【住宅】家づくりの経済学―(5)家の資産価値(2003-06-26)

 家の資産価値をご存知ですか?

 住んでいる家の現在の価値がどのくらいあるのかを聞かれて、すぐに答えられる人はほとんどいないかもしれません。家を建てたときに、全部でいくらかかったかであれば答えられるでしょうが、現在の資産価値となると知らないのが普通でしょう。

 実は、日本では、企業ですら、つい最近まで資産価値を簿価(取得時点の価格)で評価し続けてきました。地価が上昇している局面では簿価のままでも問題はあまり生じないのですが、逆にバブル期に高値で買った不動産が地価下落で巨額の含み損を抱えていても、簿価で評価している限り損失は表面化しないことになり、財務の健全性が損なわれることが判ってきました。

 そこで国際会計基準の観点からも、2005年度から減損会計制度が導入されることが決まり、一定のルールに基づいて時価(現在の実勢価格)で評価する方法が適用されることになったわけです。企業でもそんな状況ですから、個人が現在の資産価値を評価しようと考えてこなかったのも当然でしょう。

 「そもそも自宅を売るつもりは、当面ないのだから、現在の家の資産価値を知る必要もない」―そうおっしゃる方も、多いでしょう。しかし、今の時代、いつ自宅を売却することになるとも限りません。

 地価が上昇しているときなら「おっ、こんなに高く売れた。メデタシ、メデタシ…」で済む話です。しかし、バブルが崩壊したあと「担保割れ」という言葉をよく聞くようになりましたが、自宅を売却しても場合によっては住宅ローンを完済できないケースも想定されるのです。

今、住んでいる住宅の資産価値を知るには?

 もちろん、そうした事例は少ないとは思いますが、いずれ住み替えも考えていらっしゃるのなら、家の資産価値がどう、決まっているのかを知っておいても損はありません。

 家の資産価値=時価を知るには、不動産鑑定士に鑑定価格を出してもらうのが最も確実な方法ですが、費用がかかります。最近では、インターネットに中古住宅の査定を受け付ける不動産業者のサイトがたくさんあり、住所や土地の面積や道路付け、住宅の種類や築年数、広さと間取りなどのデータを入力すると、査定結果が送られてくるようです。

 いずれにしても専門家に査定してもらう必要があるわけですが、その査定の仕組みを不動産業界と一緒に作ってきたのは国です。ある意味で、不動産業者が土地・建物の資産価値を決め、国がそれを容認してきたと言えるでしょう。

 土地の価格は、国土交通省が毎年3月下旬ごろに公表している「公示地価」(1月1日時点での価格)に大きく影響されます。公示地価の7割程度が固定資産税の算定基準となる「路線価」で、市町村から送付されてくる固定資産税の通知書には路線価が記入されていますので、改めてご覧になってはいかがでしょうか。

 今年度(2003年)はちょうど3年に1度の固定資産税の評価替えがあったので、前年度の通知書の路線価と比較すれば、3年前に比べてどの程度、土地の価格が路線価ベースで変動したかが判るでしょう。

木造戸建て住宅の資産価値は20年でゼロに!?

 問題は、建物の資産価値です。家を新築すると、市町村から税務担当者が固定資産税額を決めるために家屋調査にやってきます。評価額の査定方法は、建物の構造や仕上げごとに評価点数が決まっていて、それに面積をかけて合計ポイントを出すという方法で、実際に建築費がいくらかかったかは関係ありません。

 評価額が、実際の建築費の5−7割程度となるように査定基準が作られているようですが、土地に比べてバラツキは非常に大きく、ほとんど参考にならないでしょう。ただ、評価額は経年劣化係数をかけて、3年でほぼ1割ずつ減額し、25年目以降は最初の評価額の2割を下限に課税され続けるという仕組みです。

 実際の家屋の査定には、国土交通省の外郭団体である(財)不動産流通近代化センターが作成している「価格査定マニュアル」が使われてきました。このマニュアルによって長い間、木造住宅であれば築20年で資産価値はゼロとなる査定が行われてきたのです。坪単価35万円の家も、その2倍の同70万円の家も、20年経てば、資産価格はゼロになってしまうという考え方です。

 どう考えても、思わず首を傾げざるを得ないような査定方法がまかり通ってきたわけです。そして、この『20年』という数字は、これまでの日本の家づくりに実に様々な影響を及ぼしてきたと考えられるのです。

つづく