衆院選挙タイムリミットの今年9月まで4カ月を切った。2007年7月29日の参院選挙の後、世界が大きく激動する時代に2年近くも日本の政治は停滞した状況が続いたわけで、政局の駆け引きなど全く興味のない人間にとっては長すぎる時間だった。ふと湧いてきたのが「そもそも国会議員の任期が長すぎるのではないか?」という疑問。メディアでは「政権交代」があるかどうかが喧しいが、この際、現役議員の大半(特に当選回数の多い先生方)が落選して「世代交代」が進んだ方が、少しは日本も変われるようにと思うのだが…。

新聞スクラップ

スクラップを見ながら時間の流れを振り返る

 いまだにアナログと思われるかもしれないが、新聞記者時代からの習性で新聞記事のスクラップを続けている。現役記者時代は、自分が記事を書くときの参考とともに、後任の記者が着任したときに新しく担当する分野や業界の動向を勉強する資料としてスクラップを作成して保存するのが担当記者の義務と先輩から教えられてきた。今は、自分のためだけなので、時々、怠けたりもしているが、2001年から約8年で約60冊のA4版スクラップノートが書棚に並ぶ。

 過去の情報を調べるのは、いまやインターネットを使えば簡単だし、私もスクラップを見るよりも、もっぱらキーワード検索を頼りにしている。それでもスクラップ作りを止められないのは、時折パラパラとめくると、忘れていたニュースを思い出したり、時代の流れを振り返ったりして、頭の中を整理することができるからだ。

 中身は、私が専門とする建設、住宅、不動産、さらにIT分野の記事が中心だが、やはり金融、為替、株式などマクロ経済の記事も多い。ほかに合併・買収などエポックとなる経済事件、地震や事故などの大災害、戦争や武力衝突、主要国の政権交代など、気になった記事をただ時系列に貼り付けているだけ。多少、記憶力は怪しくなってきているが、「何年の何月頃」ぐらいは覚えているので結構、目的の記事を簡単に探すことができる。

 スクラップの良さは、その時代の臨場感が甦るところだ。ニュースに対する報道機関の思い入れが、凸版の「見出し」や「写真」からストレートに伝わってくる。インターネットで記事を検索しても、見出しの大きさがどれも同じで、写真も著作権の問題もあるためか、古いものはどんどん削除されてしまう場合が多い。スクラップなら、ブログに掲載したようにカット写真としても使うことができる。

政治の停滞が続いた2年間―議員は国民のために働いたのか?

 前置きが長くなったが、日本の政治は07年の参院選挙の後、停滞期に入ってしまった。「自民 歴史的大敗」との凸版見出しと、口を一文字に結んだ安倍首相(当時)の写真が衝撃の大きさを物語っている。その後の9月12日の「安倍首相辞任」、2008年9月1日の「福田首相辞任」、2009年5月11日の「小沢民主代表辞任」と、辞任記事を3つ並べてみた。記事はいずれも朝日新聞の埼玉版だが、凸版見出しは全て漢字だけで、ひらがなが使われていない。凸版の大きさは首相と民主党代表ではさすがに差がある。並べてみると違いは一目瞭然だ。

 この2年間、決して日本社会も世界情勢も安泰と言える状況が続いていたわけではない。参院選挙後の07年秋頃から、建築確認制度の規制強化による建築不況が表面化し、サブプライム問題の影響で不動産市況も悪化。2008年に入ると、原油など資材価格の高騰に翻弄され、9月のリーマンショックで世界規模での金融危機に見舞われた。日本でも派遣切りなどによる雇用不安が噴出し、消費不況が深刻化している。

 政治課題も、道路特定財源、後期高齢者医療制度、公務員制度改革、消費税、年金制度などの国内問題に加えて、北朝鮮、ソマリア沖海賊対策での自衛隊派遣、北方領土問題など挙げれば切りがない。どの問題も日本の将来を大きく左右する重要な問題であるはずだが、目先の利益を優先して将来のビジョンもないまま、行き当たりバッタリで対応してきたように見える。

 世界が大きく動いている重要な時期に、2年間も日本の政治が停滞したのは、国会議員全体の連帯責任だろう。本来なら、全員辞任して総入れ替えするのが望ましいぐらいだ。最近では、上場企業でも、取締役の任期を2年から1年に短縮するところが増えているが、国会議員がいまだに衆院で4年、参院で6年の任期は長すぎるのではないか。いくら国の政策を動かすのは大変だと言っても、高い給料を払っているのだから、国民のために真剣に働いて1、2年で結果を出してくれなくては困る。

遅々として進まない政治の「見える化」

 選挙は、国会議員のほか、都道府県知事&議員、市町村長&議員を含めると、平均して毎年1回は行われている計算ではある。そのたびに選挙カーが走り回り、スピーカーで名前を連呼されると思うだけで、これ以上頻繁に選挙があっても面倒だと言う人は少なくないかもしれない。しかし、それは政治の見える化が遅々として進まず、議員がどのような活動を行っているのかが国民に十分に見えていないからだろう。

 国会議員にはリコール制度がないと聞く。市町村レベルであれば、リコール制度を使って苦労しながら首長や議員を罷免することは可能だが、さすがに都道府県レベル以上、国会議員となると難しくなる。”完全無所属”を詐称しながらも当選してしまえば、そのまま居座ることもできる。選んだ方は忸怩たる思いがあるだろう。 女性同伴でゴルフ・温泉旅行した議員も、今度は病院でのんびりと静養中だ。

 上場企業であれば、年に一度は株主総会が開催され、企業経営者は株主総会で承認されなければ、取締役を続けることはできない。四半期ごとの決算発表で、経営成績も数字で公表される。さらに経営者は、株主だけでなく、全てのステークホルダー(利害関係者)とも良好な関係を築くことで、企業の永続的な発展に貢献することが求められる。

 一方で、国会議員が評価されるのは事実上、選挙のときだけだ。政権公約(マニフェスト)も曖昧な内容で、とても客観的な評価ができる中身ではない。しかも小選挙区選挙は、限られた選挙区で一定規模の支持を得られれば良いわけで、結局はカネと票を受け継いで世襲議員が増え続けてきた。

IT活用による選挙の効率化で、議員の任期短縮も実現可能では?

 最近の国政選挙を振り返ると、狭い範囲の争点で国全体の舵取りを行う政権が選ばれてきた印象がある。2005年9月の衆院選挙は、まさに郵政民営化だけを争点に行われた選挙で、結果的に自民党・公明党の与党に3分の2以上の議席を与えてしまった。その絶大な数の力を郵政民営化問題以外にも振り回し始めたのを見て、国民は慌てて年金問題が最大の争点となった07年7月の参院選挙で与野党を逆転させて歯止めをかけたものの、政治の停滞を招いた。

 今年9月までに実施される衆院選挙は、日本で初めて「政権交代」が最大の争点となる選挙になるだろう。非常に画期的なことではあるが、具体的な争点となると国民に判りやすいポイントに絞られ、何かの拍子で選挙結果が大きく振れる可能性も高い。

 限られた争点やイメージで政権選択が行われるのは、いわゆる”衆愚政治”を招くと懸念する向きもあるだろう。しかし、これからも二大政党の間で政権交代しやすい小選挙区制を継続していくなら、判りやすい争点による二者択一型の選挙が今後も続いていく可能性は高いだろう。そもそも、全ての政策を比較して、総合的に優劣を評価できる有権者がどれぐらいいるかである。自分自身を考えても自信を持って評価できるは言い難い。

 先の郵政選挙を考えても、一回の選挙で4年間も無条件に強大な権力を与えるのは、国民にとってリスクが大きい。むしろ頻繁に選挙がある方が、国民の意思をストレートに反映しやすくなるのではないか。衆院議員の任期を半分の2年に短縮し、議席の半数ごとに毎年選挙を行う。政権内での権力のたらい回しを防止し、優秀な人材が政治に新規参入しやすくなり、政治に対する国民の関心を高めることもできるだろう。

 さらに頻繁に国政選挙があれば、カネのかかる選挙はさすがにできなくなる。選挙カーで走り回るような時間もないだろう。選挙目当ての人気取り政策ばかりも続けられなくなる。日頃から各議員はホームページを通じて地道に情報発信し、客観的な成果を示していく活動が求められる。政治の見える化を進めざるを得なくなる。

 選挙活動も、インターネットに接続できる地上デジタル放送対応テレビが全ての家庭に普及すれば、ITを活用して効率的に行うことが可能になる。選挙の投票・集計も、電子投票機を導入することで大幅に軽減できるので問題はない。選挙を頻繁に行う負担がIT活用で解消できれば、国会議員の任期を短縮できないわけでもないだろう。案外、議論してみる価値がありそうである。

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