新設住宅着工戸数が消費税率アップの駆け込み需要もあって2013年度は5年振りに年間100万戸の大台を回復する可能性が出る一方で、空き家も増加の一途を辿っている。2008年度の総務省調査で空き家戸数は約760万戸で、住宅ストックに占める空き家率は13.1%。うち個人住宅は約270万戸に達している。これら空き家の活用を図ろうと国土交通省では今月、個人住宅の賃貸流通を促進するためのガイドラインを策定、公表したところだ。

 空き家の活用は人口減少が深刻化する地方を中心に定住促進やUIJターン対策として積極的に取り組んでいるが、空き家の増加に歯止めをかける効果は期待薄だろう。新設戸数が年80万戸以上に対して、火事などの災害戸数を含めた住宅滅失戸数は年15万戸以下。そのギャップが世帯数の増加を大きく上回っている状態が続いているからだ。

 国立社会保障・人口問題研究所の予測では、世帯数のピークは5年後の2019年。東京オリンピックの開催に向けて東京圏では住宅需要が活発化しているが、現状のままでは2020年を過ぎると空き家の増加が一気に加速。老朽化して危険なまま放置された空き家問題が一段と深刻化するのは間違いない。

 生産年齢人口(15−64歳)がピークを迎えようとしていた1990年代前半に「放置自動車」が大きな社会問題になった。当時の新車販売台数は年約700万台に対して廃車台数は約500万台。発展途上国などへの中古自動車輸出はあったものの、バブル崩壊の影響もあって適正に処理されずに山の中などに放置された廃車が大量に発生。地方自治体が税金での処分を余儀なくされ、自動車業界への批判が高まった。この時、自動車工業会会長でトヨタ自動車社長だった豊田達郎氏のリーダーシップで業界も本格的な対策に乗り出し、新車購入時に廃車費用を所有者が負担する仕組みを盛り込んだ自動車リサイクル法の制定が2005年に実現、問題は解決した。

 住宅は、自動車のように中古を海外に輸出するのは不可能だろう。日本中を空き家だらけにしないためには、移民政策などで人口を増やさない限り、新設戸数と滅失戸数のバランスを取る以外に方法はない。住宅の新設を制限するのは困難で、国内経済への影響も大きいとなれば、住宅の除却を増やしていくしかないだろう。まだ十分に活用できる住宅を除却するのは資源の無駄ではあるが、国土交通省も住宅業界も住宅の除却政策を本格的に検討しなければならない時期に来ているのではないだろうか。

 老朽化した空き家の解体に補助金を出している自治体も増え始めている。しかし、今後ますます増える空き家への支援は負担が重く、危険な状態になるまで放置すれば税金が投入されるのでは空き家の放置を増長することにもなりかねない。自費で適正に解体・除去する方が損をするようでは問題だ。住宅と自動車では耐用年数が大きく異なるが、住宅でも除却費用を所有者が公平に負担するような仕組みが必要だろう。

 国交省では今国会に提出する建設業法改正案に解体工事の業種区分を新設することを盛り込み、業界への指導・育成を強化していく考えだ。住宅業界でも、解体のコストダウンやリサイクルにも積極的に取り組み、新築・リフォーム分野に加えて解体・除去を新たなビジネスチャンスとして対応する発想が必要となっている。(2014-08-12転載)

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