愛知県西尾市が進める総額198億円のPFI事業の見直し協議が暗礁に乗り上げている。今年6月の選挙でPFI事業見直しを掲げて当選した中村健市長が、公共施設の建設工事などを発注した特定目的会社(SPC)のエリアプラン西尾と8月から見直し協議を行っていたが、10月27日付けでSPC側の同意なしに工事の即時中止を通知。SPC側は困惑し切っている。

「一刻も早く工事を止めろ!」

 前号に掲載した記事「『自共結託』西尾市PFI潰しの代償」で、1市3町の合併で過剰となった公共施設を、民間資金を活用して再整備するために、昨年6月に発注したPFI事業を、市長交代によって見直されることを伝えた。中村市長が就任して約1か月後の8月9日に開催した市議会全員協議会でPFI事業見直しを正式に表明。市長選挙で自民党系無所属議員と共産党議員がPFI潰しで手を握らせた市職員組合幹部のY氏を中心に事業検証プロジェクトチーム(PT)を設置してSPCとの見直し協議に着手した。

  SPC側も「市長の意向には逆らえない」と協議に応じる姿勢を示していたが、工事中止に伴う費用算出や予算措置など協議の前提条件が整わなければ、簡単に工事を止めるわけにはいかない。ところがY氏を中心とする検証PTはPFI事業に関しては素人集団で、具体的な条件も示さずに「一刻も早く工事を止めろ!」と要求するばかりで、埒が明かない。9月19日に中村市長も出席した協議会が開催されただけで、何ら進展がなかった。

  さすがに中村市長も焦って、2人目の副市長が辞職した直後の10月1日にPFI事業に精通する職員をトップとする「PFI事業検証室」を新設。交渉窓口もY氏からPFI事業検証室に移し、5日からSPCとの週一回の定例協議会がスタートした。

  この一方で、西尾市の財界が、中村市長にPFI見直しを撤回するよう説得に動き出した。愛知県の大村秀章知事は、県立西尾高校のOBで、有料道路8路線の運営権を民間に売却する国内初の「有料道路コンセッション」を実施するPFI推進派だ。中村市長がPFI事業見直しに着手した頃から、愛知県が発注する西尾市管内の公共工事も模様眺めでストップ状態が続いているという。さすがに多くの建設業者から悲鳴が上がり始めていた。

妻の一言で目が覚める?!

  中村市長も地元財界の働きかけを受けて態度を軟化。10月20日に市議会臨時会を開催し、副市長の選任を行うと同時に、見直し撤回を表明する予定だった。その情報をキャッチした地元建設業界を仕切るM建設などのPFI反対派が猛烈な巻き返しを展開。前日に市議会に提出していた見直し撤回の所信表明を当日になって市長が破棄。「目を覚ましてくれたのは妻の一言。事業内容の変更や縮小を考えていく」と見直し継続を表明した。

  その後、市長は建設工事の即時中止を通知するようにPFI事業検証室に命じたが、室長が拒否。再びY氏が交渉責任者に戻され、窓口はY氏をサポートしてきた弁護士チームに変更され、工事中止の通知を送付した。

  「11月上旬から順次、切りの良いところから工事を止めることで協議が進んでいた。突然の通知で、危険な状態で工事がストップした現場もある」と、SPC関係者は困惑するばかり。直後から工事関係者に事情説明に回っているが「年度末に向けて工事が忙しくなる時期にどうするんだ」との不満も上がる。

  新たな交渉窓口となって弁護士チームから11月8日の時点で何らSPCには接触はない。西尾市のPFI見直し問題は一段と混迷の度合いを深めている。

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