【IT】JR東日本、スイカイオカードのサービスを予告なしに3月末で打ち切り―電子マネーの使途をどう証明するのか?(2008-04-11)

s-img017.jpg JR東日本は、電子式プリペイドカード「スイカイオカード」(旧型カード)の使用を、利用者への予告なしに3月末で打ち切っていた。スイカイオカードの利用者である私自身が体験した。JR東日本では電子マネー機能付きの新型カードに無償で切り替えているので問題ないという立場だが、電車運賃だけに利用できるスイカイオカードのチャージ領収書を取材交通費の経理処理に利用するため、わざと電子マネー機能を外してきたのに、余計なお世話である。確かにSuicaはJR東日本という民間企業が提供しているものだが、いまや社会システムとして定着したサービスだ。領収書の取り扱いも考慮できない企業に、電子マネーのような重要な社会システムの構築を任せて大丈夫なのか?
――コラム「電子マネーとは何ぞや?」で電子決済と領収書について考察していますので、お読みください。

自動券売機で電子マネーをチャージできない!

 4月になってJRに乗ろうと、駅の自動券売機にスイカイオカードを挿入した時のことだ。画面が急に切り替わって、いつものチャージ画面ではなく、「新型カードに交換します」との表示が出てきた。何かの間違いだと思って、近くの駅係員に聞くと「最後がきちんと記録されていないんじゃないですか?」と、まるで私が無賃乗車でもしたかのような言い方である。

 他の券売機でも試したが、同じ表示が出てくる。発車の時間が迫っていたので、とりあえず残りわずかな残高で改札機を通ってみた。それは大丈夫だった。下車駅に降りて、自動清算機でチャージしてみると、チャージは可能だった。念のために改札機を出て、券売機でチャージしようとすると、やはりチャージができなくなっていた。

 「スイカイオカードをしばらくは利用したいのですが…」と、駅の若い係員に聞くと、「新型カードに代えてください」と、ぶっきらぼうに一言。「こちらも事情があって、このまま使いたいと思っているのですが…」というと、ぷぃと横を向いて完全に無視である。JR東日本の若い駅員の質の悪さは、これまでも何度も経験して判っているが、スイカイオカードのサービス停止が一方的に行われていたことは判明した。

プリペイドカードの登場で、取材交通費清算が伝票処理しなくて済むように

 私が、スイカイオカードにこだわる理由は、電子マネーと領収書の関係が現時点では明確になっていないからである。その顛末は、一度、総務省の外郭団体である地方自治情報センターの機関紙のコラムに執筆。地方自治体の方からも「面白かった」と好評だった。電子決済による領収書が国税関係書類として認められるかどうかが判らなければ、従来のやり方を踏襲せざるを得ないと考えるのも当然だろう。

 私が新聞社に入社した当時は、取材交通費の清算は専用の伝票に行き先と料金を書いて提出しなければならなかった。今ならパソコンで経路検索して料金を簡単に調べられるが、当時は手帳にメモして伝票に記入しなければならず、本当に面倒な作業だった。それが劇的に便利になったのは、プリペイドカードのイオカード、SFカードが登場してからである。伝票を書かずに、プリペイドカードを番号管理して現物支給されるようになった。会社でも、プリペイドカードの購入費用を取材交通費として経理処理できたからだろう。

 2000年末に新聞社を退社して、個人事務所として有限会社を設立したあとも、顧問税理士には取材交通費はタクシーは領収書、電車・地下鉄はプリペイドカード購入時の領収書で処理することを認めてもらった。2001年11月にスイカイオカードが登場した時も、基本な仕組みはプリペイドカードと同じだったので、チャージの時の領収書を取材交通費として経理処理してきた。

電子マネーの使途をどのように証明するのか?

 電子マネー機能付きの新型カードに切り替えてしまうと、チャージした電子マネーを全て交通運賃に使用したことを、どうして証明したら良いのか?さすがに、チャージした時の領収書を全額、取材交通費として処理するのは常識的に考えても問題があるように思われた。

 Suicaの場合、チャージした時には領収書が発行されるが、その後Suicaで決済したときには原則として領収書は発行されない。ただ、キヨスクなどでジュースや雑誌を買ったときにはレシートが発行されるが、それを全て保存しておけば、それ以外は交通費ということも言える。しかし、課税されるものの証拠を全て残す正直者は残念ながら少数だろうし、税務署が納得してくれるとも思えない。

 自動券売機では、Suicaの利用履歴を印字するサービスもある。しかし、印字されるデータには制限があり、しばらく印字するのを忘れていると過去のデータは消去されてしまう。さらに、印字された利用履歴が国税関係書類として認められているかどうかは「現時点では認められているわけではない」と、JR東日本の広報担当者も認めている。

 電子マネーで何でも決済できるようになると、何に支払ったのかを証明するのが現状では難しくなってしまう。新型カードに切り替えても、従来どおりに経理処理すれば良いと言うかもしれないが、税務署から問題を指摘されないという保証はない。スイカイオカードが使えなくなるのなら、プリペイドカードに戻したいところだが、すでに廃止されてしまっている。インターネット時代になっても、交通費の経理処理は相変わらず伝票清算が基本というのでは、何のための電子マネーなのかと愚痴も言いたくなる。

電子マネーの使途証明でお悩みの方はご連絡を!

 残念ながら、私のように経理処理の関係でスイカイオカードにこだわっている人や企業が他にいるという話は聞いたことがない。ぜひ、同じような問題意識をお持ちの方がいたら連絡をいただきたい。ようやく金融庁でも電子マネー法なるものの検討が本格的に始まるようだが、電子マネーに対する課税制度のあり方についても考える必要があると思うからだ。

 それにしてもJR東日本の対応には失望させられた。事情があって打ち切りを決めたのだろうが、旧型カードのサービス打ち切りを「予告なし」に実施したのは、CSR(企業の社会的責任)を果たしていると言えるのか?新型カードに切り替えれば済むと安易に考えたのかもしれないが、電子マネーはもはや一民間企業のサービスではない。社会システムとして利用され始めているサービスである。

 「Suicaが、いま利用者にどのような使い方をされているのかを、事前に調査して影響を調べてから、今回の措置を実施したのか?」とJR東日本の広報担当者に質問したが、「すでに新型カードへの切り替えが進んでおり、問題はないと考えた」との答え。「いま旧型カードが何枚残っているのか?」と聞くと「判らない」。

 「改めて今回の問題について担当者に取材をお願いしたい」と依頼してみたが、「掲載媒体名と掲載予定日などを取材申し込み用紙に書いて提出してください」と、予想通りの返事。フリーの記者に対する企業の扱いは、このようなものではある。いずれにしても、JR東日本は、Suicaが利用者にどのような使われ方をしているのかを調査せずにサービスを打ち切ったことは事実であると認めた。

 たかが領収書一枚の取り扱いの問題であるように思われるかもしれない。しかし、課税制度のあり方は社会システムの根底に関する問題である。その重要性も認識せずに、仕組みを予告なしに変更するようなJR東日本に、電子マネーという重要な社会システムの運営を任せておいて大丈夫なのだろうか?何でもかんでも法制化とは言いたくないが、電子マネー法の制定も不可避であるように思える出来事だった。