【不動産】不動産仲介の両手取引は禁止すべきではないか?―中古住宅市場の活性化を考える(中)(2009-07-07)

 両手取引の最大の問題は、売主と専任媒介契約を結んだ不動産仲介業者が両手取引ができる買主を「選別」することである。消費者が、買主の立場で物件選びをしてくれる不動産業者をサポートにつけて物件を購入しようとしても、「すでに先約がある」といった適当な理由をつけて断る仲介業者は後を絶たない。株式市場のようなオープンな市場でないとは言え、どう考えても”アンフェア”である。さらに両手取引では、消費者は仲介業者を選ぶことができず、仲介手数料も業者の言い値で応じるしかない。結果的に競争原理が働かず、仲介手数料はサービス内容に関係なく、上限の3%+6万円に張り付いたままだ。不動産流通市場をオープンでフェアな市場にするには、やはり両手取引を禁止する以外に方法はない。

宅地の購入で両手取引を回避しようとしたら…

 さて、前回に続いて自分の体験談を申し訳ないが、両手取引を避けようとしてできなかったエピソードを紹介する。

 90年に中古住宅を購入して9年間住んだところで「そろそろ建替えよう」という話になった。本来なら、苦労して住み続けてきた土地に、無理せずに建て替えれば良かったのだが、子どもが進学する予定のX中学が当時は荒れていることが知られていた。親心として「できれば隣の学区のY中学校に移れたらいいのにね」と女房と話をしていた。

 そんな時に、下の娘が通う保育園の近くの空き地に大きく「売地」と書かれた看板が立てられた。ほかには不動産仲介業者B社の名前と電話番号が書かれているだけ。女房もすぐに気が付いて、「あの土地、学区もY中学だし、いいよね」という話になった。バブル崩壊して地価は下落局面にあったので、10年前なら絶対に手が出なかったが、「ひょっとしたら、今なら買えるかも…」と思ってしまったのである。

 「もしもし、売地の看板を見て電話したのですが、売値はいくらですか?」―早速、看板に書かれていたB社に電話した。価格を聞くと、まだ少々高いとは思ったが、何とか買えそうな価格だった。そこで、前回の失敗を教訓に「売地を購入したいと思っているのですが、こちらも仲介業者を立てますので、よろしくお願いします」と言うと、B社からは予想していなかった答えが返ってきた。

交渉の打ち切りをチラ付かせて両手取引を要求

 「ああ、そうですか。こちらにも仲介手数料を払った上で、別の仲介業者を依頼するのなら、構いませんよ」
 「えっ、どういう意味ですか?」と、理解できずに聞き返した。
 「うちも、仲介手数料はいただきますということですよ」
 「売主側の仲介業者と買主側の仲介業者の間で行う取引も認められているじゃないですか?」と反論すると、ボソッとこんな言葉を吐いた。
 「あの土地は、他からも買いたいというお客さんが来ていて、話が進んでいるんですよねえ〜」

 なぜ、両手取引を禁止するべきなのか―。もう、お判りだろう。それは、両手取引が認められている限り、消費者側が自分の仲介業者を立てて、片手取引にしようとしても、人気のある物件であればあるほど交渉が不利になってしまい、結局は買主側の仲介業者の言いなりにならざるを得なくなるからである。仲介手数料も、当然のように上限の3%+6万円を要求され、全く交渉の余地はなかった。

購入希望者自ら、物件調査を行うものの…

 B社との取引では、私自身も可能な限り物件の調査に動き回った。売地の造成に関わったのが、市の区画整理事務所であると近隣の方に聞き、事務所を訪ねて、その土地の履歴を教えてもらった。また、地盤の状況を知りたければ、過去にボーリング調査の結果は、市の建築指導課に行けば見せてもらえることを聞き、市役所にも行った。

 ちなみに10年前は、建築確認申請の民間委託が始まる前で、建築指導課は建築関係の人たちで混みあっていた。「ボーリングデータを見たいのですが…」と依頼すると、ぼんと地図台帳をカウンターに置いて「必要な箇所を言って…」と、かなり横柄な対応。売地の周辺3か所の地点を示すと、調査票を出してくれたが、「コピーはできないから」と言われ、その場でノートに細かな数字をせっせと書き写した。それを専門家に見せて評価してもらった。

 消費者としては、やれる限りの労力と知恵を出したつもりだった。とくに問題はないだろうと判断し、購入を決断。いよいよ契約というところで、思わぬ落とし穴が待っていた。それは契約する日の午前中に行われた重要事項説明書の説明のときであった。

契約当日の重要事項説明まで仲介業者が隠していたこと

 「千葉さん、ここは文化財保護地域に指定されていますから、住宅を建設する時には、市の教育委員会の許可が必要になります。回りにも住宅が建っていますから、問題ないとは思いますが…」

 思わず、私も、女房も声を失った。聞くと、売地は縄文中期の遺跡群の一部に引っかかっているという。確かに周辺には住宅は数多く建てられてはいる。しかし、土地を購入したあとの建築計画も進んでいた。許可が必要といっても、今後のスケジュールはどうなるのか?その場は冷静に考えて建築計画に大きな影響はないと判断し契約はしたが、仲介業者の何とも不誠実な対応に腹が立った。

 重要事項説明書には「都市ガス可」とも書かれていたが、建築工事を始めてから都市ガスの本管が来ている場所は10メートル以上も離れていることが判った。結局は売地3区画の購入者が費用を出し合って、ガス本管を敷地の近くまで引っ張ることにしたが、これも何とも納得がいかない説明だった。

中古住宅市場を活性化する流通システムの確立を!

 消費者が良さそうな物件を見かけたら、取扱業者に電話で問い合わせたりするのは当たり前の行為だろう。ところが、一度、消費者が問い合わせただけで、仲介業者は両手取引に持ち込もうと、あの手この手を使ってくる。10年前と違って、消費者がインターネットを通じて物件を調べるのが当たり前の現在では、なおさら問題ではないだろうか。

 ある不動産流通団体の事務局幹部に電話をして、この問題について質問してみた。
 「今では、消費者は購入したい物件をインターネットで検索して問い合わせてきますよね。その後の契約交渉で、買主側がエージェントを立てることは可能ですか?」
 「いやあ〜、それは辛いですよねえ。勘弁してほしいと言うんじゃないですか…」
 はっきり「出来ない」とは答えなかったが、消費者がインターネットで問い合わせただけで、やはり両手取引にしてしまいたいようである。

 相変わらず中立的でない仲介業者に両手取引を任せざるを得ない現状から、日本でも自己防衛的にインスペクション(建物診断)サービスを依頼する動きも広がってきている。しかし、上限に張り付いたままの仲介手数料にインスペクション手数料を上乗せするのは、どう考えても割高である。両手取引が禁止されれば、インスペクション込みでも割安な手数料でサービスを提供する仲介業者が登場してくるだろう。中古住宅市場を活性化するためには、それに合った流通システムの確立が不可欠である。

つづく