【住宅】<編集後記>住宅市場7つの提言―多極化する需要を掘り起こせ<2017-01-20:日経ホームビルダー2月>(2017-09-21)

日経ホームビルダー2017年2月号.jpg 2017年も残すところ3か月ほどとなった。しばらく未来計画新聞を更新していなかったので、今年に入ってメディアに掲載した主な記事を整理しておく。表題の記事は日経ホームビルダーの新年特集号の企画として依頼された予測記事だ。7人の有識者にインタビューして7つの提言をまとめるとともに、全体のまとめをキーワードにして図版にまとめており、その中には「宅配ボックス」も加えていた。

■ご興味のある方は、日経ホームビルダー「住宅市場7つの提言―多極化する需要を掘り起こせ」(有料会員登録)をご覧ください。

SOUSEIの乃村一政社長との出会い

 有識者7人のうち、日経ホームビルダー編集部からの指名でインタビューしたのは、住宅産業研究所社長の関博計氏と同研究所TACT編集部の布施哲朗氏、住宅生産団体連合会専務理事の小田広昭氏、アキュラホーム社長の宮沢俊哉氏、ハイアス・アンド・カンパニー社長の濱村聖一氏の5人。筆者からの要望してインタビューに加えたのが、ハウスドゥ社長の安藤正弘氏、アルヒ(旧SBIモーゲージ)会長兼社長の浜田宏氏、神奈川工科大学教授の一色正男氏の3人である。

 この一連のインタビューで最大の収穫は、住宅産業研究所の布施さんに教えてもらった奈良県の有力ビルダーSOUSEI(ソウセイ)だった。従来とは異なる新世代のビルダー経営者が登場してきているうちの1人として紹介され、とくに「ITに強い」というので印象に残った。

 たまたま2016年12月に日本建築事務所協会連合会からの依頼で、2016年度日事連建築賞優秀賞を「実業印刷本社ビル」で受賞した奈良県の「プラネットクリエイションズ関谷昌人建築設計アトリエ」の取材で奈良に行く機会があった。日帰り出張だったが、少し時間があったので、ふと思い立ってSOUSEIに連絡すると乃村一政社長に会うことができ、「スマホのような住宅をつくりたい」との彼の夢に大いに共感した。

住宅もソフトで付加価値を付ける時代に

 実はアップルのiPhoneが日本で発売される前の2008年3月に出版した業界研究本「住宅」(産学社)で、筆者は「これからの住宅市場は、好きなときに好きな住宅に住むことができる『iPod』型の住宅市場かもしれない」と書いていた(ちなみに日本でのiPhone発売は2008年7月)。当時は、iPodを見ながら、ハードには標準品を使いながら、自由に音楽や映像コンテンツを入れ替えることで、自分好みのモノがつくるという発想で、住宅をもっと自由に作れないものか?と漠然と考えていた。

 これまでの住宅づくりは、建物(ハード)に付加価値をつけることばかりが考えられてきたため、ものづくりが複雑化し、本来は工業化によって低コスト化を追求するべきプレハブ住宅が高額な高級住宅として売られていることに違和感を感じていた。

 住宅も、ハードをコモディティ化し、ソフトで付加価値を付ける方が、一定レベル以上のハードをできるだけ低価格で供給できるようになるのではないかと考えたわけだ。

 需要層も、夫婦に子ども2人という平均的なファミリー世帯中心から、富裕層、共働き世帯、単身世帯、高齢者世帯、ゆとり世代と多極化している。それに合わせてハードを作るのは無駄が多いし、コストも高くなってしまう。むしろソフトで多様なニーズを吸収できるようにした方が、効率的だろう。

 SOUSEIの乃村社長にお会いして、ようやく自分と考え方が近いビルダー経営者が見つけたという思いだった。

「宅配ボックス」を2017年のキーワードに加えた訳

 「多極化する需要を掘り起こせ」というタイトルの記事も、多極化する需要をハードだけで対応するのは無理があるので、ソフト・サービスを組み合わせるという発想でストーリーを組み立てている。

 ハード系で取り上げたキーワードは、以前から言われていた「高付加価値化」と「ローコスト化」に加えて、「IoT住宅」と「防犯・テレワーク対応」の2つを入れた。とくに防犯・テレワーク対応の注目アイテムとして「スマートロック」「監視カメラ」「宅配ボックス」を挙げた。

 ソフト系では「不動産サービス」「購入リスク低減」「生活支援サービス」「資産運用サービス」「顧客対応マーケティング」の5つ。購入リスク低減では「リースバック住宅」「買取保証付き住宅」、生活支援サービスでは商品クーポンやポイントサービスなどの「会員優遇サービス」や「家事代行・支援サービス」、顧客対応マーケティングでは「SNS活用」「コミュニティづくり」などに注目した。

 「宅配ボックス」が2017年には戸建て住宅でも注目されるだろうと考えた根拠は、政府が推進する働き方改革だ。テレワークなど働き方も多様化して共働き世帯が増えれば、ネットショッピングの普及とあいまって宅配ボックスがマンションだけでなく戸建てに設置されるのも時間の問題と考えた。アキュラホームの宮沢社長にも宅配ボックスの質問をすると「自分も自宅でいま実験しているところで、注目している」との答えが返ってきた。

 2017年はかなりの確率で戸建てでも宅配ボックスが来ると予想していたわけだが、今年に入って日経ホームビルダーで宅配ボックスの記事を3度も書く結果となった。「やっぱり来たなあ…」と思いつつ書いた記事の話はまたいずれ。