世の中、すっかり“デフレ”気分が蔓延しているようだ。新聞や雑誌でも、デフレがいろんな切り口で取り上げられ、この調子でいくと今年の流行語に選出される可能性も高そう(?)である。しかし、こと建設業界では、「デフレ=建設費の下落」は今に始まった話ではない。バブル崩壊後、ずーっとデフレ状態が続いていると言えるだろう。90年代半ばまでは、バブル期に建築費が高騰した反動による価格調整の色合いが濃かったが、その後も建設市場が縮小するなかで、建設業者数が減らないために過当競争が起こり、建設費が下落し続ける状況を生んでいる。

 少々カタイ話をすると、1985年のプラザ合意を境に起こった日本経済の構造変化を、私なりに「国際化」「自由化」「情報化」の3つのキーワードで整理している。とくに「自由化」は、高度成長期を経て、市場にモノ・サービスが十分に供給されるようになる一方で、国民所得が大幅に増加し、市場の主導権が売り手=供給者側から、買い手=消費者側に移行したという理解だ。

 「良いモノ・サービスをより安く」が、消費者の普遍的な欲求だとすれば、消費者主導の市場には、潜在的に絶えずデフレ圧力がかかっていることになる。逆に、供給者側にとっては、このデフレ圧力が顕在化しないように、上手く市場をコントロールする(決して談合ではなく…)必要があるわけだ。

 振り返ってみて、建設市場はどうだったか―。少子高齢化社会を迎え、建設市場が将来的に縮小が避けられない状況にも関わらず、バブル崩壊後も、景気対策の名目で巨額の公共事業費が投入された。このため建設業者数、就業者数ともに増え続けると同時に、建設業者の不良債権処理も先送りされ、供給過剰状態が温存されてしまった。

 さらに93年に宮城県や茨城県などでゼネコン汚職事件が表面化。これをキッカケに「日本の建設コストが海外に比べて3割高い」という批判が表面化したときも、明確な反論もしないままに、ズルズルと発注者の値引き要求に対応。かえって建設価格に対する消費者の信頼を大きく損ねてしまったのではないだろうか。

 建設業者の供給過剰状態を解消するのは一朝一夕には難しいにしても、建設価格の信頼回復の方法はないわけではない。プロジェクトマネジメント(PM)やコンストラクションマネジメント(CM)方式などを使って、施工業者以外の第三者が建設コストをチェック、管理する手法だ。投資家タイプの発注者には、積算事務所やCM会社など第三者によるチェックや管理を求める意向が強まっている。

 不動産ノンリコースローンを実行する場合も、稼動中の物件では第三者が資産価値を評価するデューデリジェンスの実施が要求されるし、建設中の物件ではCM手法での出来高管理を求められるのが一般的だ。実際に調査したわけではないので推測ではあるが、不動産のREIT(不動産投資信託)市場が発達した米国で、CM手法による建設発注方式が盛んなのには、強い因果関係があるのではないだろうか。 (第6回につづく)

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