【コラム】建物の固定資産税が安くなるって、どういうこと?―日本社会のソフトインフラ整備を考える(2)のおまけ(2010-04-20)

最近、株式会社建物鑑定という会社が、固定資産税に関するテレビコマーシャルを流しているのを良く見かける。建物の鑑定評価によって固定資産税の還付金が戻ってくるという内容だ。わざわざテレビコマーシャルを流すというのは、裏を返せば地方自治体が固定資産税を決める根拠となる鑑定評価にバラツキがかなりあるということである。ホームページを見ると、東京都議会の議事録を抜粋して再鑑定の必要性をアピールしているが、公平であるべき税金にそれほどバラツキがあって良いものなのか。

 固定資産税については、以前から様々な問題が指摘されてきた。80年代のバブル経済で暴騰した地価を沈静化させるために1991年に導入された地価税を検討する政府の税制調査会の委員だった明海大学名誉教授の長谷川徳之輔氏によると、当初は固定資産税の見直しに手を付けるべきとの意見があったようだ。しかし、固定資産税の見直しは、全ての土地所有者からの強い反発を招くだけでなく、「課税根拠を明確に示さずに税金を取りやすいところから取ってきた」行政側にとっても不都合な問題が出てくるために手を付けられなかったと証言する。

 同じく政府税調の委員だった東急不動産会長・社長だった故・安芸哲郎氏によると、固定資産税は税金の支払能力に関係なく課税される応能税であるため、一律の引き上げは困難として見送られたという。結果的に大手企業のみを狙い打ちにする地価税が新設されたわけだ。

 未来計画新聞で紹介した住宅履歴情報の共通IDの普及を進めている関係者の間でも、こんな会話が交わされていて驚いた。「共通IDは、固定資産税にも活用できるID基盤だけど、それを言ったら共通IDそのものを潰される危険があるから、言わないでおこう」―とにかく、固定資産税に触れるのはタブーであると多くの人が認識している問題なのである(そう言いながら、私自身は記事に書いているわけだが…)。

 そうこうしているうちに、固定資産税の不透明性を利用してビジネスを展開する企業が登場してきた。企業としては先見の明があると言えるが、課税の公平性の観点から考えると、果たして正しい姿と言えるのだろうか。建物鑑定でも、税額を行政側が決めて課税する賦課制度から、第三者機関が査定して納税者が申告する申告制度に移行すべきと提言している。そうであれば当然、行政として土地、建物を統一IDで管理して、国民ID制度と連携させていくことが不可欠となるはずである。あまり余計なことは書かない方が良いのかもしれないが…。

つづく