アベノミクス効果で住宅・不動産投資が活発化してきた。果たして資産デフレの元凶だった地価が上昇に転じるか。本格的な不動産市況の回復に向けて、不動産市場の近代化・国際化を進め、外国からの投資を積極的に呼び込むことが必要だ。

 「日本の地価が下落している原因は単に資産デフレだけでなく、都市の国際競争力の低下を意味しているのではないか」―。昨年亡くなった森ビルの森稔会長が10年前、六本木ヒルズ開業を前にそう語った。1991年のバブル崩壊から日本の土地資産額は1000兆円目減りして1455兆円までに落ち込んだが、金融機関の不良債権処理もほぼ完了し、民間による都市再開発が本格的に動き出していた時期だ。

 それから10年、東京では丸の内、大手町、日本橋地区の再開発が進み、汐留シオサイト、東京ミッドタウンなどの大規模再開発も相次いで完成。豊洲などの超高層マンション群や東京スカイツリーなど大型商業施設も増え続けてきた。2008年のリーマンショック前のミニバブルで土地資産額は増加に転じた時期もあったが、11年末で1156兆円と縮小傾向に歯止めがかかっていない。不動産投資の活性化に金融緩和は必要だが、それだけで実需を顕在化させるのは難しいだろう。新規の参加プレイヤーを増やして市場全体の活性化を図ることが不可欠だ。急速に高齢化・人口減少が進む中で、外国とくにアジアからの投資を積極的に呼び込む以外に方法はないはずである。

 国際間ビジネスで、いまやインターネットによる電子商取引(EDI)を行えない分野は皆無だろう。ところが日本の不動産市場では、いまだに不動産IDもEDI標準すら整備されていない。不動産に関する情報を交換するための標準的電子コードもフォーマットもつくられていないので、基本的に紙ベースで情報をやりとりしている。当然、米国などを中心に進められている不動産EDIの国際標準化からも蚊帳の外だ。

不動産情報の交換標準と電子契約の解禁で、新規参入がしやすい環境に

 宅地建物取引業法では、不動産の電子契約も禁止している。国土交通省が5年前に解禁に向けて法改正を検討したが、不動産業界からの抵抗で見送りになった経緯がある。一方で安全保障の面から重要な離島や水源地などの土地の取引を国がきちんと把握できる仕組みも整えられていないので、外国人の土地買収に対する不安ばかりが先行する。

 学識経験者が中心となって一般社団法人日米不動産協力機構(JARECO)が設立され、今月末から本格的な活動を開始する。アジアを含めた世界60か国と不動産情報の交換を行っている米不動産業界団体「全米リアルター協会(NAR)」と提携して日本の不動産市場の国際化を促進支援する。外国から投資しやすい環境をいかに整えるか。日本の不動産業界も「都市を国際化する」という意味を改めて考えるべきである。

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