「機能再編」も、最終的に建設業者の供給過剰の改善につながらなければ意味がない。切り離された「機能」がうまく再編できるよな仕掛けをつくるなど、基盤作りが必要だ。
※初出表題「私見・ゼネコン再編論(19)―「機能再編」の基盤作り(1)」

「機能」が明確に分かれていた建設業

「企業再編」がダメなら「機能再編」―まるで語呂合わせのようだが、何か物事を推進しようとする時にキャッチフレーズは重要である。もともと建設産業の重層下請け構造は、“重層”という部分が過度でなければ、非常に機能的な構造と考えることができる。元請け業者が施工監理と資材・労務調達を受け持ち、設計・コンサルタント会社が設計業務、下請け業者が実際の施工と労務提供、資材メーカーが資材供給というように、「機能」分担が明確になっているからだ。

 しかし、建設需要が右肩上がりで増え続ける中で、元請け業者はあらゆる「機能」を内部に取り込み、ゼネコン(総合建設業者)として成長してきた。下請け施工業者も「協力会」という形で優良業者を囲い込んできたし、自ら設計機能やエンジニアリング機能も強化し、中には一部の施工機械や資材さえも自前で作ってきた。

 確かに微妙に違っているのは判るが、ほとんど似たような技術の開発に、ゼネコン各社がしのぎを削っている状況は、率直なところ大いなる無駄としか言いようがない。いまや贅肉と化してしまった余分な「機能」は、単に人を減らしてスリム化するのではなく、この際、丸ごと思い切って切り離しても良さそうである。

ゼネコンにエンジニアリング機能は必要か?

 「大手ゼネコンも、バブル崩壊後、挙って、エンジニアリング部門を将来的な収益の柱にしようと強化してきた。しかし、過当競争が続いてエンジニアリング部門のフィー(報酬)まで取れる状況ではない。このままでは、どこのエンジニアリング部門も食っていけなくなるのではないか」(有力ゼネコン幹部)。

 確かに、エンジニアリング機能は、クリーンルーム対応や電磁波対策など高度な提案を必要とする建物の受注には、戦略的な営業機能の一つである。しかし、どのゼネコンもエンジニアリング機能を持っている必要はない。むしろ、ゼネコンの内部にある限り、フィーを取りづらい状況が続く可能性は高いだろう。

 もちろん、エンジニアリング部門を、分社化して食っていける保証はない。むしろ現状よりもっと食えなくなるかもしれない。それでもゼネコンの内部にいるよりは、身軽になったことで流動性が一気に高まるはずである。外資系やIT系を含めて他の企業も買収しやすくなるだろうし、商社がよく使う手法でA社とB社のエンジニアリング部門を事業統合するといった手法も適用できるだろう。(エンジニアリング部門を引き合いに出したのは仮定の議論で、もちろんゼネコンがエンジニアリング部門を分社化するという話は現時点ではない。念のため…)

機能再編で重層下請け構造の解消へ

 「機能再編」の狙いも、「企業再編」と同じで、最終的には建設業者の供給過剰の状態を改善し、健全な産業構造へと変換することにある。「企業」丸ごとでは動きようがなくても、「機能」単位なら再編もしやすくなるという発想だ。「機能再編」が進み、百貨店方式のゼネコンに対抗できる“専門店”も育てば、最終的には供給過剰も解消されると同時に、産業構造改革も実現できるという“一石二鳥”の欲張りなシナリオである。

 ただ、ゼネコンが、今後リストラで余分な「機能」を切り離した場合、そのままの状況では、さらに小さな建設業者が増殖するというだけの結果に終わる懸念がある。切り離された「機能」や「人材」がうまく融合したり、結合したりできるような仕掛けがどうしても必要になるだろう。

 加えて、売れる「機能」を切り離したあとの「残り部分」(はっきりいえば不良資産に近いようなもの)をうまく処理する仕掛けもあれば、機能再編もスムーズに進むのではないか。そんな無謀な考えは、次回、披露したい。

つづく

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