「家づくり」には、とにかくお金がかかります。

 「家は、人生で最も高い買い物」とか、「家を建てることは人生最大の仕事」とか、家がいかに高価であるかは、今さら説明する必要もないでしょう。それだけ高価な家を手に入れるために、大多数の方(私自身もそうですが…)は巨額の住宅ローンを背負うことになるわけですから、「できるだけ良い家がほしい」、「長く住み続けられる家にしたい」と、思わず肩に力が入ってしまうのも当然です。

 「最近のお客様は、本当によく勉強していらっしゃいます。住宅の知識も豊富だし、情報もたくさん集めているので、生半可な対応では満足していただけません」―先日、取材したある住宅メーカーの営業所長さんも感心しきりでそんな話をしていました。

 書店に行けば、住宅に関する数多くの本や雑誌が並んでいますし、インターネットの普及で情報収集も非常に便利になりました。消費者同士で家づくりの情報交換を行うフォーラムもありますし、これまで消費者との接点づくりに苦労していた建築家もインターネットを通じて積極的に情報発信するようになりました。

 最近は、家づくりやリフォームを題材にしたテレビ番組も盛んに放送されています。リフォームで劇的に変ったわが家を見て、最後に感激して涙を流す依頼者の顔が映し出されるというパターンは、まさにエンターテインメント番組の王道を行く作りで、見事と言うしかありません。

 インテリアデザイナーが、大工だって真っ直ぐ引くのが難しいノコギリを握って墨付けもせずに材料を切り始める。思わず「ウソだ―!」と言いたくなるシーンも、テレビだから許されること(?)。それが事実であると信用する方はまずいないでしょうが、デザイナーによる家づくりやリフォームがファッション系の雑誌だけでなく、エンターテインメント番組にも取り上げるようになるとは時代も変ったものです。

どんな情報には「色」は付くものです

 それにしても、これだけ住宅や家づくりに関する情報が氾濫している現在、何を今さら記事を書くのかと不思議に思われるかもしれません。しかし、「情報」というものは、発信する人間の立場によって切り口が全く異なるものです。中立・公平の立場を取っているはずの新聞さえも必ずしもそうではありませんから、それ以外から発信される情報に何らかの「色」が付くのも仕方ないことでしょう。

 「とにかく住宅をどんどん建てましょう!」―これまでの住宅や家づくりに関する情報の根底に流れているには、こんな考え方ではないでしょうか?ハウスメーカーも、不動産会社も、メディアも、さらに政府までも、国民の住宅投資を煽ってばかりきました。

 住宅メーカーは、とにかく住宅を建ててもらわなくては困りますから、ネガティブな情報なんて流すはずはありません。「いまの時期、家づくりなんてしない方が良いですよ」なんてアドバイスをするでしょうか。

 住宅系の情報雑誌も、立場は同じです。不動産会社やハウスメーカーから高い情報掲載料を取っているわけですから、住宅が売れなくなるような情報を掲載することはないでしょう。むしろ「今が買い時だよ!」と、手を変え品を変え、煽る、煽る…。

 しかし、残念ながら、新聞も立場は似たようなものなのです。新聞社にとっても、住宅メーカーは最も重要な広告スポンサーであるというだけでなく、ほとんどの新聞社が住宅展示場の運営に携わってきました。なかには広告局が音頭をとって工務店のネットワークを作って、自ら住宅ビジネスを手がけている新聞社もあります。それだけ住宅ビジネスに深く携わっている新聞社が、住宅需要の足を引っ張るような情報を流すでしょうか。

厳しい現実を認識して家づくりに取り組んでいますか?

 「家づくりをしたい」―そう思って情報サイトにアクセスされた方々に、何も冷や水を浴びせる必要もないと思われるかもしれません。しかし、どうしても「家を自ら建ててみたい」と考えているのなら、夢だけで住宅を語るのではなく、厳しい現実も踏まえて「家づくり」に取り組む必要があるのではないかと思うのです。

 「最近の消費者は賢いですから、ハウスメーカーや住宅情報誌が流す情報の中身をしっかりと峻別していますよ」―ある雑誌の編集者はそう言っていました。そうであるのなら良いのですが…。

つづく

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