住宅市場の先行きに不透明感が漂っている。消費税率アップを4月に控えて、戸建て住宅大手の受注額は昨年9月までの駆け込み需要の反動減で10月以降は前年同月比2割前後の落ち込みが続いている。年明けの状況を聞くと「住宅展示場の来場者数は戻っている」(大手ハウスメーカー幹部)と平静を装うのだが、内心は穏やかではないだろう。

 足元の住宅着工は施工能力が間に合わないほどで、受注残の消化で当面は好調を持続しそうだ。今年の暮れにも2015年10月に予定されている消費税率アップを政府が決断すれば再び駆け込み需要が発生して需要が上向くとの見方もあるが、住宅需要は景気にも大きく影響するだけに注意深く見ていく必要がある。

 個人消費の実態をより正確に把握するため、経済産業省では従来の百貨店、スーパー、コンビニエンスストアに加えて、2月から家電量販店、ドラッグストア、ホームセンターの販売額を「専門量販店販売統計調査」として月次公表を開始する。住宅市場の動向を見るのは建築確認申請の件数に基づく住宅着工統計はあるものの、住宅流通市場の公的な統計はなく、消費者に販売・引き渡された住宅戸数は月次で公表されていない。

 「着工すれば、いずれ完成して引き渡されるのだから着工統計があれば十分だろう」(国土交通省住宅局幹部)というが、着工から早ければ2か月程度で引き渡される戸建て住宅から、工期が1年半以上かかる超高層マンションまで千差万別だ。自動車など主要な製造業では、生産統計と販売統計は別々に集計するのは当たり前で、国交省でも中古住宅も含めて流通市場を整備・育成していくなら、着工統計だけでなく流通統計を整備する必要があるのではないだろうか。

 実は新築住宅に関しては流通量を集計するのはそう難しいことではない。2009年に義務付けられた住宅瑕疵担保責任保険(住宅かし保険)の加入データを調べれば判るのだ。

 住宅かし保険は、2005年の耐震強度データ偽装事件を契機に制定された住宅瑕疵担保履行法で、新築住宅を供給する事業者に引き渡しから10年間の瑕疵担保責任が義務付けられて導入された。万一、事業者が倒産した場合でも消費者の負担なしに瑕疵の補修が行えるように「保険の加入」か「保証金の供託」を行う必要があり、そのデータは国交省に報告されている。それを半年単位で集計し、約4か月遅れで公表しているのだが、せっかくまとめてもあまり利用価値はない。

 もし保険加入データを月次単位で集計し、1か月以内にタイムリーに公表すれば新築流通市場の統計として十分に使えるだろう。現在は加入が義務付けられていないので国交省への報告義務がない中古住宅やリフォームのかし保険の加入件数も集計して公表すれば、中古やリフォームのかし保険の知名度も上がるだろうし、加入件数が増えれば中古住宅の流通データとしても利用価値が出てくるのではないだろうか。

 消費税率がアップすれば、個人間売買では消費税がかからない中古住宅の流通が一段と活発化する可能性が出てくる。住宅市場を新築だけで語る時代ではないはずだ。中古を含めて流通市場全体を把握するための統計データの整備を進めるべきである。(2014-08-12転載)

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