建設資金を誰が、どのような目的で投資するのか。それによって発注者が大きく制約を受けるのは、何も民間企業に限ったことではない。財政悪化を背景に、地方自治体が積極的に導入しようとしているPFI(民間資金を活用した社会資本整備)事業を通じて、公共工事にも「投資」という考え方が影響を及ぼし始める可能性がある。

 「PFI案件の受注競争は、ひどい安値受注が展開されている民間工事以上ですよ」―ある大手ゼネコンの担当者がそう嘆くほど、PFI方式による工事発注でも、仁義なき安値受注合戦が展開され始めている。

 地方自治体の財政難は、いずこも同じだ。99年に議員立法で成立したPFI法は、2000年春に基本方針が制定され、引き続き内閣府でガイドラインの策定作業が進められている。そんな悠長な作業が中央政府で進められている一方で、地方自治体では独自の実施方針などを策定してPFI事業を導入しようという動きが加速しており、2001年度も大型案件の入札が目白押しの状況といわれる。

 実績が大きくモノを言う建設ビジネスの世界。PFI事業で実績を積もうと大手を中心に採算度外視の受注合戦が展開されている。「こっちだって、利益なんてゼロで札を入れているのに、開札されると驚くような札が入っている」といった話も聞こえてくる。「これじゃ、いずれPFI事業そのものが破たんしてしまう。一巡したら、安値受注もなくなるのでは…」。まさに我慢比べの様相だ。

 しかし、PFIの安値受注が、実績づくりの初期段階に起こっている一過性の現象だと 言い切れるのだろうか?公共工事の建設資金はもちろん国民の税金ではあるが、実際の発注者である役人は、予算を承認する地方議会や、補助金を決める中央官庁の顔色を見ながら業務を遂行しているのが実態。一方、PFI事業には、一部補助金なども投じられるが、大部分の資金は民間が事業採算などを見ながら投資する「ヒモ付きのカネ」だ。

 ゼネコンが苦労してPFI工事を安値受注しているのに対して、金融団や総合商社からPFIへの投資リスクが大きいとの話は聞こえてこない。そればかりか「既存の公共工事をエサに、PFIの安値受注を暗に求めてくる地方自治体もある」との話もある。

 建設費を下げれば下げるほど、資金を投資している金融団や商社の利回りが上昇する。利回りが良ければ、新たな投資を呼び込みやすくなる。「公共工事は、そもそも民間では採算が取れないから公共が投資しているもの。PFI方式できる社会資本整備なんて、非常に限られていますよ」(国土交通省幹部)と言われてきたPFIの適用範囲も、広がる可能性が出てくる。

 地方自治体が、財政悪化が進む中で、公共工事を従来通りのやり方で発注し続けるのか。それともバリューフォーマネー(VFM)の考え方をベースとするPFIを導入してでも、工事量の確保を図ろうとするのか。その答えは明白であるように思えるのだが…。 (第4回につづく)

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