「日本の経済社会の風景を変える」国家戦略特区法案が今月5日に閣議決定され、国会審議が始まった。法案成立後、来年早々に全国で数か所の特区が指定される見通しだ。特区内は世界で一番ビジネスがしやすい環境を整え、ニューヨークやロンドンのような国際都市をめざすという。

 国際都市には、ビジネスチャンスを求めて国内だけでなく世界のあらゆる国から人間が集まってくる。現在はアッパークラスのビジネスマンしか想定されていない印象だが、外国人の観光客や住民が増えれば、彼らにモノやサービスを提供するミドルクラス以下の外国人労働者も集まってくる。


 国内からも技能労働者不足が表面している建設業界では、2020年の東京オリンピックに向けて外国人技能労働者の研修制度を現行の3年から5年に延長してほしいとの声が出始めている。


 国家戦略特区では外国人向けの医療、教育サービスを充実するための規制緩和が検討されているが、今後、増加する外国人にも日本人と同様の公共サービスを提供するとともに、住民としての義務を果たしてもらう必要があるだろう。


 昨年7月から外国人住民も住民基本台帳に登録され、今年7月からは住基ネットと住基カードの運用が始まった。外国人住民にも日本人と同じ全国共通の「住民票コード」が割り振られ、住民票の交付が受けられるようになり、希望者は住基カードを保持できる。将来的には住基システムから生成される社会保障・税番号(マイナンバー)が外国人住民にも発行されて税金が徴収される仕組みが構築される見通しだ。


 筆者は自動車運転免許証を保持していないので、身分証として住基カードを10年以上活用している。今年3月末の累積交付枚数は744万枚で、日本人の20人に1人しか保持していないが、各種公的証明書の発行や銀行口座開設などで何かと便利だ。この住基カードを外国人住民にはできるだけ保持してもらってはどうだろうか。


 今年8月に発表された住民基本台帳に基づく日本の総人口の統計から外国人住民を加えた数字に変更された。3月末の総人口1億2837万人のうち外国人住民は198万人で、比率は1.5%に過ぎない。しかし、外国大使館の多い東京都港区は1万8648人で14.4%、新大久保を抱える新宿区は3万2521人で10.1%と、地域によって外国人住民比率が1割を超えており、今後も増えていくだろう。


 中国系住民が多い豊島区の不動産業者は「外国人住民が3割ぐらいまで増えれば、東京の住宅市場はもっと活性化するだろうが、住民トラブルが増えることも覚悟する必要がある」と語る。外国人が日本に住み始める時に、最初に住居を世話するのは不動産事業者だ。住居が決まったらすぐに住基カードを取得してもらうことで、その後の転居などの手続きが便利になるだろう。


 不法就労問題が多いと言われる建設現場でも、住基カードの提示があれば、コンプライアンスが求められる大手ゼネコンでも外国人技能労働者を活用しやすくなる。ビジネスしやすい環境だけでなく、生活しやすい環境を整えることが国際都市の実現には不可欠である。(2014-05-16:未来計画新聞掲載)

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