新設住宅着工戸数が消費税率アップの駆け込み需要もあって2013年度は5年振りに年間100万戸の大台を回復する可能性が出る一方で、空き家も増加の一途を辿っている。2008年度の総務省調査で空き家戸数は約760万戸で、住宅ストックに占める空き家率は13.1%。うち個人住宅は約270万戸に達している。これら空き家の活用を図ろうと国土交通省では今月、個人住宅の賃貸流通を促進するためのガイドラインを策定、公表したところだ。

 2013年の新規上場(IPO)は54社で、リーマンショックがあった08年の49社を上回ったが、うち住宅関連企業のIPOは12社と2割超を占めた。アズマハウス(和歌山市)とアーキテクツ・スタジオ・ジャパン(ASJ)の2社にフォーカスし、アズマハウスは「住宅市場に全方位展開する県内ナンバーワンビルダー」、ASJは「建築家が営業力を発揮する工務店ネットワーク」とビジネスモデルの特徴を解説した。

 その他の13年IPOは、アサンテ(シロアリ防除、リフォーム)、タマホーム、サンヨーホームズ、サンワカンパニー(建材ネット販売)、オープンハウス、オウチーノ(住宅情報サイト運営)、日本アクア(断熱材の販売施工)、イーグランド(中古マンションの買取再販)、ダイキアクシス(浄化槽の製造施工)、シンプロメンテ(店舗・厨房の維持管理)。(要約)

 住宅市場の先行きに不透明感が漂っている。消費税率アップを4月に控えて、戸建て住宅大手の受注額は昨年9月までの駆け込み需要の反動減で10月以降は前年同月比2割前後の落ち込みが続いている。年明けの状況を聞くと「住宅展示場の来場者数は戻っている」(大手ハウスメーカー幹部)と平静を装うのだが、内心は穏やかではないだろう。

消費税引き上げに伴う駆け込み需要と反動減が続くなかで、市場はどう動くのか。8人のインタビューから2014年の市場を予測する。

・戸建分譲「10%以上の成長をめざす。恐れているのは金利上昇」飯田グループホールディングの西河洋一社長

・耐震改修「耐震は工務店の得意分野補助金の選択増やすべき」ナイス事業開発本部設計部の鈴木芳郎部長

・中古住宅仲介「サービスの進化が流通市場に評価された」東急リバブル流津事業本部の三木克志取締役常務執行役員

・本部長・人材不足「市場縮小は避けられない『名棟梁』を育てる」アキュラホームの宮沢俊哉社長

・ストック活用「価格査定を変えた国や金融機関に期待」優良ストック住宅推進協議会(スムストック)の中林昌人代表幹事

 以上、5人を千葉がインタビュー。ほかにトヨタホームの森岡仙太社長、パッシブハウス・ジャパンの松尾和也理事、JBN大型木造建築研究委員会の松本照夫委員が登場。(要約)

 消費税率引き上げに伴う経過措置が9月末で切れた時点で、積水ハウス、旭化成ホームズ、タマホームなどを取材してまとめたレポート。大手は、住宅市場の長期的トレンドを見据えて「シェア拡大」と「ストック重視」の戦略を一段と強化する。

・タマホーム「工務店流の手腕で今後も新築戸建に注力」玉木克弥常務社長室長

・積水ハウス「住宅を売って終わりのビジネスモデルに決別」畔柳均コーポレート

・コミュニケーション部IR室長・旭化成ホームズ「耐震と耐火を武器に新築シェアを拡大」秦考一マーケティング本部長

 東日本大震災のあと地域コミュニティの重要性が改めて認識された。三井不動産グループでは2011年7月に「サステナブル・コミュニティ研究会」を立ち上げ、マンション住民の共助・互助のためのコミュニティ活性化支援プログラムの開発に着手。先月開催した実証実験報告会では入居挨拶会やチャリティイベントなどの活動成果を紹介した。

 国土交通省の「中古住宅の流通促進・活用に関する研究会」報告書が6月26日に公表された。中古住宅の流通活性化に向けて適切な建物評価の実現に向けた提言が行われたが、10年前に執筆したコラム「家づくりの経済学」で原価法による建物評価の問題点を指摘した筆者としては感慨深いものがある。今後、国交省、金融庁、住宅業界、金融機関を含めて本格的な対策に乗り出すことになるが、しばらくお蔵入りになっていた「家づくりの経済学」を未来計画新聞にMKSアーカイブとして再掲載することにした。住宅ローン金利などの情報は10年前のままだが、基本的な考え方は現在でも十分に通用すると思っている。独自に考案した「居住コスト計算法」(記事の最後に簡単な解説)を使って住宅取得シュミレーションソフトを開発すれば、新築か、中古+リフォームか、定借か、賃貸か―を消費者が客観的に判断する指標として役立つだろう。居住コストのような共通指標で比較しながら、どの居住形態を選ぶかを消費者に委ねることで、中古住宅の建物評価が適正化されていくことが期待できるのではないだろうか。

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MKS「家づくりの経済学」(2003年〜06年)

 医療情報ネットワークと接続されて高度で効率的な医療介護サービスを提供する賢い「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」――それが筆者が考える「スマート・サ高住」のイメージだ。スマートグリッド(賢い電力網)でネットワーク化されてエネルギーを賢く効率的に使用するスマートハウスの高齢者向け住宅版である。国土交通省の「ヘルスケア施設供給促進のための不動産証券化手法の活用及び安定利用の確保に関する検討委員会」の最終会合(3月6日開催)で、国際医療福祉大学大学院教授の武藤正樹氏がヘルスケアリートの投資対象となるCCRC(Continuing Care Retirement Community)の実現に向けてICT(情報通信技術)の活用を提言した。医療情報ネットワークを医療介護サービスの高度化・効率化に活用すると同時に、ヘルスケア施設の事業運営状況を投資家に情報開示するための仕組みとして利用することでヘルスケア施設の整備・拡充につなげることが可能ではないだろうか。

 大和ハウス工業のマンション事業統括上級執行役員に10月1日付けで、野村不動産ホールディングス副社長を2011年3月末で退任した高井基次氏が就任した。マンション業界からは「ウワサが飛び込んできたときには本当に驚いた。マンションビジネスにおける高井氏の力量は誰もが認めるところ。社内にもボヤボヤしているとやられれるぞ!とハッパをかけた」(三菱地所レジデンス・小野真路副社長)と早くも警戒する声が聞こえる。連結売上高で住宅メーカートップの積水ハウス、さらにゼネコンの鹿島も抜いて日本最大の建設会社になった大和ハウスだが、グループ子会社を含めて大会社らしからぬ思い切った人材登用が企業成長を支えているのかもしれない。

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 三井ホームが9月10日、三井不動産などが推進するスマートシティプロジェクト「柏の葉キャンパスシティ」(千葉県柏市)内にスマートハウスの実証実験住宅「MIDEAS(メディアス)」=写真=を建設し、報道陣に公開した。独自開発のHEMS(家庭用エネルギー管理システム)に、太陽光発電、ダブル蓄電池、アシスト電源(ディーゼル発電)のほか、空調システム、家電製品、電動窓開閉システム、各種センサーなど約500アイテムの設備機器・センサー類を接続して、制御可能な仕組みを構築。今後は同住宅を使って居住者の好みや要望に合わせて空調、窓、照明などの機器を最適に制御するアプリケーション開発に力を入れる。スマホ(スマートフォン)と同様に、スマートハウスでもアプリ開発が今後の市場競争の鍵を握ることになりそうだ。

 経済産業省と国土交通省は8月21日、住宅・建築物の省エネ基準を見直す合同会議の第一回会合を開催した。今回の基準見直しでは、これまで消費者に分かりにくかった省エネ基準を一次エネルギー消費量(J:ジュール)の指標に一本化する。住宅ごとに同じ基準でエネルギー消費量を表示できるようにすることで、消費者が住宅の省エネ性能を比較できるようにするのが狙い。自動車では、テレビコマーシャルで「リッター●キロ」と燃費性能を盛んにアピールしているが、新しい省エネ基準の導入で住宅・建築物でも“低燃費”競争が本格的に始まることが予想される。

 シェアハウスやソーシャルアパートメントなどの賃貸ビジネスを、地域社会に貢献する「ソーシャルビジネス」として展開することはできないだろうか。単身世帯の増加による「自助」基盤の弱体化から、高齢者に自立した生活をできるだけ長く続けてもらうために「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」が登場したように、共同住宅の共用スペースを社会が抱える問題を解決するために積極的に活用するという考え方だ。例えば、就職オリエンテーション機能付きの若者自立支援住宅とか、職業訓練機能付き中高年再雇用支援住宅とか、農業研修者向けシェアハウスとか、さらにインキュベーション機能付きシェアオフィスもあるだろう。デベロッパーや賃貸事業者も、そうした人々を支援する行政や企業、NPO、ボランティアグループと積極的に連携していく必要があるのではないか。

 共同住宅の共用スペースには、マンションやシェアハウスなど居住形態によってどのような違いがあるのだろうか―。取材する前までは、ほとんど考えたこともなかったが、どうやら居住形態によって共用スペースの位置づけや居住者との関わり方に違いがあるようである。共同住宅では、居住者が空間を「つくる」または「デザインする」のは難しい面はあるのも確かだが、やはり居住者が共用スペースに積極的に関わっていくことが重要である。ここ1、2年、まちづくりや地域活性化で注目が高まっている「コミュニティ・デザイン」の考え方を共同住宅にも取り込む必要がありそうだ。

人が集まって住めば、コミュニティが自然に形成されるわけではない。鍵を握るのは、共用スペースのあり方と居住者・利用者の意識だろう。東日本大震災を契機に、共同住宅でも人と人との繋がりやコミュニティを重視する動きが広がっている。かつて地域ごとに「入会地」や「里山」など共用スペースがあって、燃料や食料など共有資産の管理を通じて地域コミュニティが形成されていたように、共同住宅でも共用スペースがコミュニティ形成の重要なポイントであると考えられる。最近、シェアハウスやコレクティブハウスなど共用スペースが重要な役割を果たしている共同住宅の事例を取材する機会があったので、改めて共用スペースとコミュニティの関係について整理する。

 「スマートハウス」という言葉をご存知だろうか。直訳すると「賢い住宅」だが、そのイメージは人によって千差万別だ。IT(情報技術)とエネルギーの2つがキーワードであることは間違いないが、住宅業界、IT業界、それぞれの立場によって都合良く言葉を使っている印象は否めない。これまでも省エネ住宅、ソーラーハウス、ゼロエミッションハウス(ZEH)、エコハウスなど様々な言葉が登場しているが、スマートハウスは何がどう違うのか。「スマートハウスにはまだ、はっきりした定義がない」と、ある会合で経済産業省の渡邊昇治・住宅産業窯業建材課長は述べていたが、スマートハウスの旗振り役であるはずの経産省幹部の発言の真意はどこにあるのか?

新築住宅を購入するのに私が分譲を選ばない理由は、単純に自分が建築主になれないからである。設計者や施工者を自分で選べないし、施工の状態もチェックできず、工事検査にも立ち会えない。もちろん分譲業者にも信頼できる会社はたくさんあると思うが、建物の安全・安心を一番分かっているのは設計者と施工者自身である。ハウスメーカーや工務店でも、建築主を“お客さん”扱いして設計者や施工者の顔が見えないのも遠慮したい。
■家づくりの責任は建築主→施工段階もしっかりとチェックする
■設計者が信頼する施工者を選ぶ→ものづくりの品質を決めるのは現場監督と職人
■工事検査に建築主も立ち会う→第三者の専門家の意見も聞く
 最近では、分譲住宅や中古住宅を購入する時に、建築士やホームインスペクター(住宅検査員)など第三者を同行して物件をチェックする消費者も増えているが、最後に判断するのは購入者自身であることを忘れてはならない。

 家づくりの安全・安心をどのように確保するか―。ものづくり全般に通じることだが、科学・技術に対する謙虚な姿勢と倫理観を持つこと、安全・安心を実現するためのプロセスを大事にすることの2つが重要だろう。私が戸建住宅を選ぶ最大の理由も、建築主自らが安全・安心な家づくりに直接関わることができるため。ゼネコンや工務店を信用していないわけではないが、安全・安心の基準を決めて管理できるのは建築主だけだからだ。私が考える設計のポイントは次の3つである。
■家づくりと家守りの責任は建築主→お任せにせずに建築主が安全・安心を決める。
■優秀で信頼できる建築士(建築家)をパートナーに選ぶ→家はヒトがつくる
■デザインで安全・安心を実現する→安全・安心とデザイン性・使い勝手などを両立するのが本当の設計力
 シリーズ第1回にも書いたが、「生命・財産の安全は自ら守る以外にない」、基本的に他人任せにしないことである。

 「太陽光パネルなどを設置する住民がまとまれば、もう立派な電力事業者だ。その立場から、政府や電力会社に圧力をかけてマンションを含めて再生可能エネルギーの普及を促進していくことが必要ではないか」―2010年9月に神奈川県地域温暖化防止活動推進センター(NPO法人かながわアジェンダ推進センター)主催の太陽光発電の明日を考えるシンポジウム2「マンション、アパートにも太陽光パネルを」の基調講演で、筆者はそう呼びかけた。発電量に占める再生可能エネルギーの比率が高まれば、消費者である住民が発電事業に果たす役割は大きくなる。単に計画停電や省エネ・節電に協力させられる立場から、電力事業者として積極的にエネルギー政策に関わっていく発想が必要ではないだろうか。
 太陽光発電などの再生可能エネルギーの固定価格全量買取制度をマニフェストに掲げた民主党が衆院選挙で勝利し、2009年9月に政権交代が実現した。自民党政権時代に導入が決まった太陽光発電の余剰買取制度は導入されようとしていたが、11月のオバマ米大統領の初来日に合わせてスマートグリッド、スマートメーターの本格導入に向けて「次世代エネルギー・社会システム協議会」が発足。同時に再生可能エネルギーの全量買取に向けたプロジェクトチームも設置された。政権交代で、自然エネルギーとスマートグリッドの導入が一気に加速するとの期待が高まったが、果たしてどうだったか。
 2008年7月の北海道洞爺湖サミットで、福田康夫首相(当時)がCO2削減の長期目標を打ち出した頃、電力業界が太陽光発電の大量導入にかなり神経質になっていたのは確かだ。すでに太陽光発電の電力買取は実施されていたが、既存の送電線網を経由しての買取量が増えれば増えるほど、送電線網の安定化対策が避けられなくなり、巨額の設備投資が必要になるからだ。その議論の過程で、欧米などで構築が始まった「スマートグリッド(賢い電力網)の導入」、さらに過去に封印した「発電事業と送配電事業の分離」といった問題が再浮上する懸念もあった。なかでも「スマートグリッド」という言葉に異常と思えるほど電力業界は過敏に反応していた。

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