【住宅】家づくりの経済学―(4)家の二面性(2003-06-25)

 家とは、何なのでしょうか?

 突然、そう聞かれたら面食らってしまうかもしれませんが、家とは「人が住むための建物」―岩波書店の広辞苑を引けば、そう書かれています。それ以外に「家庭」、「祖先から伝え継がれる血族集団」、「家産、家の財政」という意味も書いてありました。

 確かに家とは、人が住むための建物なのですが、そこに「家庭」と「家財=資産」という大きな2つの要素が加わったものではないかと思うのです。

 この2つの要素をもう少し具体的に言えば、家庭は「暮らし」と言い換えることもできるでしょう。暮らしにとって、最も重要なのは『安全』です。安全で安心な暮らしを実現するには、建物というハードはもちろん、地域社会の治安やコミュニケーションなどのソフトも十分に考慮する必要があります。

 資産とはもちろん、土地、建物などの不動産を指します。これまで土地は物価上昇に連動して上昇すると考えられてきたため、インフレ対応の資産として、将来に備えて土地は「買っておいて損はない」との考え方が広く定着していました。それが“土地神話”と言われてきたものの正体です。

資産価値を考えて家づくりをしていますか

 家に「家庭」と「資産」の2つの側面があることは誰もが理解していると思います。しかし、最初から売却するときのことを考えて、夢のマイホームをつくる人は、まずいないでしょう。当然、家をつくるときには、家庭の要素が圧倒的に優先され、資産の要素は「まあ、何とか住宅ローンが組めて、無理なく返済できるならいいや」で、終わってしまっているように思うのです(私自身も、そうした面が無きにしも非ず、です。恥ずかしながら…)。

 1995年1月17日―この日は、阪神淡路大震災があった日です。あれから8年が経過したわけですが、阪神大震災をキッカケに、住宅に関する様々な問題が改めて浮き彫りになりました。

 最も衝撃が大きかったのは、古い木造住宅が数多く倒壊して、それによって多くの尊い命が奪われたということでしょう。住宅の安全性能に対する関心も高まり、住宅品質確保促進法(品確法)や耐震改修促進法などが整備されました。

 住宅の安全性と並んで注目されたのが、倒壊マンションの建て替え問題など住宅復興に関する問題でした。まだ住宅ローンの返済が終わっていないのに住宅が倒壊して二重ローンを抱えることになった人や、元の場所で住宅を再建できずに長く住み慣れた場所から引っ越すお年寄りなど悲喜交々のドラマが報道されました。

 もし、家が「安全に暮らすための建物」というだけなら、国が資金を出して古い住宅の耐震補強補強工事を行っても、かわいそうなお年寄りのために家を建て替えても良いのかもしれません。しかし、同時に家は私有財産でもあるわけですから、いくら非常事態だとは言え、国が簡単に資金を出すわけにはいかないのも確かです。

住宅を所有する責任とリスクを考えたことがありますか?

 阪神淡路大震災を検証する取材をするなかで、経済記者として関心があったのはこの点でした。“終の棲家(ついのすみか)”という言葉があります。そう考えて、古い一戸建てに住み続けている高齢の居住者に、万一に備えて耐震補強工事など住宅の維持管理を行う必要があると言っても、資金的な余裕がある人ばかりではないでしょう。地震が発生して家の倒壊でお亡くなりになった方に、耐震補強工事をしなかった自己責任で済ませられるでしょうか?

 同様に、マンションが地震の被害を受けた場合、住み続けるだけなら多少の修復工事で済むかもしれませんが、資産として考えた場合、転売は難しくならざるを得ません。将来的にマンションを売却して住み替えを考えている居住者は、資産価値を回復させるため建て替えを強く主張するでしょう。いくら“終の棲家”と心に決めていても、資金余力の乏しい居住者はマンションを出て行かざるを得ないことになってしまいます。

 こうしたリスクが発生するのも、家が「家財=資産」であるからです。これが賃貸住宅なら耐震性能に優れた新しい住宅に住み替えていけば良いのですが、自分の資産は自分で面倒を見るしかありません。家を資産として、どう考えるべきなのか?その視点が改めて必要になっていると思うのです。

つづく