2019年の活動を振り返ってみたい。ここ数年、体調管理を怠ってきたこともあって、昨年後半は思うように仕事が捗らず、周囲の方々にご迷惑をおかけした。それを踏まえて、2020年の目標は「健康第一」。しっかり体調管理をしながら乗り切っていきたい。記者としては記録に残しておきたいテーマはいろいろとあるが、日本でのDX(デジタルトランスフォーメーション)は本当に実現するのか、ブームで終わるのか、正直言って分からない。悲観的に書いて足を引っ張ってもマズいし、楽観的に持ち上げ過ぎても良くないだろうし、この先しばらくは悩ましい状況が続くだろうと思っている。

2019年の主なコンテンツ(署名入り記事)をまとめました。

建設キャリアアップシステムの行方

 これからの日本社会にとって人口減少は相当に重たい問題だ。台風や大雨などの災害に対応するインフラ整備も重要だが、その担い手である建設技能労働者をどう確保していくのか。そうした危機感から、昨年4月から導入が始まった「建設キャリアアップシステム(CCUS)」について、東洋経済オンラインで2回に分けて記事を書いた。

 日経新聞が運用開始10日目に「CCUSに登録しても労働者にメリットがない」という内容の記事を掲載。それを見て最初から足を引っ張っても良くないと思い、現状の課題を指摘しつつ、CCUS活用による労働者の待遇改善への期待を込めて記事をまとめた。

 もうすぐ1年が経過するが、CCUSの普及はあまり進んでいない。結果的に日経新聞が書いたとおりになっているのだが、年明けの新年懇談会で会った専門工事業者のトップが「一人親方問題を放置したままじゃ無理だよ」と、技能労働者の待遇改善が進まない状況に苛立っていた。

 私も、一人親方問題はこれまで何度も指摘してきたが、ほとんど手が付けられていないようだ。コストの安い一人親方を使えば、元請け工事業者は楽して儲けられるのだから当然だろう。つまり労働者がCCUSに登録しない原因をつくっているのは元請け工事業者であり、CCUSそのものが悪いわけではない。

マイナンバーカードがダメなら生体認証?

 マイナンバーカードにしても構図は同じだろう。カードを有効に利用するための仕組みができていないだけの話で、問題なのはカードではなく、行政手続きに関係する役所や関係業界の方だ。根本的な原因に手を付けないまま「利用者がカードを持とうとしないのだから仕方がない」と、いつまで言い続けるのだろうか。

 DX関連の取り組みでは、こうした話がいくらでも出てくる。その辺の原因について聞こうとすると、取材を断られることも多い。日本社会のいろいろな事情が絡み合っているので、断片的な取材で記事するのも躊躇してしまう。確かに簡単な問題ではないのだが、急激に人口減少が進むなかで、様々な住民サービスをどのように維持していくのだろうか。

 将来的にはAI(人工知能)やIoTを活用するにしても本人確認は不可欠である。マイナンバーカードが嫌だと言うなら、次はインドのように生体認証を登録するという話になるかもしれない。そうなった時に、私なら次のように考えるだろう。

 そんな大事なものを預けるのに、統計や記録データを簡単に改ざん・破棄したり、平気でウソをついたりするような政府で大丈夫なのだろうか。要は情報やデータを正しく取り扱うことができない政府が、日本のDX推進の最大のネックということである。

【2019年の掲載した署名記事一覧】

「塩漬け億ション」ゴリ押しの勝算―事業を主導した道路舗装大手NIPPOは強気一辺倒。地裁に続き高裁でも敗訴。(2019-01-20:FACTA2月号)

「平成ニッポンを元気にした&停滞させた30人の経営者」(週刊ポスト)のアンケート結果から(上、下)(2019-02-15:未来計画新聞)

不動産業界が「正直不動産にならない」宣言(2019-03-20:FACTA4月号)

内閣府、PPP/PFI導入促進へ簡易化マニュアル作成(2019-03-26:インフラビジネスJapan)

建設現場の外国人「処遇改善」で日本人と大差―建設キャリアアップシステムで何が変わるか(2019-04-15:東洋経済オンライン)

施工品質が「人」によって左右される大問題―建設現場の「技術の見える化」が必要な理由(2019-04-28:東洋経済オンライン)

外国人投資家に人気のある不動産は?―日本で外国人を意識した住居は、虎ノ門ヒルズレジデンスくらいで少ない(2019-05-01:ダイヤモンド不動産研究所)

「空き家数」の増加にブレーキがかかった不可解―5年前比で空き家率は0.1%増にとどまった(2019-05-10:東洋経済オンライン)

マンガ『正直不動産』原案・夏原武氏にインタビュー!―作品の誕生秘話や、日本の不動産業界の問題点を聞く!(2019-05-20:ダイヤモンド不動産研究所)

映画「主戦場」とジャーナリズム(2019-06-20:緑の党グリーンボイス6月号)

「大和ハウスのドン」の見事な引き際―不祥事を機にCEOを降りる樋口会長に憂いはない。継承者を見極め、後事を託したから。(2019-07-20:FACTA8月号=FREE)

「VR内見」VR(仮想現実)による物件の内見で物件選びに変化も(2019-08-21:不動産ジャパン「話題の不動産キーワード」)

浜松市下水道コンセッション1年(上)20年間で事業費86億円削減へ(2019-08-28:インフラビジネスJapan)

〇浜松市下水道コンセッション1年(下)地元雇用率を上げていく(2019-08-29:インフラビジネスJapan)

「EGENT」のような不動産売買のエージェント検索サービスは日本でも普及するのか(2019-09-03:ダイヤモンド不動産研究所)

Society5.0時代の不動産・住宅産業を考える(2019-09-12:未来計画新聞)

ソフトバンクが10月4日に日本不動産ジャーナリスト会議設立30周年記念イベントで講演(2019-09-13:未来計画新聞)

オープン型の物流情報プラットフォームは実現するか―Hacobuが三井不動産と資本業務提携(2019-09-24:未来計画新聞)

移民問題と不動産業の未来(2019-10-04:日本不動産ジャーナリスト会議創立30周年記念誌)

Society5.0は実現できるのか?(2019-10-04:日本不動産ジャーナリスト会議創立30周年記念誌)

最高裁で敗訴でもNIPPO「都にがぶり寄り」―強引な億ション建設をめぐり、敗訴が確定したのに、またもや無理筋裁判を始めたのはなぜか(2019-10-20:FACTA11月号)

埼玉「芝川」氾濫も大半の住宅が難を逃れた背景―台風19号の増水で見沼たんぼが果たした役割(2019-10-31:東洋経済オンライン)

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