【コラム】2009年の年頭に思うこと―鹿島の社長交代予想も付けて(2009-01-09)

新年、明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。

 人間、歳を重ねると頑固になりがちである。人生をそれなりに生き抜いてきたという自負が、そうさせるのかもしれない。日本社会も高齢化の進展とともに頑固さが増して、柔軟性を欠いてきているのではあるまいか。もちろん信念を曲げない頑固さが必要な場合もあるが、時として傲慢になってしまえば、記者という商売は務まらなくなるし、社会は硬直化して身動きが取れなくなる。年の初めに自戒しつつ、謙虚さを持ってひとつひとつの疑問を読み解くことに今年も力を入れていきたい。スピード感も大切だが、先行きの見えない時代、十分な議論をせずに結論を急いでも、決して良い結果は生まれないと思うからである。

金融自由化に対する素朴な疑問

 「金融自由化の本質とは、カネのあるところにはますますカネが集まり、カネのないところからはカネが逃げていくことではないのか?それが、なぜ日本の社会にとって良いことだと言えるのか?」―1990年のバブル崩壊後、日銀記者クラブに在籍して金融担当記者だった頃、こんな素朴な疑問を金融関係者にぶつけて歩いて回ったことがある。

 すでに日本の金融自由化は、83年11月の中曽根首相―レーガン米大統領(当時)の「ロンヤス会談」で合意して、既定路線となっていた。それによって外資系企業の日本進出が活発化してオフィス不足が生じるとの予測が浮上。そこに金融機関がジャブジャブの資金を供給して土地バブルが発生した。バブルは崩壊しても、大手銀行は一段の金融自由化に向けて郵便貯金や住宅金融公庫(現・住宅金融支援機構)に対して民業圧迫との批判を強めていた。

 金融自由化を推進する以上、郵便貯金や住宅金融公庫の存在は民間金融機関にとって大きな障害であることは私にも理解できた。しかし、庶民にとって高金利で安定した定額郵便貯金が魅力的な商品であるのは間違いなかったし、金利自由化によってそれ以上に魅力的な商品が登場するとも思えなかった。

 「金融自由化で投資家は儲かるようになるだろうが、一般消費者もそれなりに儲かるようになって恩恵を受けられる」と、ある大手銀行の幹部は答えた。直感的に「そんなことはあり得ないのでは?」とは思ったが、金融業界をいくら取材しても金融自由化に否定的な意見は聞かれず、私も疑問の解明を途中で諦めてしまった。

真相究明を諦めてしまった苦い経験

 真相究明は、記者に課せられた最大の使命である。ただ、アウトプットが出せないような難問ばかり追いかけていても、記者としては”商売上がったり”になってしまう。結局のところ、知らず知らずに自分の手に負えそうなテーマばかりを選んでいるのが実態かもしれない。正月早々、情けない話を告白したが、その時も適当な理由を付け自分を納得させて、疑問の解明を先送りしてしまった。

 適当な理由とは、世界第2位の経済大国となった日本が金融分野でも成功を収め、少し前のアイスランドのような豊かな金融立国を実現するだろうという希望的観測だった。大手銀行幹部の言葉を「何らかの勝算があって言っているのだろう」と都合よく解釈しただけのことである。

 今から振り返れば、金融資本市場を思い通りに上手くコントロールできると思っていたこと自体、傲慢になっていたように思える。勝ち組が負け組にも分け前が残るように配慮しながら適度に勝つことなど、冷静に考えてみればあり得ない話である。強欲資本主義は何も米国に限ったことではないだろう。

書かずに後悔したくはない

 記者の影響力など高が知れているのは判っている。ただ、「あの時、感じた疑問を追究して、情報発信しておくべきだった」と後悔することは数限りない。姉歯事件が発端となった建築基準法改正問題にしても、最初に示された改正骨子の段階で課題が多いことを指摘。その後、様々な問題が生じることを予想していながら、途中で取材をサボってしまい、法改正の副作用について事前に警鐘を鳴らすことができなかった。

 約1年前まで活況を呈していた不動産投資市場についても、ファンドによるバブルの可能性が高いと思いつつ、その問題点を十分に指摘できていなかった。もちろん問題点を指摘したところで状況が変わったわけではないだろう。むしろ「余計なことを…」と業界関係者からは疎んぜられただけかもしれない。

 しかし、”余計なこと”であっても書くのが記者の商売である。かつて大手新聞社には結構いた「書かない大記者」になって偉そうにしているよりも、若い人たちから「いい歳をして、余計なことを書かないでよ」と言われ続けたいと思っている。

トヨタ自動車の社長交代が行われるらしいが…
 
 2009年の新年早々、余計なことと言われそうだが、大手ゼネコンの鹿島で今年、社長交代する可能性が高まってきたと見る。1月9日付けの日本経済新聞がトヨタ自動車のトップ交代を報じ、トヨタでは創業家の豊田章夫副社長の社長就任がほぼ確実となったからだ。

 偶然の一致(?)かもしれないが、トヨタ自動車の役員人事で創業家の豊田章夫氏が昇格すると、同じタイミングで鹿島でも鹿島一族の渥美直紀副社長、石川洋専務の昇格人事が行われてきた。鹿島家が鹿島の社長就任への強い意向を持っているのならば、トヨタで創業家への大政奉還が実施される今年は絶好のチャンス。やれる時にやらなければ、来年以降、また環境が変わってしまう可能性もある。

 梅田貞夫会長も、今年5月で日本建設業団体連合会(日建連)会長在任が2期4年となり、交代が確実とみられる。今年、中村満義社長から渥美副社長へのバトンタッチがもしなければ、その方が建設業界にとって大ニュースかもしれない。