東日本大震災のあと地域コミュニティの重要性が改めて認識された。三井不動産グループでは2011年7月に「サステナブル・コミュニティ研究会」を立ち上げ、マンション住民の共助・互助のためのコミュニティ活性化支援プログラムの開発に着手。先月開催した実証実験報告会では入居挨拶会やチャリティイベントなどの活動成果を紹介した。

 「マンション内だけでなく、地域との連携をどう進めたらよいか」―報告会ではこうした質問が参加者から多く寄せられた。管理組合が組織されているマンション住民の中には地域の町会・自治会に参加してもメリットがない、煩わしいと考えている人が少なくない。そのために町会・自治会に参加していないマンションは多いと言われるが、実態はほとんど判っていない。


 マンション管理組合は区分所有法に基づいて共有財産を管理するための組織だが、町会・自治会は地方自治法にも明確な規定がない。戦時下に国主導で組織され相互監視機能を担った「隣組」の反省から任意参加になったようだ。しかし、現在でも地域コミュニティの様々な活動が町会・自治会単位で行われているケースは多い。


 筆者が住むさいたま市緑区は戸建てが多い郊外の住宅地だが、マンションもかなり増えた。やはり自治会に加入していないマンションは多く、賃貸住宅では公務員官舎などを除いて参加しない世帯がほとんどだ。区役所に聞くと、自治会の世帯組織率は年々低下傾向にあり、すでに6割を切っているという。そうした危機感から、震災後は自治基本条例などを制定して町会・自治会活動を強化しようとする自治体が増えていた。


 マンション標準管理規約の改正を目的に国土交通省が2012年1月に設置した「マンションの新たな管理ルール検討会」の議論が紛糾している。昨年8月までに8回の検討会が開催されたあと1年以上も休止状態が続く。管理組合とコミュニティ活動に線引きが必要とする学識者や弁護士の委員に対し、現場に携わるマンション管理組合、管理士、管理会社は「コミュニティ形成と管理との線引きは困難」と反発。再開のめども立っていない。


 最近ではマンション住民の高齢化や資産運用目的の賃貸化が進み、管理組合運営の第三者委託を認めるべきとの声が出ていた。この10年で急増した超高層マンションでは資産価値の棟内格差が大きく、住民の合意形成に苦労していると聞く。こうした問題に対処してマンションの資産価値を維持できる環境を整えるのが狙いなのだろうが、なぜコミュニティ形成を切り離す必要があるのか。


 東日本大震災で沿岸部の家屋被災率が7割を超えた宮城県南三陸町には、江戸時代から漁業権や入会地などの財産権をもつ「契約講」と呼ばれる自治組織がある。震災復興まちづくりの原動力はこうしたコミュニティの力である。(2014-05-16:未来計画新聞掲載)

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