見直し方針について市長に提言書を渡した。

愛知県西尾市は、総額198億円のPFI事業について、2018年3月5日に作成した「検証報告書・見直し方針」に基づき、受託企業であるSPC(特別目的会社)エリアプラン西尾(岩崎智一社長)との見直し協議を5月10日から開始した。

西尾市は、PFI対象32事業のうち10事業の取りやめ、3事業の計画変更を盛り込んだ見直し方針に基づいてSPCに契約変更を求めていく。SPCは、契約変更に伴う損害賠償の支払いや事業体制の再構築などの問題解決を要請する。

6月末までに市が具体的な見直し案を提示しない場合、SPCは契約を履行するために中断している工事を再開する方針だ。今後の協議は難航することが予想され、結果的に公共施設の整備計画が遅れ、市民生活に影響を及ぼすことが懸念される。

愛知県西尾市が進める総額198億円のPFI事業の見直し協議が暗礁に乗り上げている。今年6月の選挙でPFI事業見直しを掲げて当選した中村健市長が、公共施設の建設工事などを発注した特定目的会社(SPC)のエリアプラン西尾と8月から見直し協議を行っていたが、10月27日付けでSPC側の同意なしに工事の即時中止を通知。SPC側は困惑し切っている。

愛知県西尾市は昨年から、民間資金を活用し公共施設を整備する総額198億円のPFI事業を推進してきた。それが市長交代により、契約見直しの危機に陥っている。今年6月に行われた市長選挙で、PFI事業見直しを掲げた中村健氏(38)が、前職の榊原康正氏(77)を破って当選。8月にPFI事業の特定契約事業者であるエリアプラン西尾(社長・岩崎智一氏)に通知書を送りつけ、建設工事の中止を迫っているのだ。

ーー続きは「FACTA ONLINE」で。

 コラム「家づくりの経済学」(2003年5月〜2006年10月)をMKSアーカイブとして再掲載する。内容は原稿執筆当時のもので、住宅ローン金利も住宅金融公庫時代のものが使用されており、古いままの情報も多いので注意して読んでいただきたい。一方で10年経っても、ほとんど進展していない課題も少なくないことがわかるだろう。

(1)はじめに(2003-05-09)

(2)なぜ、家をつくるのですか?(2003-05-16)

(3)住宅すごろくの終わり(2003-05-17)

(4)家の二面性(2003-06-25)

(5)家の資産価値(2003-06-26)

(6)日本の住宅の平均寿命(2003-06-27)

<順次、更新中>

 明治5年(1872)に創業を開始した富岡製糸場(群馬県富岡市)が7月12日、世界遺産へ推薦されることが決定した。日本の近代化の礎を築いた産業遺産を世界遺産に登録しよう!と、群馬県が正式に活動を開始したのは2003年のこと。世界遺産候補として2007年に国内暫定リストに掲載され、他の候補に比べて推薦状づくりが進んでいることが評価されて今回の推薦が決まった。2014年の登録をめざす。 ――09年7月に群馬県庁世界遺産推進課の土屋真志さん(現在は農政部蚕糸園芸課)に世界遺産登録への取り組みをインタビューして雑誌に掲載しました。世界遺産に関係する部分を再編集し、“ものづくり立国・日本”のルーツが世界遺産に登録されることを期待して、MKSアーカイブとして掲載します。

はじめに

 1997年にゼネコン危機が始まる頃から、日本の建設業は、多くの構造的な問題を抱えていると言われてきました。しかし、それは建設業界に限ったことではなく、新聞などのメディア業界も同じです。私が在籍していたフジサンケイグループの日本工業新聞(現・フジサンケイビジネスアイ)もその当時(90年代後半)から様々な問題を抱え、抜本的な経営改革をしなければいけない状況でした。そのようなゴタゴタもあって、新聞社にいられなくなって、10年前に、仕方がないから「辞めます」と言って、フリーのジャーナリスト活動を始めたのです(笑)。

 日本でも、産業構造の大きな変革が始まった――そういう思いもあって、私の一番関心のあった建設業界にターゲットを絞って、産業構造の改革・変革が必要なのではないかという視点で、この10年間、取材活動を続けてきました。

 なぜ、産業構造の変革が起こり始めたのか?それには様々な要因があるとは思いますが、ちょうど10年前は「IT革命」という言葉が非常にはやっていた時期でした。最近ではIT革命なんてことをあまり言われなくなりましたが、この10年間、産業革命以来の変革をもたらすと言われていたIT革命がボディーブローのようにじわじわ、日本の経済・産業に影響を与え続けてきたと思います。

 今回の尖閣ビデオ流出事件(2010年11月4日)を見ても、あらゆる情報がオープンになりやすくなりました。それを透明性と言っていいのかどうなのか分かりませんが、企業も覚悟してビジネスを展開しなければいけない時代になった。もう談合をやろうと思っても、できないということですね(笑)。

 同時に、新興国でもインターネットを通じて、先進国の新しい技術情報を簡単に入手できるようになりました。リープフロッグ(leap frog)と言われますが、カエル跳び現象が非常に起こりやすくなりました。ちょうど10年前、日本と韓国はほぼ同時にe-Japan戦略とe- Korea戦略を始めたのですが、10年経ってみたら、日本が大きく遅れて、韓国が先に行ってしまったという状況が起きたわけです。

 MKSアーカイブに、2001年8月に執筆した建設業の構造改革に関するコラムを再掲載した。「週刊ダイヤモンド」6月5日号でも、専門工事業者の悲惨な状況が紹介されていたが、先日話を聞いた専門工事業の社長からも「手形を乱発するゼネコンなんて、もう必要ない!」との激しい怒りをぶつけられた。その時に、ふと10年前に執筆したコラムを思い出して読んでもらったら、「全く君の言う通りだ。しかも、10年前よりも状況はますます酷くなっている」と嘆いた。

 10年経っても、建設業は何も変わらず、事態はますます酷くなっている。まさに日本経済の地盤沈下を映し出しているかのようである。

・【建設】建設業が進めるべき産業構造改革に関する一考察―私見・ゼネコン再編論から(2001-08-10)

 2002年5月〜2003年5月まで建設業向け情報サイトに連載したコラム「新・建設産業再生プログラム(全43回)」のうち、「透明性の確保」について考察した8回分を再録しました。

(1)自己責任に基づく契約関係を築く(2002-11-15)
(2)情報の透明性を確保する(2002-11-23)
(3)出来高払い方式が普及しない理由(2002-12-17)
(4)出来高払い方式に取り組む先駆者たち(2003-01-27)
(5)ヒト情報の透明性(2003-02-13)
(6)丸投げ禁止から見えるヒト情報の不足(2003-02-24)
(7)技術・技能を客観的に評価する基準(2003-03-12)
(8)住基カードを活用したヒト情報の管理(2003-03-17)

 2001年6月〜2002年3月まで建設業向け情報サイトで連載した「私見・ゼネコン再編論(全37回)」のうちゼネコン再編のあり方を考察した5回分を再録しました。
(1)再編パターンも多様化へ(2001-08-28)
(3)機能再編の基盤づくり(2001-09-11)

  建設業は、市場規模だけをみれば、いまだに50兆円近い巨大産業だ。しかし、建設業界で働く500万人以上の人たちは希望と誇りを持って働いているだろうか。明るい未来を信じて建設業に就職する若い人たちはどれぐらいいるだろうか。建築界に明日はあるか?―そう問われて真っ先に思うのはそのことだ。

 不動産仲介の両手取引禁止について、建設・不動産市場の「全体最適化」の視点から執筆した記事「建設業の将来ビジョンを考える―建設2次市場をどう育てるか?(2009-03-14執筆)」を掲載する。竹中工務店の社内報2009年4月号に寄稿した。7月に未来計画新聞に掲載したコラムでは、両手取引禁止を強調しようと利益相反だけの話を書いたが、単に両手取引禁止だけを考えているわけではない。地価の低い地方の不動産業者の経営が立ち行かなくなる可能性も考慮して、仲介手数料の上限(取引価格の3%+6万円)撤廃を認め、その代わりに数十万円、数百万円もする高額なサービスをパーセントで決める不明朗な商習慣を改め、事前に見積明細書の提示を義務付けるとのアイデアを示した。不動産流通コストの透明化を図ることで、消費者にとってより良いサービスを実現するのが狙いである。以下に記事を再掲載する。(2009-10-05に記載)

 1995年春、急激な円高と日米自動車摩擦で、トヨタ自動車は13年振りに国内シェア40%を割り込む状況に直面していた。病気に倒れた豊田達郎社長の後を継いで、8月に社長に就任した奥田碩氏はシェア回復に向け新車開発と販売網の見直しに打って出る・・・


「判断力と決断力―トヨタ自動車はシェア40%割れの危機をいかに乗り越えたか」(
)(2002-06-10執筆)

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