政治の世界は選挙で勝たなければ意味がないことは理解している。しかし、参院選挙直前に政権与党が代表者2人を交代させるのは、国民をこれほど馬鹿にした話はない。まだ自民党が麻生太郎総裁のまま昨年8月の衆院選挙を戦って敗れた方が潔かった。本当に小沢一郎前幹事長と決別した政治を行うというのなら、菅直人首相はすぐに衆議院を解散して総選挙を実施するべきだろう。マニフェストに書かれた個々の政策も重要ではあるが、それ以上に「筋を通す」ことを大事にするべきではあるまいか。
 「同じサービスを利用するのに、ある人は得をして、ある人は損をする。そんな料金体系を導入しようなんて、行政のイロハが判っていないとしか言いようがない」―高速道路料金問題への疑問が、ある有識者の一言で解けた。「かつての国土交通省なら、こんな失態はしなかっただろう」との声も聞く。国交省道路局幹部に問うと、「現行の高速道路料金体系はすでに限界だった。新料金体系はそれを是正するものだ」との答え。「それなら高速道路を無料化する方が公平感があるし、国民の理解も得やすいのでは?」と聞くと、「それは出来ない」。高速道路をつくり続けることで公平感を維持するのか、料金を無料化して公平感をアピールするのか。今後の行政のあり方に関わる問題である。

 そもそもプライバシーとは何か?―日本において十分に議論され、社会的コンセンサスが得られているのだろうか?との素朴な疑問が湧く。一般的には「個人の私生活に関する事柄(私事)が他から隠され、干渉されないことを要求する権利」(ウィキペディアから)とされるが、インターネット時代になると「自己の情報を統制できる権利」も含まれるようになった。個人にとって知られたくない情報は全てプライバシーなのかもしれないが、人は誰しも人や地域、社会とつながって生きている。土地がプライバシーであるのも、限られた都市の中でできるだけ多くの土地(自己の空間領域)を囲い込もうとする人間の欲求の表れなのだろう。しかし、一方でコミュニティの形成にも大きな影響を与えてきたのではあるまいか。

最近、株式会社建物鑑定という会社が、固定資産税に関するテレビコマーシャルを流しているのを良く見かける。建物の鑑定評価によって固定資産税の還付金が戻ってくるという内容だ。わざわざテレビコマーシャルを流すというのは、裏を返せば地方自治体が固定資産税を決める根拠となる鑑定評価にバラツキがかなりあるということである。ホームページを見ると、東京都議会の議事録を抜粋して再鑑定の必要性をアピールしているが、公平であるべき税金にそれほどバラツキがあって良いものなのか。

60年代の国民総背番号制度から今日の社会保障・税共通番号制度に至るまで、国民ID制度を導入する最大の目的は、課税の公平性を担保し、社会保障制度の効率化を進めるところにある。そうであるならば、明治時代から税制の根幹を成してきた土地・建物でも、統一IDによる管理は必要だろう。今後、深刻化するのは所得格差より資産格差との指摘もあり、昨年12月の税制改正大綱でも固定資産税の見直しを打ち出している。民間分野でも不動産EDI(電子商取引)や住宅履歴情報の整備にID基盤は不可欠だ。せっかく2005年に導入された「不動産番号」も活用しなければ宝の持ち腐れである。

 社会保障・税共通番号制度の議論が2月から始まり、素案が固まったようだ。2002年の住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)問題では個人情報保護の観点から強い反対運動が起きたが、07年の年金記録問題の混乱もあって、今のところ反対の声はあまり聞こえてこない。しかし、日本では国民、企業、土地・建物などの主要な課税対象を統一IDを管理することへの国民の警戒感は強く、2005年に導入された「不動産番号」もほとんど活用されていないのが実情だ。ICT(情報通信技術)分野では国民ID制度として官民が連携して利用できるID基盤を構築すべきとの声も高まっている。鳩山政権では「新しい公共」のあり方についても議論を始めているが、ID基盤の活用について公共の福祉とプライバシー保護のバランスから議論すべきではあるまいか。

 方向転換するときは、必ずブレーキを踏んで減速しなければならない。時には立ち止まることも必要だ。政権交代が実現して1か月、民主党政権は今のところ高い支持率を維持しているが、冷静に考えれば「立ち止まることすらできないのでは?」と思われていたダム建設を、とにかくストップさせてみせただけのこと。問題はこれからだ。国土交通省関連では、民主党にも大いに責任がある建築基準法の再改正を行うのは当然として、不動産仲介の両手取引禁止は早くも腰砕けになりそうだし、JAL再建や整備新幹線などの問題も先行きが見えない。前原誠司国土交通大臣は「日本の将来に対する閉塞感を打ち破りたい」と言っているが、それには明確なビジョンと具体的な戦略を示していくことが必要だ。無駄な公共事業を削減するだけでは、将来への希望は取り戻せない。

<主な内容>
・前原国交大臣の話をナマで聞いてみると…
・日本の将来への3つ不安と4つの成長戦略
・建設業就業者537万人の雇用はどうするのか
・建設労働者が建設業界にしがみ付く理由
・1人当たりのGDPが突出する不動産業―産業間格差が所得格差の拡大の一因では?

昔から「二者択一を迫られる」のが苦手だった。「賛成か反対か、手を挙げなさい!」と学校の先生に言われても、どちらにも手を挙げないことが多かった。何も考えていないわけではない。与えられた情報だけですぐに判断するのが何となく怖かったからだ。じっくりと調べて納得したうえで賛否を決めたいのに、「さあ、どっち。ぐずぐずしないで、早く決めなさい」と言われると、嫌悪感すら覚えてしまう。8月30日の衆院選挙で、国民は政権交代は選択したが、メディアも成果を焦る必要はない。まずは自民党政権時代の政策と予算を徹底的に解析し、まずは国民に出来るだけ多くの情報を提供することである。

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 札幌南高校の東京地区同窓会、東京六華同窓会が6月13日、都内ホテルで開催された。卒業式以来、32年振りに初めて出席したが、同期(南27期)の幹事が自宅まで電話をかけるなど人集めに奔走してくれたおかげである。約50人の同期を含め約430人の同窓生が集って大盛況だったが、ぜひ会いたいと思っていた人がいた。1993年に起きた通産省4人組事件の一人、中野正孝氏(南12期)である。受付で確認すると、残念ながら同窓会には顔を出していないとのこと。4人組事件は93年に自民党が下野し、日本新党などの連立政権が誕生したことで起こった権力抗争が発端と言われる。いま再び政権交代の可能性が高まるなかで、”中野先輩”は何を思っているだろうか。

 衆院選挙タイムリミットの今年9月まで4カ月を切った。2007年7月29日の参院選挙の後、世界が大きく激動する時代に2年近くも日本の政治は停滞した状況が続いたわけで、政局の駆け引きなど全く興味のない人間にとっては長すぎる時間だった。ふと湧いてきたのが「そもそも国会議員の任期が長すぎるのではないか?」という疑問。メディアでは「政権交代」があるかどうかが喧しいが、この際、現役議員の大半(特に当選回数の多い先生方)が落選して「世代交代」が進んだ方が、少しは日本も変われるようにと思うのだが…。

新聞スクラップ
 市場競争にも大きく分けて、新しい需要を生み出していく競争と、すでにある需要をより安い価格で奪い合う競争がある。その2つのバランスが保たれて、市場経済は健全に発展していくと私は考えてきた。日本のピンはね社会=重層下請構造は、後者の競争が行き過ぎた状態に陥っていることを示しているのではないだろうか?いずれ職人やソフト技術者、クリエーターなど現場の労働者たちを疲弊させ、新しい需要を生み出す力をも日本社会から奪い取っていくだろう。限られたパイを奪い合うだけが競争ではない。
 偽装請負や派遣切りなど雇用問題を盛んに報じているメディアも、こと自分たちの労働実態には全く触れようとしない。他業界のことは遠慮なく記事にするのに、自分たちのことは頬かむりでは、ジャーナリズムとしてはやはり問題だろう。下請が元請との取引実態をばらせば元請から圧力が加わり、私の仕事もパタッと途絶えるかもしれない。経済産業省から送られてきた「親事業者との取引に関する調査」も下請の回答は秘密厳守となっているが、私自身が「日本の請負慣行が問題だ!」と主張する以上は実情を明らかにしないわけにもいくまい。アンケートの質問事項に回答する形でメディア業界の下請取引を考える。
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 ジャーナリストを名乗ってはいても、私の立場は建設業における「一人親方」と同じである。不況になれば仕事は減り、生活も不安定になる。「新聞社を辞めてフリーになった」と言えば聞こえは良いが、圧倒的に待遇に恵まれた新聞・テレビの正社員記者を好き好んで辞めるのは一握りだろう。フリーになって9年、今年初めて経済産業省から下請取引の実態を調査する「親事業者との取引に関する調査について」
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と題したアンケートが送られてきた。毎年、政府が調査を行わなければならないほど、日本は不当な下請(労働)取引がまかり通っているピンはね社会なのか?

新年、明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。

 人間、歳を重ねると頑固になりがちである。人生をそれなりに生き抜いてきたという自負が、そうさせるのかもしれない。日本社会も高齢化の進展とともに頑固さが増して、柔軟性を欠いてきているのではあるまいか。もちろん信念を曲げない頑固さが必要な場合もあるが、時として傲慢になってしまえば、記者という商売は務まらなくなるし、社会は硬直化して身動きが取れなくなる。年の初めに自戒しつつ、謙虚さを持ってひとつひとつの疑問を読み解くことに今年も力を入れていきたい。スピード感も大切だが、先行きの見えない時代、十分な議論をせずに結論を急いでも、決して良い結果は生まれないと思うからである。

トヨタ自動車が、世界規模の景気後退による販売不振と急激な円高に喘いでいる。2009年3月期の営業利益は前期比7割減に落ち込むとの発表があった。これほどの苦境に陥ったのは、豊田章一郎名誉会長の実弟である豊田達郎社長(当時)の病気不在、交渉決裂寸前まで追い込まれた日米自動車摩擦、82年以来13年ぶりに国内シェア40%割れが重なった1995年以来のことだろう。この年の8月、奥田碩氏が社長に就任し、トヨタは危機を乗り越えて、真のグローバル企業へと飛躍していく。トヨタは今度の危機をどう乗り越えるだろうか?
<関連記事>
判断力と決断力―トヨタ自動車はシェア40%割れの危機をいかに乗り越えたか(2002-06-10:MKSアーカイブ)
オーナー系企業、後継者選びに苦慮?―鹿島、トヨタ、三洋電機、大林組でトップ交代(2005-04-10:夕刊フジ→MSKアーカイブ)

 昨年暮れからこの3か月間ほど、産業構造や国土形成の将来について考えさせられてきた。週刊東洋経済の記事執筆では建設業の将来を、住宅産業の業界研究本の執筆では住宅産業の未来を考える一方で、建設業にも多大な影響を及ぼす道路特定財源に関する国会の議論の様子を眺めていた。率直な感想を言わせてもらえば「現実逃避」という言葉に集約される。人間誰しも、現実から目を背けたいという思いはある。しかし、国民や従業員の生活に責任を持たなければならない政府、国会議員、キャリア官僚、企業トップが「現実逃避」していてどうするのか?

 自民党と民主党の大連立騒動では、民主党への手厳しい評価が多かった。日経新聞の世論調査では民主党の支持率は28%に低下。6月の参院選挙でせっかく大勝したあとだけに失望感があったのかもしれないが、果たして大連立を拒否したのは正しい判断だったのか?最近では政治の舞台に登場する役者も代わり映えのしない顔ぶれで、何らかのハプニングが起きることを期待していたのだが…。  

 今年、建設・不動産分野で、企業活動を大きく規制する法律が施行された。すでに何度も取り上げている改正建築基準法(施行日・6月20日)と、不動産ファンドを含めて規制する金融商品取引法(同・9月30日)である。この2つの法律とも企業の経済活動を大きく規制するための法律ではあるが、先に施行された改正建築基準法はその影響が業界を直撃する格好となった。規制する政府と規制される企業――秩序ある市場を構築するためには延々と規制強化を続けなければならないのか?

 安倍晋三前首相が12日に突然の辞任を表明したあと、しばらく日本がフリーズしてしまったような感覚に陥った。あまりに唐突な辞任劇に唖然とした人も多いだろう。25日に福田康夫首相が就任するまでの間、やれ「派閥政治の復活」だの、「構造改革の路線変更」だの、ことさら後退感を強調する論調も多かった。後世に安倍首相という人がどう語り継がれることになるのかは判らないが、そもそも「なぜ、安倍さんが首相に選ばれたのか?」である。「美しい国づくり」は、安倍首相の退場とともに消え行く運命なのか?

 宮沢喜一元首相が6月28日に死去した。1年前の7月1日に橋本龍太郎元首相が死去して、未来計画新聞でも
「故・橋本元首相が見抜いた日本の金融機関の実力」
と題するコラムを掲載した。残念ながら、宮沢元首相にお会いしたことはなかったが、1992年の不良債権処理のための公的資金投入問題のとき、私は現役記者として日本銀行の記者クラブに在籍していた。なぜ、公的資金投入は実行されなかったのか?

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