【編集後記】未来計画新聞のこれから―コロナ禍の一年を振り返る(2021-03-16)

 2011年の3月11日は、東日本大震災が発生して10年目の節目であった。同時に1年前の3月11日にはWHO(世界保健機関)が新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)を宣言した日でもある。この1年間、自宅に引きこもったままで、取材などで出歩く機会も激減した。それが外部への情報発信が減った言い訳にするつもりはないが、この1年で少なからず心境の変化があった。コロナ禍の1年を振り返りながら、今年で創刊15周年となる「未来計画新聞」について考えてみた。

■2020年のコンテンツ(署名入り記事)一覧を掲載しました。

生活環境に伴う心境の変化

 心境変化の理由は、誰もが経験する出来事である。一つは、2020年3月末で小学校の教員だった妻が定年退職を迎えて一緒に過ごす時間が増えたことだ。退職後も週2日ほど小学校に行って、中国人などの生徒に日本語を教えたり、現役教員のサポートをしたりしているが、自宅に居る時間が増えて、何かと私の世話を焼いてくれるようになった。

 新聞社を退社して20年間、マイペースで自宅を拠点に仕事をしてきた私にとっては、気が散ったり、ペースを乱されたりすることもしばしば。妻も気を使ってくれているのだが、コロナ禍でテレワークが一気に普及したものの、自宅では仕事が捗らないといった声が聞かれるのも良く分かる。

 もう一つの理由は、私たち夫婦の親が年老いてきて、可能な限り一緒に過ごしたいという気持ちが強くなったことだ。私の父は2019年1月に亡くなったが、母が元気に札幌で暮らしている。敷地内に妹夫婦が住んでいるので安心しているが、足腰の衰えが顕著になってきた。妻の両親も健在で長野で暮らしており、毎日、決まった時間に電話して安否確認するのが日課になっている。

 昨年はコロナ禍の影響もあって札幌に帰省できたのは1度だけ。長野にも妻だけで行ってもらっていたが、いよいよ畑仕事が困難になってきたので、今年春からは畑を耕して作付けする作業は私が引き継ごうと思っている。そんなわけで、当面の課題は、2つの実家のネット環境をどう整えるかである。

知識や経験を伝えていくために

 記者の仕事は、ニュースを追いかけて記事にすることだ。これからもニュースを追い続けるつもりだが、取材を通じて得た知識や経験を書き残しておきたいという気持ちが一段と強くなった。果たして私の知識や経験がどれぐらい役に立つのかは分からないが、私自身は新聞社時代に何かと批判が多い「記者クラブ」に在籍して、他紙を含めた先輩記者にいろいろと教えてもらったことを今でも感謝している。

 新聞社を退社したあとも、日本不動産ジャーナリスト会議(REJA)とIT記者会に参加させてもらって、記者仲間から多くのことを学ぶことができた。それが、20年もの間、フリーランスで活動できた最大の理由であると思っている。

 IT記者会は、佃均代表理事が広く声をかけて若手メンバーも多く参加しているが、今年で設立32年目となるREJAは残念ながら若手の会員が少ないのが大きな課題だ。毎月1回のペースでゲストを招いて研修会を開催しているが、日常業務が忙し過ぎるのか、若手記者の参加率があまり良くない。

 コロナ禍前のREJAの活動は、会議室やスクリーンなどのレンタル代、コーヒー代、ゲストへの謝礼、資料の印刷コピー代などの経費を年会費や参加費で賄ってきた。会費や会議室スペースの制約もあって会員の参加資格も制限してきた。しかし、オンラインミーティングが利用できるようになって、運営経費が激減し、参加人数の心配もする必要がなくなった。個人的には、これからは若い記者にもどんどん参加してもらいたいと思いっている。

 その一方で、オンラインミーティングへの移行で、Zoomなどのビデオ会議システムの使い方に悪戦苦闘する高齢のREJA会員も多かった。日頃からパソコンで原稿を書いたり、メールしたりしているので、一度、使い方が分かれば問題ないのだが、遠隔で使い方を教えるのはなかなか難しい。ビデオ会議に移行する時に、何人ものREJA会員と個別にZoomを繋いで練習した。

記事をアーカイブ化する意味

 記者が記事を書くうえで、過去の出来事を知らなければ、今、起きている事象を正しく理解することもできないだろう。長年、業界をウロチョロしてきた記者としては、できるだけ多くの出来事を書いてアーカイブ化しておけば、ネット検索などで多少はお役に立てるのではないかという思いがある。

 REJA会員で、明海大学教授だった故・長谷川徳之輔氏に晩年、お会いした時、同氏が所蔵していた膨大な紙の資料がどこも引き取り手がないために、全て廃棄処分にするという話を聞いた。もし、それらの資料をデジタル化できれば、広く利用できたかもしれないが、デジタル化する手間も大変だし、サーバーをレンタルする費用も負担になる。

 未来計画新聞も、2006年7月に開設して今年で15周年を迎える。この間に、新聞などでは書けなかったエピソードや昔の出来事などを記事にして公開してきた。故・橋本龍太郎首相に関する記事は、証券アナリストの紺谷典子氏が2008年に出版した本「平成経済20年史」(幻冬舎新書)に引用していただいた。

 たまたま本を読んだ方から「紺谷さんの本に『未来計画新聞』が出ていたよ」と教えてくれたので知ることができたわけだが、出典を明記することなく未来計画新聞のコンテンツは自由に利用していただいて構わないと思っている。いずれ「未来計画新聞」も閉鎖せざるを得ない時が来るだろう。その時に大半のコンテンツは消え去ってしまうだろうが、誰かに再利用してもらえれば、何らかの記録として残っていくかもしれないと思うからだ。

ビデオ会議システムの恩恵

 2020年は「未来計画新聞」を通じての活動報告をサボってしまった。以前からテレワーク環境で仕事をしてきたので、コロナ禍になってもいつも通りに仕事はしていたが、ビデオ会議システムなど新しいツールの利用環境を整えるなどで手間がかかり、何かとバタバタしていた。

 良くテレワークでは対面のコミュニケーションが取りにくいのがデメリットだと言われるが、それは使い方次第ではないだろうか。私にとってはビデオ会議の利用が当たり前になったことで、以前から付き合いがあったものの、最近はあまり話をする機会がなかった人や遠くに離れている人とビデオ会議を通じてじっくりと話す機会ができたことは大きな収穫だった。

 インプレスの編集主幹である田口潤氏は、日経BPの日経コンピューター編集長時代から交流があり、IT記者会のメンバーでもあるが、あまりゆっくりと話をする機会がなかった。昨年の夏頃に田口氏のフェイスブックの書き込みを見て、ビデオ会議での面談をお願いした。その時に改めてスマートシティの記事を書こうと思い立ち、昨年10月に3回に分けて東洋経済オンラインに記事を掲載した。

 不動産業界では有名な経済学者・統計学者で、日本大学教授・東京大学特任教授の清水千弘氏とも、以前から面識はあったが、じっくりを話を聞く機会がなかった。昨年9月にダイヤモンド不動産研究所からの依頼でビデオ会議を使ってインタビューすることができた。この時に私のことも多少は知ってくれたのかもしれない。

 そのインタビューがきっかけで、清水先生の仕事を昨年10月からお手伝いすることになった。AI(人工知能)に関する講義などを一般読者にも分かるように原稿にまとめているのだが、AIを基礎から学ぶことができて学生時代に戻ったように新鮮である。そのおかげで、早稲田大学データ科学センター長の松嶋敏泰教授やNeoX社の何書勉代表のインタビュー記事をまとめることができた。

未来計画新聞はオウンドメディアか?

 2020年1月から21年2月までに執筆した署名記事は下記に一覧でまとめた。このほかに、住宅リフォーム推進協議会が事業者向けに開催している長寿命化リフォームセミナーのテキスト用に、キッチンワークス(札幌市)とホームテック(東京・多摩市)をビデオ会議で取材する機会があった。中小事業者でもインターネットを使って新しい接客・集客スタイルづくりに取り組んでいることを知って興味深かった。

 最近では、企業が積極的にオウンドメディアを立ち上げて、直接、ユーザーと繋がる取り組みを進めている。「未来計画新聞」も、読者と記者が直接つながるためのオウンドメディアであったのかもしれないが、本人に自覚がなかったので全く活用できていなかった。今後も気が向いた時に情報を更新するぐらいになりそうな気もするが、アーカイブとして利用できるようにコンテンツの充実を図ってきたいと考えている。引き続き、ご支援をお願いします。


【2020年のコンテンツ】

書評「日本はすでに侵略されている」(平野秀樹・著、新潮新書)(2020-01-20:季刊しまNo.260)

「デジタル技術」の活用で期待増の「都市開発事業」(2020-02-01:「リベラルタイム」3月号)

混迷深める西尾市PFI事業見直し(2020-02-00:インフラビジネスJapan)

不動産の「来店不要取引」がいま俄然注目の訳―普及局面に加え、新型コロナでも注目されるか(2020-02-24:東洋経済オンライン)

西尾市に支払いを命令―名古屋地裁がPFI訴訟で判決2020-04-00:インフラビジネスJapan)

住宅リースバックがにわかに活気づいている訳―自宅をいったん売却して賃貸する資産活用法(2020-06-05:東洋経済オンライン)

「利便性重視」からの転換で変わる?「不動産価格」(2020-07-01:「リベラルタイム」8月号)

企業がコロナ対策に奔走した日の出来事―新型コロナウイルスがREJA活動にもたらした変化(1)(2020-07-26:REJAニュース)

不動産・住宅業界のオンライン化が遅れた訳―新型コロナウイルスがREJA活動にもたらした変化(2)(2020-07-28:REJAニュース)

電子メール、ブログ、そしてWEB会議―新型コロナウイルスがREJA活動にもたらした変化(3)(2020-08-02:REJAニュース)

〇テクノロジー×イノベーションによる業界変革へ―GAテクノロジーズ、中国不動産サイト「神居秒算」事業を買収(2020-08-01:経済産業新報)

安易な不動産暴落論に注意!―コロナ禍での住宅市況・価格を、清水千弘教授に聞く<前編>(2020-09-26:ダイヤモンド不動産研究所)

コロナ禍でもオフィス需要はなくならない理由とは? 清水千弘教授に聞く<後編>(2020-09-27:ダイヤモンド不動産研究所)

建設職人324万人「就労管理構想」の高すぎる壁―行政主導で開発した大規模システムで混乱(2020-09-30:東洋経済オンライン)

日本が「都市のIT化」で世界に遅れた苦い事情―「スマートシティ」が日本で実現しなかった訳(2020-10-15:東洋経済オンライン)

GAFA対抗「日本型スマートシティ」に勝算あるか―人口増加を見込む「世界の都市」へ売り込む作戦(2020-10-17:東洋経済オンライン)

脱ハンコの先「都市のデジタル化」で来る大変化―日本で進む「スマートシティ」実現への取り組み(2020-10-19:東洋経済オンライン)

〇講演「ウェブミーティングの利用方法」(2020-11-03:広報ソリューション懇談会)

コロナ禍の「自宅DIY」に立ちはだかる意外な壁―求められる「住宅履歴」の適切なメンテナンス(2021-01-11:東洋経済オンライン)

「水害ハザードマップ」に注目―重要度が増す「防災」意識(2021-01-12:週刊東洋経済1/16号)

早稲田大学がデータ科学センターを起点に取り組む「全学部学生が学べるデータサイエンス」―早稲田大学 基幹理工学部 教授/データ科学センター長 松嶋敏泰氏(2021-01-22:インプレス「IT Leaders」)

〇不動産市場にAIを持ち込んだNeoX社の何書勉代表に聞く(2021-02-01:経済産業新報)