【建設】スマイルカーブ現象は建設産業にも当てはまるのか?―建設・住宅・不動産関連企業59社の2010年度決算まとめ(2011-05-20)

上場企業の2011年3月期決算発表がほぼ終わり、建設・住宅・不動産関連の主要企業59社(連結売上高2000億円以上)の決算数字を一覧表にまとめた。新聞の多くが決算発表のあとに業態別の決算まとめ記事を掲載しているが、その分け方はゼネコン、住宅メーカー、総合不動産会社、マンション専業など、筆者が新聞社に入社した約30年前とほとんど同じままだ。住宅メーカーの大和ハウス工業と、総合不動産会社の三井不動産を比較すると、いまや事業内容はほぼ同じである。いつまでも昔ながらの業態分けで企業同士を比較しても、産業構造の変化は見えてこない。改めて一覧表を見ると、ゼネコンの地盤沈下とともに、1990年代後半からIT産業で指摘されてきた「スマイルカーブ現象」が、建設・住宅・不動産業でも広がっていることと強く感じるのだが…。
■「建設・住宅・不動産関連企業の2010年度連結業績(売上高2000億円以上)」の一覧表を掲載しました。

14130301.gifIT産業に見られるスマイルカーブ現象とは?

スマイルカーブ現象とは、IT産業などの収益構造を示した言葉で、パソコン世界市場でシェア第2位となった台湾エイサー社の創始者、スタン・シー会長が使い始めたと言われる。世界規模で製品の標準化と生産の国際分業が進むIT産業では、かつては収益性が高かった製品組立の収益力が低下する一方、事業プロセスの川上段階の研究・開発と部品供給、川下段階の販売・流通とアフターサービスの収益性がアップ。これをグラフ(経済産業省の通商白書2002から)に表すと、人が笑ったようなUの字型になるので、スマイルカーブといわれるようになった。

2000年代後半になると、IT産業だけでなく、他の産業にもスマイルカーブ現象が広がりつつあると指摘する経済学者が出てきた。筆者も、建設・住宅・不動産業の産業構造がIT産業との類似性が高いことに注目して、IT産業が辿ってきたような構造変化が建設・住宅・不動産業にも起きる可能性が高いとの見方をしてきた。2010年11月に東京大学のオープンレクチャーで講演したとき、主要な日本企業の過去10年の業績推移をグラフにまとめ、ゼネコンの地盤沈下と、総合不動産会社と住宅部品メーカーの成長振りを対比して見せた。

住生活グループと大東建託が1兆円企業の仲間入り

今回、一覧表をまとめたのは、決算数字が出揃ったところで、現状を再確認するためだが、業界全体を俯瞰して見ると、この10年間に起きた構造変化を改めて実感するだろう。10年前、連結売上高トップはゼネコンの鹿島で、2兆円前後の事業規模を誇っていた。清水建設、大成建設などゼネコン大手5社が上位を独占していたが、いまや事業規模のトップは建機最大手のコマツであり、建設許可業者では大和ハウス工業が首位である。部材メーカーの住生活グループと、賃貸住宅建設の大東建託が1兆円企業の仲間入りを果たし、ゼネコン中心の産業構造が大きく転換したのは明らかだ。

とくに注目すべきは、収益力の違いだろう。総合不動産会社の収益力が高いことは以前から知られていたが、海外市場で7割以上を稼ぐコマツの収益力の高さは目を見張るものがある。建材・部品メーカーでも、ニトリやリンナイが営業利益率10%を上回っており、パナソニック、住生活グループも組立生産を請け負うゼネコンと比べると利益率が高い。もう少し細かく分析する必要はあるだろうが、スマイルカーブ現象が、建設・住宅・不動産分野にも当てはまるのではないだろうか。

10年後もコアビジネスは建設事業なのか?

今年も、鹿島、清水建設、大成建設のゼネコン大手の決算発表には出席したが、巨額の損失を被った海外事業などの敗戦処理がいまだに続き、具体的な将来ビジョンが描けていないという印象だ。昨年、清水建設は10年後のあるべき姿として「めざすべき企業像」を設定し、長期ビジョン「Smart Vision2010」を打ち出したが、真っ先に掲げたのは「建設事業(コアビジネス)の持続的成長」。今回の決算発表の席でも「10年後、コアビジネスが建設工事請負でなくなっているとは考えられない」と言っていたが、過去10年、ゼネコン以外の企業は大きく変化した。そして今後10年、建設・住宅・不動産業界にはもっと大きな変化が訪れるのではあるまいか。

一覧表にまとめた59社のうち、筆者が本社を訪問して一度でも取材した経験のある企業は40社だった。ホームセンターの業界団体である日本DIY協会は取材したことがあるが、DCMホールディングス、ニトリなどのホームセンター5社、建材・部材メーカーもコマツ、パナソニック、住生活グループ以外はほとんどカバーできていない。今後の課題である。また、一覧表には、建設資材として重要な鉄鋼やガラスなどの素材メーカーや、住宅金融会社や保険会社などは加えておらず、他に抜け落ちている企業があるかもしれない。お気づきの点があれば、ぜひご一報いただければ幸いである。

建設・住宅・不動産関連企業の2010年度連結業績(売上高2000億円以上)         

順位 企業名 連結売上高 連結営業利益  決算月

1 

コマツ

18,431( 28.7)

2,229( 232.6)

11/03 

2 

パナソニック(S)

17,350(  6.3)

730( 110.4)

11/03 

3 

大和ハウス工業

16,901(  5.0)

876( 39.8)

11/03 

4 

積水ハウス

14,883( 10.0)

563( ― )

11/01

5 

三井不動産

14,052(  1.5)

1,200(▲ 0.4)

11/03

6 

鹿島建設

13,256(▲19.0)

172( − )

11/03

7 

清水建設

13,037(▲18.0)

201(▲ 8.8)

11/03

8 

大成建設

12,181(▲15.5)

362(  1.9)

11/03

9 

住生活グループ

12,149( 23.6)

404( 55.5)

11/03

10 

大林組

11,318(▲15.6)

231( − )

11/03

11 

竹中工務店

10,554(▲10.2)

218( 47.9)

10/12

12 

大東建託

10,011(  2.9)

737(  3.7)

11/03

13 

三菱地所

9,884(▲ 2.5)

1,582(  6.2)

11/03

14  

住友林業

7,974(  10.2)

142( 46.1)

11/03

15 

日立建機

7,737(  27.7)

415( 111.0)

11/03

16 

住友不動産

7,447(  3.5)

1,384(  3.3)

11/03

17  

太平洋セメント

7,264(▲ 0.3)

164( 360.0)

11/03

18 

東急不動産

5,520(  3.5)

625( 76.2)

11/03

19 

レオパレス21

4,843(▲21.9)

▲236( ― )

11/03

20 

野村不動産HD

4,809(  10.8)

420(  7.2)

11/03

21 

きんでん

4,785(▲ 3.7)

234(▲11.1)

11/03

22 

関電工

4,624(  2.0)

107( 13.3)

11/03

23 

戸田建設

4,527(▲ 4.7)

60(▲ 6.3)

11/03

24 

長谷工コーポ

4,404(  4.8)

233( 36.3)

11/03

25  

TOTO

4,335(  2.8)

140( 112.7)

11/03

26 

DCMホールディングス

4,223(▲ 0.1)

132( 11.4)

11/02

27 

積水化学(S)

4,186(  5.1)

243( 25.6)

11/03

28 

旭化成(S)

4,092(  5.0)

365( 43.9)

11/03

29 

NIPPO

3,748(▲ 8.2)

152(▲22.3)

11/03

30 

ミサワホーム

3,413(▲ 3.5)

87(▲ 0.0)

11/03

31 

コムシスHD

3,154(  7.6)

117(▲ 6.0)

11/03

32 

ニトリHD

3,142(  9.8)

526( 13.6)

11/02

33  

五洋建設

3,022(▲ 6.9)

97(▲ 9.4)

11/03

34 

YKK(S)

3,019(▲13.6)

▲57( ― )

10/03

35 

三井住友建設

2,986(▲11.2)

49(▲24.8)

11/03

36  

コメリ

2,985(  4.6)

158(  5.3)

11/03

37 

大京

2,953(▲ 7.2)

135( 49.4)

11/03

38 

前田建設工業

2,918(▲11.2)

19(▲28.5)

11/03

39 

三菱電機ビルテクノ

2,882( ― )

UK  

10/03 

40 

協和エクシオ

2,822(  4.1)

123(▲10.7)

11/03

41 

JKホールディングス

2,800(  9.6)

31( 63.5)

11/03

42  

コーナン商事

2,758(▲ 2.2)

166( 20.5)

11/03

43  

三協・立山HD

2,580(  0.2)

76( 58.9)

11/05

44 

西松建設

2,578(▲35.0)

31( ― )

11/03

45 

九電工

2,485( 10.0)

61( 13.7)

11/03

46  

東急建設

2,449(  3.5)

75( 43.6)

11/03

47 

フジタ

2,414(▲ 9.7)

42(▲32.9)

11/03

48  

熊谷組

2,404(▲ 9.8)

40(▲19.2)

11/03

49  

リンナイ

2,394(  5.9)

252( 23.8)

11/03

50 

すてきナイスG

2,392(  7.4)

30( 14.2)

11/03

51 

三和HD

2,372(  2.3)

45(▲18.9)

11/03

52 

NTTファシリティーズ

2,232(▲ 6.4)

51(▲10.9)

10/03

53 

日立ビルシステム

2,226( ― )

UK  

10/03 

54  

東建コーポ

2,216(▲ 6.7)

63(▲34.2)

10/04

55 

ナフコ

2,173(  4.2)

115(  2.6)

11/03

56 

オリックス(S)

2,170(  1.2)

0(▲60.9)

11/03

57 

高砂熱学工業

2,131(  1.9)

52(▲ 9.5)

11/03

58 

一建設

2,097(  4.5)

238( 28.6)

11/03

59  

伊藤忠建材

2,010( ― )

UK 

10/03

注)単位:億円。カッコ内は前期比増減率、%。▲はマイナスまたは欠損。(S)はセグメント情報に基づく数字。
パナソニックの(S)はパナソニック電工+パナホーム、積水化学と旭化成は住宅部門、YKKはサッシなどの建材部門、オリックスは不動産部門。
非上場企業は、竹中工務店、YKK、三菱電機ビルテクノサービス、フジタ、NTTファシリティーズ、日立ビルシステム、伊藤忠建材の7社。