愛知県西尾市のPFI事業見直しに伴う工事中止命令で発生した増加費用約5900万円を、特定目的会社(SPC)「エリアプラン西尾」が市に支払いを求めた訴訟の判決が3月26日に名古屋地方裁判所で言い渡された。唐木浩之裁判長は市側に約3400万円の支払いを命じた。19年秋に裁判所が示した和解案と同じ内容となった。市側は先の和解案を受け入れずに争ってきたが、判決を受けて一段と難しい対応に迫られそうだ。

和解案拒否も同じ内容の判決に

 西尾市では、公共施設再配置計画に基づいて2016年6月にSPCと契約して公共施設の新設・改修・解体・管理を一括発注するPFI事業を開始した。しかし、17年7月の選挙でPFI事業見直し派の中村健市長が誕生し、PFI事業の見直しに着手。10月に工事の即時中止を通知して工事をストップした。

 18年3月に市側は正式にPFI事業の見直し方針を示したが、その間にSPCでは契約に基づいて工事現場を維持管理するとともに工事再開に応じられるように建設業者を待機させていた。その結果、当初の工事費に加えて中止期間中の増加費用が発生。SPCでは17年度分の支払いを求めたが、市側が拒否。18年5月に名古屋地裁に損害賠償請求訴訟を起こしていた。

 地裁では両者に和解を勧告し、和解案を提示した。SPC側は基本的な主張が認められたとして受け入れを表明したが、市側は拒否。市議会に対して賠償額がさほど大きくならないと説明していたために受け入れられなかったとみられている。

 工事の増加費用は、市側が工事中止命令を通知した時点で、中断期間を定めることや、専任技術者等の解任を許可しなかったことなど、工事中止に伴う必要な措置を取らなかったために発生した。それだけに和解案を拒否しても、一審判決で市側に有利な内容になる可能性は低いとみられていた。

PFI見直し推進派が市長に圧力

 PFI事業見直し推進派の市議会議員や共産党系市民団体は、判決内容を見通して控訴を求めるチラシを配布するなどの動きを活発化させていた。中村市長が「西尾市経済界の要望を受け入れて、SPCとの和解に向けて舵を切るのでは?」との観測が再び浮上してきたからだ。同時に、市長を支えてPFI見直しを推進してきた幹部職員が異動するなどの情報が流れ、見直し推進派の危機感も高まっており、市長への圧力を強めているようだ。

 次期市長選挙は21年6月に迫っている。新たに国家賠償請求訴訟も始まっており、引き続き控訴審を争えば、選挙への影響は避けられない。市は控訴するのか、一審判決を受け入れるのか。控訴期限ギリギリまで予断を許さない状況だ。

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