【建設】企業再編で何をめざすのか?―建設・住宅・不動産関連企業の2011年度連結業績まとめ(2012-09-07)

 建設・住宅・不動産関連の企業業績(連結売上高2000億円以上)の2011年度分をまとめたので公表する。トップは前回と同じ建機最大手のコマツ、2位は大和ハウス工業、3位は積水ハウス、4位はセグメントの組み換えで売上規模が縮小したパナソニックのエコソリューションズ社、5位が鹿島建設の順。新しくランクインしたのは、2010年10月に通信工事会社の大明、コミューチュア、東電通が経営統合して誕生した「ミライト・ホールディングス」、セメント大手の「宇部興産」、道路工事会社2位の「前田道路」の3社。今後は、大和ハウス工業が今年12月にフジタを子会社化するほか、安藤建設とハザマが来年4月1日付けで合併して売上3000億円以上の「安藤・間」が誕生する。建設・住宅・不動産業界でも企業の再編・統合がかなり進んできているが、経営環境が目まぐるしく変化するなかで、企業再編で何を目指そうとしているのだろうか。

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過去20年間に企業の再編・統合はかなり進んできたが…

 1年半前に、従来の業界の枠組みではなく横断的に企業動向を把握しようと初めての試みで、建設、住宅、不動産をまとめて業績集計を行った。作業は結構、大変だったが、今回も夏休みの宿題と思って作成し、遅ればせながら公表する。最新の会社四季報もザッとチェックしたので、前回に比べてかなり精度は上がったと思うが、多少の抜けはご容赦願いたい。

 建設・住宅・不動産業界は、他の業界に比べてM&A(合併・買収)が起きにくいと言われてきたが、一覧表を眺めると企業再編がかなり進んできたことを実感する。ざっと再編・統合の歴史を振り返ると、最初に動いたのは建材や住宅部品関連の企業だった。

 まずセメント業界で、1994年に小野田と秩父が合併して秩父小野田、住友と大阪が合併して住友大阪セメントが誕生。98年には秩父小野田と日本セメントが合併して太平洋セメントになったほか、中堅建材メーカーが合併してジャパン建材(現・JKホールディングス)が生まれた。

 2001年にはトステムとINAXが経営統合したのち住生活グループ(現・LIXIL)が11年に発足。03年に三協アルミと立山アルミが経営統合して三協・立山ホールディングスに。今年1月にはパナソニック電工がパナソニックに経営統合された。

 販売・流通系でも、06年にホームセンター3社が経営統合してDCM Japan ホールディングス(現・DCMホールディングス)が設立され、昨年10月には家電量販店のヤマダ電機が住宅メーカーのエス・バイ・エルを子会社化した。

 一方、建設系は、03年に通信工事会社3社が経営統合してコムシスホールディングス、昨年10月にミライト・ホールディングスが発足したが、建材・部品系に比べて再編・統合が遅れていた。不良債権問題に関連して02年に道路最大手のNIPPOが大日本土木を子会社化、03年に三井建設と住友建設が合併したが、ようやく今年になって安藤建設とハザマの合併、大和ハウス工業によるフジタの子会社化という動きが出てきた。また、不動産系でも、今年10月に興和不動産と新日鉄都市開発が合併して新日鉄興和不動産が誕生する。

過去の経営手法のままで新たな成長戦略を描けるのか

 建設・住宅・不動産関連業界において、大手企業は再編・統合で何をめざしているのだろうか?新たな成長に向けて海外戦略の拡大か、縮小する国内市場での囲い込み戦略か、規模拡大による経営の効率化か…。一般的にM&Aの目的は自社で持っていない技術や商品を外から買うことで新市場進出に道を開き、成長を加速することだと言われるが、果たして狙い通りの成長戦略を描けているのだろうか。

 日経新聞の9月4日付の経済教室に掲載されていた石倉洋子慶大教授の「逆風下の企業経営―つながり再構築に全力を」は、日本企業が抱える経営課題をズバリと指摘していた。「日本企業とBOP(ベース・オブ・ピラミッド)市場」「人と仕事」「雇用と教育」―あらゆる分野で“断絶”が生じており、「日本企業につながりを再構築しようとする意識や活動が見られない」と述べている。

 さらに石倉氏はこうも指摘する。
 「日本企業に必要なのは、過去の姿ではなく、『2012年の世界』の現状を熟知するトップが、自社の戦略の実践にスキル、知識、人材がどれだけ必要なのかを見極めて、的確な対策を打ち出すことだ」
 本来、企業経営者にとって最も重要な仕事は、企業戦略の実践に必要な人材を育て的確に配置することだろう。その当たり前のことが日本企業の経営者に欠けているとの指摘が意味するところは重い。

 建設・住宅・不動産業界が、自動車などの他業界と決定的に異なる点は、ものづくりの現場の人材の大半を下請業者や協力業者に依存しているということである。そのことを大手企業の経営者はどれぐらい自覚しているだろうか。いくら素晴らしいシステムキッチンをつくろうが、エネルギー変換効率に優れた太陽光パネルをつくろうが、それを建築物や住宅にきちんと取り付ける職人がいなくなれば、建設・住宅・不動産の産業構造は土台から揺らぐことになる。

 先日、国土交通省の大物OBと久しぶりに懇談したが、最も懸念していたのは、建設技能者の人材不足問題だった。今年7月に国交省が公表した「建設産業の再生と発展のための方策2012」でも深刻化する人材問題に警鐘を鳴らしたが、急速な高齢化と若者離れで、日本の工事現場は危機的な状況に追い込まれつつある。「中国や東南アジアから大量の建設労働者に来てもらわざるを得なくなるだろうが、果たして社会に受け入れられるのか」と心配する。

 日経新聞8月25日付夕刊に掲載された左官職人、挾土(はざど)秀平氏のインタビュー「職人を見捨てるのか」では、こう指摘する。
 「職人になれば金もうけはできないかもしれないが三度の飯は食えると言われた。でも、そんな話は日本で通じない。職人の技は素晴らしいと口では言っていても、現実の社会は手でつくるようなものを認めなくなっている。あと10年もすれば職人は絶滅すると思う」
 挾土氏のように、高い芸術性が認められて仕事が舞い込む職人はほんの一握りで、普通の仕事を普通にこなす職人が生きていけない社会になっている。

 人口減少が急速に進む日本市場と、新しい需要が爆発するBOP市場―どちらの市場も大きく変革しようとしている時に、従来の経営手法のままで企業成長を実現することができるのだろうか。再編・統合を機に、市場や産業構造の変革をリードして新しい価値を提供していくことで需要を創造していくことが必要ではないのか。

 建設・住宅・不動産関連企業の業績一覧表の顔ぶれが、果たして10年後にどうなっているか。私個人は、かなり大幅に変わっているだろうと勝手に予想しているのだが…。

建設・住宅・不動産関連企業の連結業績(売上高2000億円以上)

    売上高 営業利益 決算月
1 コマツ 19,817(  7.5) 2,563(  15.0) 12.03
2 大和ハウス工業 18,487(  9.4 1,149(  31.1) 12.03
3 積水ハウス 15,305(   2.8 708   25.8 12.01
4 パナソニック(S) 15,258(▲ 0.0 589    1.7 12.03
5 鹿島建設 14,577   10.0) 294  70.8 12.03
6 三井不動産 13,381(▲ 4.8 1,260    5.0 12.03
7 清水建設 13,361    2.5 175(▲12.9 12.03
8 大成建設 13,235    8.7 364(  0.5 12.03
9 LIXIL 12,913(   6.3 179(▲55.7 12.03
10 大林組 12,457  10.1 311   34.4 12.03
11 大東建託 10,871(  8.6 819(  11.1 12.03
12 三菱地所 10,130(    2.5) 1,462(▲ 7.6) 12.03
13 竹中工務店 9,766(▲ 7.5 111(▲49.2 11.12
14 住友林業 8,318(   4.3) 191(  34.8) 12.03
15 日立建機 8,171(   5.6) 548(   32.1) 12.03
16 太平洋セメント 7,278(     0.2) 291(   77.6) 12.03
17 住友不動産 6,886(▲ 7.5) 1,474(  6.5) 12.03
18 東急不動産 5,568(▲ 2.6) 500(▲19.9) 12.03
19 長谷工コーポ 5,009( 13.7) 216(▲ 7.3) 12.03
20 戸田建設 4,893(   8.2) ▲79( ―  ) 12.03
21 レオパレス21 4,594(▲ 5.2) 45( ―  ) 12.03
22 きんでん 4,555(▲ 4.8) 192(▲17.8) 12.03
23 TOTO 4,526(  4.4) 187(  34.0) 12.03
24 旭化成(S) 4,520( 10.4) 463( 27.0) 12.03
25 野村不動産HD 4,508(▲ 6.3) 499( 18.7) 12.03
26 積水化学(S) 4,493(  7.3) 310( 27.5) 12.03
27 DCMホールディングス 4,419(    4.6) 197( 49.4) 12.02
28 関電工 4,417(▲ 4.5) 80(▲25.2) 12.03
29 ミサワホーム 3,785(   10.9) 119(   37.3) 12.03
30 NIPPO 3,765(    0.4)  163(    7.0) 12.03
31 ニトリHD 3,310(  5.3) 579( 10.0) 12.02
32 五洋建設 3,280(    8.5) 89(▲ 8.2) 12.03
33 YKKグループ(S) 3,229(   4.7 79(  99.0) 12.03
34 三井住友建設 3,135(    5.0) 46(▲ 5.5) 12.03
35 前田建設工業 3,133(    7.3) 52( 176.3) 12.03
36 コメリ 3,120(  4.5) 202( 27.5) 12.03
37 フジタ 3,108( 28.8) 36(▲13.1) 12.03
38 コベルコ建機 3,071(▲ 1.9) 228(▲13.1) 12.03
39 大京 2,984(    1.0) 217( 60.2) 12.03
40 コムシスHD 2,958(▲ 6.2) 125(    6.9) 12.03
41 JKホールディングス 2,909(  3.9) 45( 43.7) 12.03
42 三菱電機ビルテクノ 2,887(    1.6)   12.03
43 コーナン商事 2,819(    2.2) 186( 12.4) 12.03
44 協和エクシオ 2,731(▲ 3.2) 89(▲28.0) 12.03
45 三協・立山HD 2,725(  4.4) 103( 31.5) 12.05
46 西松建設 2,639(    2.4) 26(▲16.5) 12.03
47 伊藤忠建材 2,587( ―    12.03
48 熊谷組 2,575(   7.1) 24(▲39.2) 12.03
49 三和HD 2,482(  4.6) 88(   94.1) 12.03
50 リンナイ 2,466(  3.0) 266(    5.5) 12.03
51 九電工 2,466(▲ 0.8) 18(▲70.6) 12.03
52 すてきナイスG 2,416(  1.0) 33(   8.6) 12.03
53 ミライト・HD 2,360(  26.8) 52(   28.7) 12.03
54 NTTファシリティーズ 2,322(▲ 6.1) 38(▲33.9) 12.03
55 東急建設 2,278(▲ 7.0) 15(     0.2) 12.03
56 オリックス(S) 2,226(  2.3) 13(1300.0) 12.03
57 ナフコ 2,203(  1.4) 117(   2.0) 12.03
58 一建設 2,188(  4.3) 203(▲14.9) 12.01
59 日立ビルシステム 2,177(▲ 1.7)   12.03
60 東建コーポ 2,172(    1.4) 50(▲44.6) 12.04
61 住友大阪セメント 2,170(    7.6) 81(  20.7) 12.03
62 高砂熱学工業 2,154(  1.1) 52(    0.2) 12.03
63 宇部興産(S) 2,091(    4.3) 86(  7.1) 12.03
64 前田道路 2,049(  12.7) 145( 47.3) 12.03

注)単位:億円。カッコ内は前期比増減率%、▲は減または欠損。(S)はセグメント情報。
・パナソニックの(S)は、パナソニックエコソリューションズ。積水化学と旭化成は住宅部門。
・YKKグループは、サッシなどの建材部門。オリックスは不動産部門。宇部興産は建材部門
・コベルコ建機は神戸製鋼所のセグメント情報。
・未上場は竹中工務店、YKK、三菱電機ビルテクノサービス、フジタ、NTTファシリティーズ、日立ビルシステム、伊藤忠建材