【建設】新型発注者「投資家」への対処法(6)―一括請負方式が招く際限なき値下げ競争(2001-04-15)

 『利益相反』―投資家と付き合っていく上で気をつけなければならないのが、この冒頭の4文字である。自分の利益に合致しているか、相反しているか。投資家にとって、ビジネスの判断基準はそれしかない。

 実はここ2、3年の間、利益相反問題に頭を悩めてきたのが、建設会社とも関係の深い不動産会社だ。土地流動化策の切り札として不動産投資信託市場が整備されることになり、不動産会社でも新しいビジネスチャンスとして積極的な取り組もうとした途端、この問題が立ちはだかってきた。つまり、不動産ファンド(投資法人)にどのような物件を組み入れるかで、投資家と不動産会社の間で利益相反が発生してしまうことに気がついたのだ。

 不動産会社は自らも数多くの不動産を保有して運用している。これは不動産ファンドも同様である。不動産会社がある物件を取得した場合、自ら保有するか、自分が関係する不動産ファンドに組み入れるか、どちらを選択するか。利回りの良い物件なら、不動産ファンドの投資家は当然、不動産ファンドに組み入れることを要求するだろう。しかし、不動産会社(不動産会社の株主)としても、良い物件なら自ら保有して会社の収益アップにつなげようとするのが当然である。

 自ら不動産を保有・運用している不動産会社が、二兎を追って、不動産ファンドも運営しようとするから発生する問題であり、どちらか一方を諦めれば解決する話ではある。しかし、そう簡単に不動産会社としてもビジネスチャンスを失いたくはない。「取得した物件を半分に割って、不動産ファンドと自社保有に組み入れることで、双方に納得してもらうしか方法はないのではないか?」(森トラスト役員)―こんな手法の検討が進む一方で、情報開示など透明性を高めることで投資家の信頼を得る努力が始まっている。

 さて、「一括請負方式」を得意とするわが国の建設業者の場合はどうか。発注者の中で投資家的な考え方が徐々に強まっているのに、利益相反問題を真剣に議論しているという話は聞いたことがない。

 そもそも相手を信用して仕事を任せる「一括請負方式」は、発注者と建設業者の利害が合致しなければ成立しにくい方式である。常に十分な利益を得たいと考えている建設業者に対して、両者の利害が合致するケースは、発注者が多少カネをかけても立派な建造物を作りたいという意識が強い場合か、何らかの理由で発注者も工事費を増額(水増し?)したい場合か、そのいずれかではないだろうか?通常は、少しでも建設費を安くしたい発注者と儲けたい建設業者の間で利害は真っ向から対立しているはずである。

 ところが、当の建設業者は、自らを“請け負け(うけまけ)”と揶揄(やゆ)するように、発注者の無理難題にも応え、利益率も極めて低い状況で、誠心誠意、発注者のために仕事をしているとの意識が強い。「得意先の勝手口から入って御用聞きで仕事を取るのが建設会社」(大手ゼネコン幹部)といった考え方が染み付いていて、自らが発注者と利益相反している存在だということを気付いていない(or気付かない振りをしている?)。

 発注者側に立場が近いと言われる設計事務所でも、設計・監理料を総工費の何%という形で設定した場合は、発注者とは利益相反の関係となってしまう。工事費が高ければ高いほど、設計・監理料も高くなるため、工事費削減のインセンティブが働かないと見られるためだ。逆にVE(バリューエンジニアリング=価値工学)提案制度のように、コスト削減が発注者はもちろん、設計者、施工者にも成功報酬の形で双方にメリットとなる場合もある。

 建設市場では一部にダンピング(不当廉売)とも言える低価格受注競争が続いている。発注者側の一部には「むしろ設計事務所などを入れずに、ゼネコンを競わせた方が、価格が下がる」といった声も聞こえてくる。建設業者が利益相反を自覚しないままに「一括請負方式」にこだわるのは、かえって際限ない値下げ競争を招いているようにも思えるのだが…。
(おわり)