富士通の社長・会長を務めた関澤義氏が、2021年1月20日、誤嚥性肺炎のため逝去した。享年89歳。最後にお会いしたのは、私が日本工業新聞を退社して2年後、関澤さんは会長を退かれる1年前の2002年だったと記憶している。東京・新橋の寿司屋で2人きりで会って、ざっくばらんに話を聞いた。いつも飄々としている印象があったが、もともと通信畑の技術者だったので、コンピューター事業がメーンとなった富士通を率いるのは何かと苦労があったのではないかと思っている。関澤さんを偲びつつ、当時を振り返ってみたい。ご冥福をお祈りします。

注)かなりの長文記事(約8000字)なので、時間があるときにごゆっくり。

 物流ITベンチャーのHacobu(ハコブ、社長・佐々木太郎氏)は2019年9月19日、大和ハウス工業、アスクルに続き、三井不動産、日野自動車とも資本業務提携を結んだと発表した。物流施設事業でライバル関係にある大和ハウスと三井不動産が同じ物流情報プラットフォームに相乗りするのは画期的な出来事だ。筆者は2年前に佐々木氏(写真=中央)を取材して月刊FACTAでITベンチャーが物流革命をリードする期待を込めて記事にしたが、今回の提携はその実現に向けた大きな一歩。佐々木氏の手腕に期待するとともに、物流情報プラットフォーム構築に向けて連携を決断した大和ハウスと三井不動産の経営判断を高く評価したい。
物流大手が「ITベンチャー」争奪戦――ヤマト、大和ハウスらができたてITベンチャーと提携加速。物流危機の突破口となるか。(月刊FACTA10月号:2017-09-20)

 今月から「テレワーク月間」がスタートした。総務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省、学識者、民間事業者などで構成するテレワーク推進フォーラム主催で、国民にテレワークの推進を広く呼び掛けるのが狙いのようだ。「テレワーク」と聞くと、2005年に総務省が最初に行ったテレワーク実証実験に筆者も取材を通じて関わったことを思い出す。10年前と現在を比べて大きく変わったのは、日本中どこでも高速インターネット網に接続できること、スマホなどのモバイル端末の普及、クラウド環境の整備など、テクノロジーが大きく進化したことだろう。問題は労働環境や企業や役所の意識がどこまで変われるか―。当時、総務省からの依頼でテレワークについて筆者が書いた原稿が残っている。「テレワークによって『組織』の壁を乗り越えて『兼業』も可能になる」―そう10年前に筆者が予見したような自由な働き方改革は実現するのだろうか。

  「IT(情報技術)が分からないという企業経営者はすぐに退任していただくべきではないか」―。

 昨年12月から始まった経済産業省のある審議会でそんな過激な発言が飛び交っている。発言の主は元NTTドコモ取締役で慶応大学大学院特別招聘(しょうへい)教授の夏野剛氏だ。全てのモノがインターネットにつながるIoT(インターネット・オブ・シングス)時代を目前にして、日本の産業競争力の低下を懸念する発言が相次いでいるのだが、そうした強い危機感を日本の産業界全体でどこまで共有できているのだろうか。・・・(続きはSankeiBizで)

 マイナンバー(社会保障・税番号)制度の導入まで1年を切った。10月には個人に「個人番号」の通知、法人には「法人番号」の通知・公表が行われ、来年1月からはマイナンバーの利用と「個人番号カード」の発行が始まる。しかし、マイナンバーへの国民の関心が高まっているとは言い難い。2002年8月に猛烈な反対運動の末に住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)が運用され、住基番号も通知されたが、国民生活に特段の変化はなかったとの実感があるからだろう。・・(続きはSanekiBizで)

 とうとうネット犯罪の被害を体験してしまった。発端は10月5日の日曜日に留守電に入っていたクレジットカード会社からの電話。「確認したいことがありますので、また電話します」との伝言に不吉な予感がよぎり、筆者から電話を掛け直した。

 「昨日、ゲームソフトを購入しましたか」と聞かれたので「いや、全く身に覚えがない」と言うと、すぐに事務的な説明が始まった。

 「日本の経済社会の風景を変える」国家戦略特区法案が今月5日に閣議決定され、国会審議が始まった。法案成立後、来年早々に全国で数か所の特区が指定される見通しだ。特区内は世界で一番ビジネスがしやすい環境を整え、ニューヨークやロンドンのような国際都市をめざすという。

 米アップルコンピューター社のスティーブ・ジョブズ氏が10月5日に死去して世界中が大騒ぎだった。1980年代後半にコンピューター担当記者だった自分にとって、彼は超有名人ではあったが、すでにアップルの経営からは外れていて接点がなかった。アップルで思い出すのは「米ゼロックス社が、アップルに対してコンピューターのグラフィッカルユーザーインターフェース(GUI)の著作権を主張する準備を進めている」という記事を1990年に書いたことだ。記事が掲載されると、アップルとGUIの著作権訴訟を展開していたマイクロソフトから電話があり、「事実とすれば世界的なスクープだ!」と興奮した様子だった。1年後に同じ内容の記事を日経産業新聞が一面トップで掲載。その後、パソコン市場はマイクロソフトのWINDOWSが席巻し、経営危機に陥ったアップル再建のためにジョブズ氏が1997年に復帰することになる。現在も、アップルと韓国サムスンで特許紛争が続いているが、今度はどのような結末となるのだろうか?

 情報大航海プロジェクトを覚えているだろうか―。2年前にマスコミでも”グーグル対抗”として大きく取り上げられたIT国家プロジェクトだ。2007年度に事業が開始されて1年半が経過し、9月30日から開催された展示会「SEATEC2008」=写真=で大々的にその成果が展示された。大量の情報の海の中から必要な情報を取り出して新しいビジネスにしよう!との狙いは判るのだが、情報そのものを商売にするのはそう簡単なことでない。役所や企業が隠しているリスク情報を引っ張り出せるようなサービスが実現するのなら利用するのだが…。

 今月4日に設立20周年を迎え、ソニー本社で記念シンポジウムが開催された「ソニーコンピューターサイエンス研究所」を設立したのは、ロボット犬「AIBO」の開発者として有名な土井利忠氏である。06年5月にソニーを退職して7月には生前葬を執り行っているので、いまは天外司朗氏と名乗っているようだ。私が最後に土井さんに会ったのは、92年にNECとソニーがUNIXワークステーションで業務提携した時のこと。手元にはソニーのUNIXワークステーション「NEWS」の足跡を独自にまとめたレポート
SONY『NEWS』の戦略」(1989年3月20日執筆)
が残っている。土井さん自身もあまり語っていないNEWSの歴史を目撃者として記録しておく。
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 JR東日本は、電子式プリペイドカード「スイカイオカード」(旧型カード)の使用を、利用者への予告なしに3月末で打ち切っていた。スイカイオカードの利用者である私自身が体験した。JR東日本では電子マネー機能付きの新型カードに無償で切り替えているので問題ないという立場だが、電車運賃だけに利用できるスイカイオカードのチャージ領収書を取材交通費の経理処理に利用するため、わざと電子マネー機能を外してきたのに、余計なお世話である。確かにSuicaはJR東日本という民間企業が提供しているものだが、いまや社会システムとして定着したサービスだ。領収書の取り扱いも考慮できない企業に、電子マネーのような重要な社会システムの構築を任せて大丈夫なのか?
――コラム

「電子マネーとは何ぞや?」

で電子決済と領収書について考察していますので、お読みください。

 伊集院丈氏こと、鳴戸道郎・富士通元副会長が昨年11月に出版した「雲を掴め/富士通・IBM秘密交渉」(日本経済新聞出版社)を読んだ。最後に伊集院さんにお会いしたのは2002年だったと記憶しているが、いずれ自ら本を執筆するのではないか?との予感はあった。私自身も取材に奔走した歴史的な事件について当事者から語られたことに感慨深いものを感じる。その後、両社の交渉が最終決着したのが1988年11月で、今年はちょうど20年目の節目だ。日本のIT産業が置かれている現状を考えるとき、この歴史的な事件をどのように位置づければよいのだろうか?

写真:本の上にある黒い円筒形に物体は、鳴戸さんにいただいた富士通製汎用コンピューター用の半導体チップ

 NEC社長を1980年から14年間務めた関本忠弘氏が11月11日に死去した。私も関本氏には何度か取材していろいろな思い出がある。とくに90年10月に日本工業新聞(現・フジサンケイビジネスアイ)に掲載した記事「98帝国が崩壊する日」では関本さんから猛烈な抗議を受け、広告出稿を全面停止するという圧力までかけられた(最後は何とか回避されたが…)。死去された方のことをどこまで書いて良いものかはいつも迷うところだが、この期を逃せば書き残す機会を逸してしまうだろう。事実関係を記録しておく。

 私がコンテンツ制作などで協力している日本IBMのウェブサイトが10月1日に発表になった「
グッドデザイン賞
」を受賞した。私の顔写真も同サイトにしばしば掲載されているので、気付かれていた方もいたかもしれないが、企業がウェブサイトを「メディア」としてどう活用しようとしているのかを体験させてもらっている。グローバルな視点から経済・社会にどのようなイノベーションが起こるのかを予測し、世界の
Thought Leadership
を引っ張っていこうとするIBMの取り組みは、日本企業が世界で戦っていくうえでも必要なことかもしれない。
 人間、年を取るほど機械のボタン操作が億劫になるものだ。急速に少子高齢化が進むなかで、効率化のためのITツールをどうしたら高齢者にも使ってもらえるようになるのか?と思い悩んでいたら、3次元キャラクターを携帯電話の画面上で動かす3Dグラフィックエンジン「マスコット・カプセル」を開発したエイチアイ(HI)の川端一生社長をインタビューする機会があった。3次元キャラクターを使って人間と機械とのインターフェースに革命をもたらそうと情熱を燃やしている。
―記事は、フジサンケイビジネスアイとアントレプレナーが提供する起業家応援サイト「アントレステージ」でお読みください。→MKSアーカイブとして未来計画新聞内に「
記事
」を再録しました。(2009-12-05)
――上場まで19年。最近で10年以内の短期間で上場するIT企業も多いですね。
川端
 エイチアイ(HI)が設立した当時は、上場など全くリアリティがなかった。最初から意識していたら、上場に向けて組織体制も整えて、キレイな形で仕上げることもできただろうが、最初に野村證券さんに声をかけてもらったのが1996年。まず「経営企画室とは何か?」から始めなければならない状況だった。社歴が長いと暗黙知で経営が回っている部分も多くなる。社内手続きを明文化したり、開発工程をマニュアル化したりする必要性は判っていても、なかなか体が反応しない。そのうち社内から「上場しなくてもやっていけるのでは…」との声が上がったりして大変だった。

 エイチアイ(HI)にとって最初の独自製品となる3Dエンジン「マスコットエンジン」の開発をスタートした1994年は、ゲーム業界にとってまさにエポックメーキングな年だった。次世代ゲーム機と呼ばれたソニー・プレイステーション、セガサターンがその年のクリスマス商戦前に相次いで発売され、ゲームソフトはいよいよ3D時代に突入した。

 マスコットエンジンは、95年からゲームソフトへの採用が決まり始め、それに伴ってHIではゲームソフトの受託開発の仕事が急増。既存の受託開発事業に加えて、ゲームソフトの開発にも積極的に取り組んだ。

 ソフト開発会社のエイチアイ(HI)が、創業19年目となる今年(2007年)4月にジャスダック市場に上場を果たした。ソフトの受託開発から出発したHIが大きく飛躍するきっかけとなったのが、3D(三次元)画像のゲームキャラクターを携帯電話でも動かせるようにした3Dグラフィックエンジン「マスコット・カプセル」の開発だ。相手が機械でも画面にキャラクターが登場すると、人は親近感を感じるもの。複雑化する携帯やデジタルテレビなどの操作も、キャラクターを使って飛躍的に向上できないか?技術開発型企業にHIを育てた社長の川端一生は、人間と機械とのインターフェースに革命をもたらそうと情熱を燃やしている。

 「公共工事CALS/EC不要論」を今年1月にブログに掲載したら「不要論を書いた背景を話してほしい」との依頼があって講演する機会があった。「CALS/ECも、このままでは80年代に大失敗に終わったIT国家プロジェクト”シグマ計画”の二の舞になってしまうのではないか?」と話をした。IT業界では有名なシグマ計画も、建設など他の分野ではほとんど知られておらず、その失敗が学ばれていないことが判った。社会保険庁の消えた年金記録問題も役所でIT化を推進する過程で発生した問題である。なぜ役所主導のITプロジェクトは失敗を繰り返すのだろうか?

 インターネットサービスプロバイダーのニフティから入会17周年の「ありがとうメール」が5月2日に届いた。顧客リストから自動的にメールを送信する仕組みができているのだろうが、受け取るたびに電子メールを使い始めた当時の忘れられない出来事を思い起こさせる。ちょうど17年前のゴールデンウィークの最中に、日本で初めてコンピューターウイルスに関する事件が新聞で大きく報じられた。その取材をしようと、初めての電子メールを富士通社長だった関澤義さんに送信した。
 写真:私が初めて電子メールを送信した日本語ワープロ「文豪ミニ7HG」(NEC製)

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