【建設】新型発注者「投資家」への対処法(4)―不動産ファンドが及ぼす影響は?(2001-04-01)

 不動産投資信託(J-REIT)の上場に向けて、名乗りをあげる不動産ファンド(投資法人)が相次いでいる。すでに三菱地所、三井不動産、森トラスト、東京建物の大手不動産会社4社がそれぞれ、生保やゼネコンなどと組んでファンドを組成することを表明。早ければ、5月の連休明けにも初の上場ファンドが登場する見通しだ。(注・実際にJ-REITが上場したのは2001年9月10日だった)

 すでに三井不動産は、2,000億円のファンドで、20棟以上のオフィスビルを取得済みで、三菱地所も3,000億円のファンドを組成して上場をめざしている。森トラストも年内に800億円規模、東京建物も今年8月までに500億円規模のファンドを組成する計画だ。将来的には、三井、三菱が1兆円規模、森トラスト、東京建物で3,000億円規模をターゲットに設定しているほか、外国人投資家も「三井など先発組の動向を見ながら投資を開始する」(外資系不動産会社)と見られており、J-REIT市場はいずれ10兆円規模にまで拡大すると期待されている。

 せっかく盛り上がりをみせているJ-REITだが、肝心のファンドに適した不動産物件が不足している。従来の不動産投資は、地価上昇によるキャピタルゲイン狙いが主だったため、賃料収入でキチンと利回りを出せるように建てられたオフィスビルなどの物件が少ないためなのだろう。

 同問題に詳しいニッセイ基礎研究所の松村徹氏は「現在、日本の不動産市場でファンドに適した物件は、せいぜい7兆円程度だろう」と試算する。この7兆円も企業が自社保有している本社ビルなどを含めた数字で、7兆円全てがファンドに組み入れられるとは到底、考えられない。ここ数年は財務リストラなどで本社ビルを売却する企業も増えており、これまでにNKK、日産自動車、フジタなどの本社ビル(旧本社も含む)がファンドに組み入れられる見通しだが、不動産ファンドに適した物件が売りに出ると、買いが殺到するという異常事態が昨年から続いている。

 既存物件でファンドに適したものが不足していれば、新たに作ろうとする動きが出るのは自然の流れ。とくに注目されているのが賃貸マンション。「立地の良い優良賃貸マンションは、空室リスクも小さく、利回りを確保しやすい」(森トラスト)と、改めて見直されているのだ。実際に「賃貸マンションの建設計画だけで、30棟以上の引き合いが寄せられている」(大手ゼネコン役員)といった景気の良い話も聞こえてくる。

 シリーズの第2回目で、不動産投資でノンリコース(非遡及型)の不動産担保ローンの利用が拡大している話を紹介した。一般的にはオフィスビルや賃貸マンションなど稼動中の物件を対象にしたものが多いが、建設前の物件を対象に建設資金を融資するノンリコースの『コンストラクションローン』も利用され始めている。ファンドへの売却を前提とした建設プロジェクトでは、このコンストラクションローンを利用するケースも増える可能性は高い。この場合は投資家である金融機関自らが、工事の出来高をチェックしながら建設資金を融資するわけで、建設業者としてはますます金融機関への配慮が必要となりそうだ。

<シリーズ第2回の補足解説>
 「ノンリコースローンのオフバランス化」について質問をいただきました。ななり乱暴な表現で説明したので、誤解を受けた方もいらっしゃったかもしれません。

 「ノンリコースローンのオフバランス化」は、ローンだけをオフバランスできるわけではなく、もちろん同時に対象不動産もバランスシートから切り離さなければなりません。メリルリンチ銀行の不動産ノンリコースローンの資料をみると、融資対象となる資産と、顧客が保有している資産とを分別管理するために、顧客側が有限会社を設立することが融資条件の一つとなっています。有限会社の資産に限定して債権回収が行われるので、別会社化が可能となるわけですね。

 金融機関は、これらのローンを集積して、ローン資産の流動化を事業とするSPC(特別目的会社)を利用して最終的に証券化します。この証券化手法によって、大口融資に限られていたノンリコースローンの適用が、メリルリンチ銀行の場合で1億5,000万円からと、比較的小口ものにも適用できるようになり、利用が広がっていると言えそうです。
(第5回につづく)