国土交通省が「建設産業の魅力を発信するための戦略的広報検討会」を立ち上げ、11月12日に第一回会合を開いた。学識経験者を中心に2010年12月から始まった「建設産業戦略会議」の提言を受けて設置されたものだ。戦略会議そのものが非公開で詳しい議事録も公表されていないので、どういう経緯で戦略的広報が必要という話になったのかは不明だ。ただ、これだけ情報が氾濫するインターネット社会になって、いまさら戦略的広報が必要というのもいかがなものか。長年、建設産業を取材してきた記者としてみれば、「企業トップが産業の未来を何も語らない」業界に戦略的広報もないものである。組織にとって最大の広報マンは誰か。まずは企業の経営トップが自らの考えを自らの言葉で語ることだと思うのだが…。

 建設・住宅・不動産関連の企業業績(連結売上高2000億円以上)の2011年度分をまとめたので公表する。トップは前回と同じ建機最大手のコマツ、2位は大和ハウス工業、3位は積水ハウス、4位はセグメントの組み換えで売上規模が縮小したパナソニックのエコソリューションズ社、5位が鹿島建設の順。新しくランクインしたのは、2010年10月に通信工事会社の大明、コミューチュア、東電通が経営統合して誕生した「ミライト・ホールディングス」、セメント大手の「宇部興産」、道路工事会社2位の「前田道路」の3社。今後は、大和ハウス工業が今年12月にフジタを子会社化するほか、安藤建設とハザマが来年4月1日付けで合併して売上3000億円以上の「安藤・間」が誕生する。建設・住宅・不動産業界でも企業の再編・統合がかなり進んできているが、経営環境が目まぐるしく変化するなかで、企業再編で何を目指そうとしているのだろうか。

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建設スマイルカーブ現象は建設産業にも当てはまるのか?―建設・住宅・不動産関連企業59社の2010年度決算まとめ(2011-05-20)

上場企業の2011年3月期決算発表がほぼ終わり、建設・住宅・不動産関連の主要企業59社(連結売上高2000億円以上)の決算数字を一覧表にまとめた。新聞の多くが決算発表のあとに業態別の決算まとめ記事を掲載しているが、その分け方はゼネコン、住宅メーカー、総合不動産会社、マンション専業など、筆者が新聞社に入社した約30年前とほとんど同じままだ。住宅メーカーの大和ハウス工業と、総合不動産会社の三井不動産を比較すると、いまや事業内容はほぼ同じである。いつまでも昔ながらの業態分けで企業同士を比較しても、産業構造の変化は見えてこない。改めて一覧表を見ると、ゼネコンの地盤沈下とともに、1990年代後半からIT産業で指摘されてきた「スマイルカーブ現象」が、建設・住宅・不動産業でも広がっていることと強く感じるのだが…。
■「建設・住宅・不動産関連企業の2010年度連結業績(売上高2000億円以上)」の一覧表を掲載しました。

 建設・不動産業の2010年度第2四半期の決算が出揃った。大手ゼネコンが2010年度通期の連結売上高予想を軒並み下方修正する一方、大和ハウス工業は、通期売上高予想を1兆6600億円に上方修正。建設企業のトップが、初めて大和ハウス工業に交代することが確実となった。三井不動産の連結売上高もゼネコン大手を抜く見通しだ。国内建設投資が縮小するなかで、均衡縮小を続けるゼネコンに対して、事業多角化や海外事業にも積極的な大和ハウス工業、都市再生に力を注ぐ不動産最大手の三井不動産、M&A(合併・買収)を積極的に展開する住生活グループは着実に成長。建設・不動産分野の産業構造の変革を示すトピックと言えそうだ。 (グラフは主要な建設・不動産会社の連結売上高推移)

 JM(なおしや又兵衛、社長・大竹弘孝氏)は7月20日、日産自動車が今年12月から出荷を開始する電気自動車「リーフ」を購入した顧客向けに、日産ディーラーを通じて戸建住宅向けの充電器設置工事の取次ぎサービスを提供すると発表した。セブンイレブンなどの店舗向け修繕サービスの実績を生かして、緊急時には年中無休で2時間以内に駆け、対応するサービスも提供する。日産リーフは、今年度分の国内販売予定台数の6000台が予約済みだが、うち4割は個人向け。「当初、大半が法人向けと予想していたが、思っていた以上に個人向けが好調」(日産自動車国内企業広報部長・濱口貞行氏)としており、個人向けに充電器設置サービスの体制を整えることにした。

 ものづくりの世界では、製品の鍵を握る技術や標準、仕組みなどの「プラットフォーム(基盤)」を抑えることが、いまや最も重要な戦略だ。インテルやマイクロソフトがICチップとウインドウズでパソコンの世界を制圧し、グーグルが検索ソフトでインターネットの世界を席巻し、アップルはiPodとiTunesで音楽配信の世界を、そしてiPadの投入で電子書籍の世界を支配しようとしている。一方、建設分野では、フローからストックへ市場構造が大きく変化し始めているにも関わらず、単品受注単品生産のゼネコン式ビジネスモデルから脱却する動きが出てこない。今後、建設市場の中心となる小規模・低コストの維持修繕・管理のサービスを提供するのにゼネコン方式では非効率であるのは明らか。では、どうするか―。建設業でも「プラットフォーム戦略」を展開し、市場を“点”ではなく“面”で抑える方向性を探るべきではあるまいか。その可能性を示す事例を今週発売の「週刊ダイヤモンド」6月5日号に書いた。ゼネコンモデルに固執しても建設業は疲弊していくだけである。

 建設労働者の就労履歴情報をICカードやインターネットの活用で一元的に管理する「建設共通パスシステム」の本格運用に向けてシステム開発がスタートした。3月19日に都内で開催されたシンポジウムでは、3年間の研究成果として「導入に向けた技術的な課題は十分に解決できる」との報告が行われたあと、システム開発委員会の委員長となった東京大学の坂村健教授が講演し、社会基盤としての建設共通パスの必要性を強く訴えた。今後は建設業全体への本格普及に向けてICカードの配布方法などの体制を整えるとともに、新しい社会システム基盤を積極的に活用して建設業の構造改革をどのように進めていくか。社会全体が建設業界の新しい取り組みを応援して、労働環境の改善、産業の活性化につなげていくことが必要である。

 ――建設業の再生を透明性の確保という視点から書いたコラム「建設業に求められる「透明性」とは何か?」8本(2002年11月〜03年3月)をMKSアーカイブとして掲載しました。住基カードを利用した就労履歴管理についても考察しています。

 国の公共事業費の大幅削減が進むなかで、少なくなったパイをどのようなルールで分け合うのか―。その鍵を握る国土交通省の直轄事業における公共事業の品質確保の促進に関する懇談会の企業評価検討部会が2月24日に発足し、第1回会合が開かれた。09年4月に改定された09・10年度技術評価点による企業評価を検証したあと、11・12年度の改定について話し合う。先の改定ではCランク業者がDランクに落ちるなどのランク変動が多く発生。それを救済する経過措置が取られたが、来年春の改定では経過措置も廃止される見通し。今後の見直し次第で、建設業者の仕分けが加速することになりそうだ。
 「50万社以上ある建設業者は20万社でも過剰」―前原誠司国土交通大臣がそう発言したと建設業界紙が報じていたが、建設業者が供給過剰であるのは間違いない。では、国内の建設市場規模に対して、どの程度の業者数が適当なのか。50万社と言っても、売上高1兆円以上のスーパーゼネコンから一人親方まで入れた数字である。それぞれの業者が担うべき「機能」は異なっているはずだが、建設業法のうえでは同じ「建設許可業者」だ。それらを十把一絡げで議論するのは、やはり無理があるだろう。建設業者の供給過剰問題と、建設業の雇用問題を分けて議論するためにも、建設業者を「機能」で仕分けすることが先決ではあるまいか。
 建設コスト管理手法「クッションゼロ」の生みの親である安中眞介氏のハルシステム設計が主催する新春セミナー「寅寅寅で、不況に突破口を開く!!文殊の知恵をつかむ」が2月1日、JR東京駅近くの東京国際フォーラム会議室で開催されます。第3部のパネルディスカッション「新型営業の奨め 〜混乱の時代の先には新市場が待っている!!〜」に千葉が出演することになりました。2009年12月に日本建築学会の機関誌に掲載された記事「建築界に明日はあるか?」の中で描いた建設市場の構造変化に、建設会社はどう対応すべきか?について話をしたいと思っています。ご興味のある方は、ハルシステム設計のホームページをご覧ください。
 建設業界にとって2010年は「再編・淘汰の年」となるのだろうか―。2007年4月に未来計画新聞に掲載したコラム「建設業再生のシナリオを考える―ゼネコン再編の第二幕は始まるのか?」のなかで「大手ゼネコンの再編が始るとすれば2010年頃か?」と書いた当てずっぽう(?)な予測を当てたいわけではないが、建設需要の急激な落ち込みによる需給ギャップの拡大は如何ともし難い。本来なら企業ごとに明確な戦略を持って再編に備えるべきだが、建設業の地盤沈下を食い止めて産業の再生につながるような将来像を描く必要もあるのではないか。過去の事例を振り返っても、ゼネコン同士が単純に合併しても成功するのは難しい。2001年に執筆した「私見ゼネコン再編論」の中で「ゼネコンの再編は“企業再編”よりも“機能再編”で考えるべき」と書いたが、改めて“機能”という視点から建設業を考えてみる。

 日本土木工業会の機関誌「CE建設業界」11月号に、コラム「営業戦略の欠如が生んだ利益なき消耗戦」を寄稿し、掲載された。過度な価格競争に陥りがちなゼネコンの営業体質から脱却するべきという“言わずもがな”のテーマで記事を書いたのは、このままでは下期から再びダンピング受注競争に突入するのではないか?という強い危機感があったからだ。主要ゼネコン20社の2009年9月中間期決算で公表された受注計画を集計してみても、上期受注高が前年同期比32.5%と大きく落ち込んだにも関わらず、通期計画の見直しは小幅にとどまった。この通期見通しの数字をクリアするには、下期受注高は前年同期比24.9%増を達成しなければならない。各社それぞれの思惑で数字を積み上げたのだろうが、民主党政権による公共事業費の削減、円高による民間需要の低迷、海外受注の減少と厳しい受注環境が続くなかで、どのようにして受注を確保するのだろうか。まさにゼネコンの営業戦略の欠如を物語る証拠である。

――主要ゼネコン20社の2009年度上期受注実績・通期受注見通し修正額の一覧表を掲載しました。

 掲載前の記事の予告は普通はしないものだが、日本建築学会の機関誌「建築雑誌」12月号(12月10日発行)に記事を寄稿した。「建築界に明日はあるか」をテーマに、九州大学の谷本潤教授から原稿執筆を依頼されたのは昨年12月のこと。今月の締め切り間際まで、何を書くか悩まされ続けたが、私がこれまで書いてきた建設産業・建設市場の構造変化に関する記事を引用しながら、改めて全体的な流れをまとめた。本来なら私みたいな記者ではなく、建築学会のようなアカデミックな場で建設産業論、建設市場論を議論してもらいたいと考えたからだ。記事は2ページ程度にコンパクトにまとめており、そこで引用したうち現在は入手できない記事「新型発注者『投資家』への対処法」(2001年3〜4月)をMKSアーカイブに再掲載する。 <以下、記事の主な内容>
・産業構造問題に関心が薄い(?)エリートたち
・かつての「産業論」は市場主義経済の拡大とともに衰退
・失われた20年で進んだ国内産業のガラパゴス化
・「産業論」の復活が日本経済を救う!

「新型発注者『投資家』への対処法」

 「公共事業費の大幅削減を打ち出している政党と、何を話し合う必要があるのか!」―建設業界が厳しく批判してきた民主党から、8月30日の総選挙に向けたマニフェストが公表された。政治とは所詮、利権の争奪であるとは言え、公共事業費削減による経済、雇用への影響を説明しないまま、公共事業費が狙い撃ちにされた格好だ。民主党によれば今年度の国の公共事業予算7.9兆円のうち16%が無駄というわけだが、建設業界としても総選挙に向けて言うべきことを正々堂々と主張するべきだろう。同時に、国民生活に直結する公共事業を、政治献金や選挙応援の見返りといった”政治の道具”としてきたことを反省する必要があるのではないか。客観的なデータに基づいて必要な公共事業が着実に実施されることが、国民だけでなく、建設業界にとっても望ましいはずである。
 週刊ダイヤモンド09年6月1日発売号の特集「ゼネコン不動産崖っ縁決算」の中で記事を執筆した。昨年9月1日発売のゼネコン特集にも参加したが、今回はリーマンショック後、初のゼネコン特集だけに内容も盛りだくさんで、充実した仕上がりだ。改めて今回のゼネコン決算を振り返ると、納得感が乏しかった。「各社とも、どうやって今年度の受注計画を達成するつもりなのだろうか…?」との疑問をゼネコン関係者からも聞く。本当の正念場は今年度下期からか。総選挙の結果も含めて、しばらくは景気動向を慎重にウォッチしていく必要がありそうだ。
――主要ゼネコン(個別)の2008年受注実績・09年度見通しの一覧表を掲載しました。

 国土交通省が3月31日、「地域建設業の振興に係る緊急対策」をまとめて公表した。週刊エコノミスト3月23日発売号に掲載した記事でも大都市圏に進出した地方ゼネコンの倒産について触れたが、地域建設業を取り巻く厳しい環境を考えれば緊急避難的な措置も必要ではあるだろう。しかし、問題はその先の将来像をどう描くのか―。90年代のように公共事業が大盤振る舞いされていた時代に戻ることは考えられないだけに、ただ救済するだけで再生するのは難しいだろう。思い切った発想の転換が必要なのではあるまいか。

◆最近の「主なゼネコン倒産一覧」(2007〜2008年度)を掲載しました。

 西松建設問題がメディアを賑わすようになってから、建設業界の話題がすっかり出なくなった。火の粉がかからないように沈黙を決め込んでいるのだろう。私も、検察や政治の動きを取材しているわけではないが、今の建設業界の惨状を見れば、政治とゼネコンの蜜月時代はもう過去のこと。それを穿り返して政治が停滞する方が日本にとって問題である。ゼネコンを悪者にして政治とカネの問題で大騒ぎするのはもう止めにするべきではあるまいか。
 写真=3月23日発売の週刊エコノミストの特集「不動産壊滅」。中堅ゼネコンの連鎖型倒産を通じてゼネコンが置かれている経営環境について記事を執筆した。 ◆主要ゼネコンの売上高(単体)下落率(1998年3月期〜2008年3月期)の表を掲載しました。

 日本印刷産業連合会の山口政廣会長(共同印刷会長)に9月の印刷月間に合わせてインタビューする機会があった。2年前にも当時の連合会会長だった藤田弘道・凸版印刷前会長にインタビューしてブログに「産業比較:建設vs印刷」を書いた。今回のインタビューでは、アウトソーシング需要の拡大、ブローカー(仲介業者)の参入、中小業者のコラボレーションなどの話題が出た。「経済のサービス化」の波は、印刷業界にも急速に広がり始め、新しいビジネスモデルを模索する動きが活発化しているようだ。厳しい状況に追い込まれている建設業界において新しいビジネスモデルを議論している余裕はないかもしれないが、勝ち残るためには将来に向けた戦略は不可欠だ。

 週刊東洋経済の記事でも、国土交通省には”悪役”になってもらった。私自身は官製不況という言葉は好きではないと今年6月のブログでも書いたが、編集者から依頼されたテーマは「建設業界に吹き荒れる官製不況の実態」というもの。国交省としても技術と経営に優れた建設業者が生き残るための環境を整えるべく様々な施策を展開してきたわけだが、結果として建設業がますます厳しい状況の追い込まれているのも事実である。いつまでもお上頼みのままで、官製不況と愚痴っても仕方がない。建設業の再生は自らが成し遂げるしかないとの覚悟こそが必要なのではないか?
 週刊エコノミスト6/3号が特集した建設特集「ゼネコン壊滅」に私が執筆した記事が掲載された。タイトルは「『勝ち組』も巻き込む再編淘汰の波」で内容的にはそれほど過激なわけではないが、雑誌の表紙には「『勝ち組』前田、奥村、リストラ転落」と、さらに過激な見出しが目を引く。発売日の5月26日は、タイミングよく(?)日本建設業団体連合会(日建連)の通常総会懇親会が都内ホテルで開催されたので出席したが、多くの業界関係者が読んでくれていたようで、随分声をかけていただいた。まだ、お読みでない方はぜひ購読いただき、感想・意見をいただければ幸いである。

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