【コラム】停滞感が強まった日本―2020年は「けじめを付ける」年に(2020-01-30)

 2020年が明けて早くも1か月近くが過ぎてしまったが、改めて2019年を振り返ってみる。第二次安倍政権が2012年12月に発足して7年が経過したが、2019年は日本社会の「停滞感」が一段と強まった。政権を維持するために不都合な問題は全て無視すると決めているのだろう。年明けに新年賀詞交換会に出て業界関係者と会ったときに「正直言って飽きた」という言葉を何人かから聞いた。松下幸之助氏の言葉に「水の流れも澱めば腐る」とある。このところの日本社会の停滞ぶりを見ていると、2020年は「けじめを付ける」年にせねばなるまい。

日本経済は本当に強くなっているのか?

 「おいおい、日本は本当に大丈夫か?」―取材していて、そう感じたことは今年だけで1度や2度ではない。私自身がそう思うだけでなく、取材相手からも「このままで日本は大丈夫なんですかね?」との声が聞かれるのだ。日本社会が抱えている課題や問題点は明らかであり、それを少しでも改善・解決しようと取り組んでいる企業や経済人は少なくない。しかし、様々な障害や抵抗があって、思うように成果が出ていない。

 記者も「日本人」として前向きに「明るい未来」を想像しながら記事を書きたいのは同じだ。しかし、なかなか「希望」が見えず、手詰まり感が漂う。しばらく前から取材先で「アベノミクス」というワードを聞くこともなくなり、異常な金融緩和が当たり前の状態になっている。企業の国際競争力確保のためとの大義名分で法人税も引き下げれた。その一方で企業への補助金やら税制優遇やらは従来通りに要望して認められている。それで、果たして日本企業の競争力は高まったのだろうか。

 自動車担当記者だった1990年代半ばに、日産自動車を取材していて、正直、企業再生は無理だろうと思っていた。当時、社長に就任した塙義一氏(2015年死去)も自力での再生を諦め、仏ルノーと提携し、カルロス・ゴーン氏を社長に迎えた。この塙さんの決断が日産自動車を救ったと私は考えている。問題はゴーン氏の次のリーダーが育たなかったことだ。やはりリーダーが優れていなければ、企業を正しい方向へと導き、顧客、取引先、従業員、そして株主を幸せにすることはできないだろう。

リーダーを育てることの重要性

 民間企業は再生の見込みがなければ、外資に身売りしたり、最悪の場合潰せばよいが、国は潰すわけにはいかない。国民が安心して暮らしていける社会を維持していくためにも、優秀なリーダーを育てて次世代へ引き継いでいく必要がある。さすがに米国大統領に日本国のかじ取りを任せるわけにはいかないわけで、企業と同様に国や地方自治体でも、リーダーに求められるのは、いかに次の優秀なリーダーを育るかである。

 あまり政治の世界に首を突っ込むつもりはないが、「安倍首相の後を任せられるリーダーがいない」という声をよく聞く。加えて「野党には任せられない」という声も多い。要は次のリーダーが育っていないということだろう。安倍首相を見ていると、本気で次のリーダーを育てているようには見えない。野党も民主党政権時代の問題点を分析して次のリーダーを育てようとしているようには思えない。

 とは言え、「育っていないから、次に任せられない」というのは最悪の選択肢だろう。世代交代のない社会は、衰退の道を辿るだけだ。大変でも、国民一人ひとりが自分たちで「リーダーを育てる」という気持ちで支えていくしかない。リーダー候補もその気持ちに応えて、自ら成長していく人でなくてはならない。

 経済記者から見て、最近は国と企業の違いが分からない「日本人」が増えているように思えてならない。いくら主義・主張が違うからと言って、「日本人」を「日本国」から追い出すことはできないわけで、民間企業のように嫌なら会社を辞めれば済む話ではない。企業では、投資家に対する株主還元をいかに高めるかが求められ、モノ言う投資家が企業への圧力を強めている。国や自治体で、自分の選挙支持者だけに利益還元を行うような政治が行われれば、金権政治が横行し、社会格差の拡大を招くだけだろう。

2019年の主な出来事を振り返る

 2019年の出来事を整理しておく。デジタル時代に非効率だと思っているのだが、いまだに新聞(朝日新聞、日経新聞)をスクラップにして保存している。その時に印象に残った記事を切り取っているだけなので、情報を体系的に整理しているわけではないが、あとからパラパラとめくって見るときに便利だからだ。

 2019年のスクラップを見ると、やはり7月21日の参議院選挙の前後から、気になるニュースが増えた。私のスクラップから気になる記事を並べておく。

【05-22】金融庁の審議会報告書案「高齢社会に高齢社会における資産形成・管理」公表。いわゆる「2000万円不足問題」が表面化→【06-11】麻生大臣が報告書の受け取り拒否。
【07-01】政府、韓国向け輸出の規制強化を発表。
【07-21】参院議員選挙―非改選を含めて自民党123→113、立憲民主党24→32へ。れいわ新選組2議席を獲得。
【08-02】政府、輸出管理上の優遇措置を受けられる「ホワイト国」から韓国を除外する政令改正を閣議決定。
【08-03】国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」の中止を発表→【09-26】文化庁、補助金の全額不交付を発表。
【08-27】厚労省、年金財政検証で年金水準は30年後に2割減となる見通しを発表。2014年検証から改善せず。
【09-09】台風15号が上陸―千葉県を中心に大規模停電17万戸。
【09-11】第4次安倍再改造内閣が発足。
【09-23】国連気候行動サミットで、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんの演説に注目集まる。
【09-27】関西電力、高浜原発の元助役から関電首脳への資金提供を公表。
【10-01】消費税率8%→10%に引き上げ。
【10-06】厚労省、人口動態統計(速報)を公表。19年の出生数90万人割れへ。
【10-12】台風19号が上陸。
【10-25】菅原一秀衆院議員、公職選挙法違反疑惑で経済産業大臣を辞任。
【10-31】河井克行衆院議員、妻・案里参院議員の公職選挙法違反疑惑で法務大臣を辞任。
【10-31】沖縄・首里城が全焼。
【11-01】大学入試への英語民間試験の導入見送りを正式決定。
【11-12】総理主催「桜を見る会」問題で、追及チーム野党合同ヒアリング第一回を開催。
【12-05】中村哲医師、殺害される。
【12-18】かんぽ生命、保険不正販売の調査結果を公表。
【12-19】IR事業の収賄容疑で秋元司衆院議員事務所を家宅捜索→【12-25】東京地検特捜部が秋元議員を逮捕。自民党を離党。
【12-20】2020年度予算案、2年連続で100兆円を突破し、過去最高を更新。
【12-20】かんぽ生命の不正販売問題処分での情報漏洩で総務事務次官を更迭。
【12-27】自衛隊の中東海域への派遣を閣議決定。

やるべきことに真剣に取り組んでいるのか?

 2019年を振り返ると、政府として本気で取り組まなければならない問題(年金、環境、少子化、災害対応など)をスルーして、自分たちがやりたいこと(対韓制裁、「表現の自由」規制、大学入試の民間導入、カジノ推進、自衛隊の海外派遣など)だけをやってきたことが分かる。

 とくに台風15号で大規模な被害が発生している時に悠長に内閣改造を実施したことなど、飽きれてモノが言えない。その改造内閣から閣僚辞任が相次ぐ事態は、もやはリーダーの資質に係る問題である。

 韓国への輸出規制強化も、どうしてもやらなければならない措置だったのか。選挙前にウケ狙いでやったパフォーマンスではなかったのか。外国人観光客の増加に伴い、対韓ビジネスで儲けている日本企業や日本人も少なくないはずだが、日本経団連にすら「事前に政府から何の相談もなかった」(首脳)。

 「桜を見る会」やモリ・カケ問題を見てもわかるように、自分の支持者や支援者には手厚く利益供与を行うが、それ以外への「配慮」はほとんど眼中にないのだろう。

 経済記者として最も気になるのは、財政問題を考慮して消費税2%引き上げを実施しておきながら、2年連続で当初予算案が100兆円を突破して過去最高を更新したことだ。安倍政権に財政再建を真剣に進める意思はないと考えざるを得ない。

持続可能な社会の構築に向けてやるべきこと

 一つ一つの政治的判断を評価するのは、経済記者の仕事ではないし、個別の問題は専門家に聞くしかない。経済記者としては、企業活動や国家経済・世界経済の流れを俯瞰して眺めてみることが重要だと思っているので、様々な事象を整理して2019年の流れを振り返ってみたわけだ。

 社会の停滞感や手詰まり感を打開するには、リーダーを替えるのが最も効果的な方法であるし、それ以外の方法はないと思っている。もちろん、自分たちが受けてきた恩恵は手放したくないので、その延命に手を貸す人間も多いだろう。

 先の民主党政権時代に彼らが手痛い思いをしたので「悪夢の・・・」と言われるわけで、それを恐れている人も多いかもしれない。人にはそれぞれの暮らしがあるし、将来の夢もある。重要なのは持続可能な社会の構築に向けて、オープンで公正・公平な仕組みを「ある程度の時間」をかけながら「全員参加」でつくっていくことである。