日本不動産ジャーナリスト会議(代表幹事・阿部和義氏)が2019年9月に創立30周年の迎えたのを記念して発刊した記念誌に掲載した記事を転載する。24人の会員が寄稿してくれた原稿の編集作業を昨年8月から9月に一人で行っていたので、バタバタと忙しかった。字数は、読者が読みやすく書き手の負担も少ないようにと800字。書き足りないとの声もあったが、それぞれの会員の問題意識が分かる記念誌となった。

移民問題と不動産業の未来(千葉利宏)

 戦後74年、日本の国土が武力攻撃されることなく、平和と治安が維持されてきたからこそ、誰もが安心して住宅や土地などの不動産を取引することができた。不動産業の発展にとって、日本の平和と治安をどう維持していくかが最も重要なテーマであるはずだ。

 日本の総人口は、2018年10月1日現在の推計で1億2644万人だが、2030年代半ばから人口減少が加速し、80年後の2100年には中位推計で6000万人を割り込むと予測されている。このまま少子化に歯止めがかからなければ、年平均100万人弱という猛烈なスピードで「日本人」が減っていくことになる。女性や高齢者の雇用拡大で維持してきた労働力人口が急激に減っていくのも時間の問題だ。

 すでに顕在化し始めた人手不足に対応して、2019年4月から外国人労働者の受け入れが始まった。いずれは曖昧にしてきた移民問題にも真剣に向き合わざるを得なくなるだろう。日本には1億人以上の人口を支えてきたインフラと住宅・ビルなどが残っており、水・食料とエネルギーが確保できれば大量の移民受け入れも可能だろう。しかも日本の土地や企業は、外国人でも自由に売買できるし、参政権を除けば居住の自由などの基本的人権も認められている。一部の地方自治体では住民投票権を認めるところも出ている。

 在留外国人数は18年6月末で263万人。今のところ外国人労働者受け入れには上限があるが、「日本人」が急激に減り始めれば、なし崩しで受け入れ拡大が進む可能性がある。彼らは日本人が手放すであろう大量の不動産を買って独自のコミュニティづくりを進めることも十分に考えられる。

 移民を受け入れなければ、人口減少に伴って不動産需要の縮小は避けられず、老朽インフラや空き家・空きビルの後始末が待っている。受け入れたとしても、国土管理とコミュニティ形成の観点から不動産業は面倒な役割を担わなくてはなるまい。さて不動産業はどちらの未来を選択することになるのか。

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