【建設】建設業に求められる「透明性」とは何か?(4)―出来高払い方式に取り組む先駆者たち(2003-01-27)

 出来高払い方式が、公共工事に導入されるかどうかはまだ不透明であるが、政府系機関のなかも出来高払い方式には不可欠な「出来高管理システム」の導入をめざしているところがある。95年に談合刑事事件が発覚した日本下水道事業団だ。理事長辞任にまで発展した談合への関与を根絶して信用回復を図るために、96年から業務改革のためのプロジェクトをスタートさせたのである。

談合事件を機にPM制度を導入した下水道事業団

 同事業団は、地方自治体から下水道処理場などの下水道関連施設の建設工事を受注し、施設の設計を行うとともに、ゼネコンやポンプメーカーへの発注管理・施工管理も行い、全体をまとめ上げる仕事を行っている。もともと、プロジェクト全体を取り仕切るプロジェクトマネージャー的な役割を果たしてきた。

 業務改革に当たって、同事業団では、正式にプロジェクトマネージメント(PM)方式を導入することを決断する。そのためWBS(ワーク・ブレークダウン・ストラクチャー)の考え方に基づいて、プロジェクトに含まれる全ての作業や成果物の体系化を実施、内部体制も整えて99年10月からPM制へと移行した。引き続き、出来高管理システム(EVMS)の構築を進めているところだ。

 談合刑事事件を真剣に反省して業務改革を決意、そして導入することにしたのがPM方式による出来高管理システムだった、と言って差し支えないだろう。私自身、不勉強でこの話を知ったのは半年ぐらい前のことだったが、NTTソフトウェアから聞いたときには、正直言って驚いた。もし本当なら、国土交通省本体が出来高管理に真剣に取り組んでいるとは言えない段階で、まさに拍手喝采である。実際に下水道事業団の取材をすると、シビルエンジニアの責任と誇りを持って、新しい試みに挑戦していることが伝わってきた。

 しかし、EVMSが実用化されても、すぐに出来高払い方式を導入できるわけではない。確認検査のやり方や、国の補助金制度など、公共工事そのものの仕組みが見直されなければ、出来高払い方式は実現できないという。もちろん、国土交通省に対しても同事業団の取り組みは報告されているが、「ほとんど相手にされなかった」(業界関係者)といった話も聞く。すでにPM制度に移行して2年が経過しているが、EVMSの実用化の見通しを聞くと、いまひとつ歯切れが悪いのも、その当りがネックになっているのかもしれない。

三重県では毎月支払い制度がスタート

 2002年7月からは、三重県で「毎月支払い制度」の一部導入がスタートした。入札契約適正化法の施行に対応して、三重県が独自に検討してきた入札制度改革のメニューに、毎月払い方式の導入を組み入れていたのである。公共工事の分野で毎月払いを実施する地方自治体は、もちろん三重県が初めて。さすがに改革派として全国的にも有名な北川正恭知事のリーダーシップの力は絶大である。

 三重県では同時に、発注者と受注者との情報共有を行うためのプロジェクトもスタートしており、日本ユニシス、富士通、東芝が提供する3種類のPMツールを使って、工事現場の写真や工事の進ちょく状況などを情報共有して、効率的できめ細かな現場監理を行おうという試みだ。このPMツールには、現時点で出来高管理のためのモジュールは組み込まれていないようだが、「要求があれば出来高管理のモジュールをPMツールに組み込むことは可能」(日本ユニシス)だという。

工種別単価契約を適用した埼玉県草加市

 出来高払い方式の導入に当たっては、工事費の総額で契約を結ぶ総価契約だけでなく、工事種別ごとの単価契約が必要だと指摘されている。工事種別単価に関連して面白い試みを実施したのが、埼玉県草加市である。

 入札対象となった草加市立病院建設工事の「設計価格」は、約129億円だった。通常であれば、これがいわゆる「予定価格」となるのだが、草加市では市議会で当初予算として見込んでいた約115億円を「希望価格」という形で、実質的な予定価格として事前公表した。さらに、鹿島や竹中工務店JV、前田建設工業など参加業者五社が提出した見積書の工事費総額だけでなく、工事種別ごとの単価も比較。そのなかで最も安い単価だけを合計して算出した工事費の総額約104億円を「目標値」として、これを下回った入札参加業者と価格交渉に入るという手法を取ったのである。当初の「設計価格」と「目標値」を比べると、約2割も安い値段である。そして、最終的な落札価格は100億円弱となった。

 これは、日本におけるCM(コンストラクション・マネジメント)会社の草分けである岐阜の希望社がコスト削減のために実施している方式と考え方は類似している。希望社でも、ゼネコンに工事種別ごとの単価の入った見積書を提出させ、一方で専門工事業者からもそれぞれ見積もりを取り、ゼネコンの使う下請け業者より安ければ、強制的に入れ替えさせることで、ゼネコンの見積もり額に比べて平均で2割はコスト削減を実現できることをアピールポイントとしている。草加市の場合は下請け業者の入れ替えを求めたわけではないが、実質的に同じような効果をあげることができたようだ。

 発注者が総価だけでなく、単価レベルでコスト管理を行い、出来高に応じて支払いを行う―日本下水道事業団、三重県、草加市などの取り組みを見る限り、出来高払い方式を公共工事に導入できない理由はないはずである。それとも、公共工事に出来高払い方式を導入できない決定的な理由が他にあるのだろうか。
つづく