【コラム】選挙直前のトップ交代は政権与党として筋が通らない(2010-06-07)

 政治の世界は選挙で勝たなければ意味がないことは理解している。しかし、参院選挙直前に政権与党が代表者2人を交代させるのは、国民をこれほど馬鹿にした話はない。まだ自民党が麻生太郎総裁のまま昨年8月の衆院選挙を戦って敗れた方が潔かった。本当に小沢一郎前幹事長と決別した政治を行うというのなら、菅直人首相はすぐに衆議院を解散して総選挙を実施するべきだろう。マニフェストに書かれた個々の政策も重要ではあるが、それ以上に「筋を通す」ことを大事にするべきではあるまいか。

 正直言って、小沢さんにはガッカリした。鳩山前首相に言われて辞任を決めたのか、選挙対策のポーズとして辞めたのかどうかは、政治記者ではないので判らないが、今の時期に辞めるのは自らの政治力を残すための保身と言われても仕方がない。小沢さんの公式サイトのパーソナルデータには、「許せないこと」として「事実でない報道」と並んで「筋が通らない事」と書かれているが、今回の首相・幹事長交代は「筋が通らない事」ではないというのか。

 昨年の衆院選挙前にも西松建設問題で民主党の支持率が低下した。この時は小沢さんが代表を退くと、支持率が回復して歴史的な政権交代を実現させたが、野党であれば、選挙に勝つために直前の代表交代もあり得る戦術だっただろう。しかし、政権与党では立場が違う。前回と同じことを、今回も行うのではないかと危惧していたのだが、政権与党がやるべきことではない。過去9か月間に行ってきた政権運営をチャラにして、新しい顔を立てて選挙を行うのは、どう考えても筋が通らないし、自民党がこれまでやってきた手法と何ら変わらないことになる。

 参院選挙で民主党が勝てば、当選するのは小沢さんが選んだ候補者たちだ。そうした数の力を背景にして小沢さんが復権したときに、菅さんは小沢さんの影響力を排除し続けられるだろうか。いまの民主党政権を作り上げた立役者は小沢さんであることに変わりはない。小沢色を消して何とか乗り切ろうとする民主党に、本当に日本の政治が変えられるのだろうか?と疑わしくなる。

 テレビでは、菅首相誕生で民主党の支持率がV字回復したと盛んに囃し立てている。菅内閣が発足しても、現状では政策的に何も変わらないと思うのだが、なぜ、支持率が急回復したのかが全く伝わってこない。それにしても、いとも簡単に支持率が上がったり、下がったりする政権と国民の関係とはいかがなものか。もう少し国民も覚悟を決めて政治と向き合う必要があるのではあるまいか。