【コラム】オジサン、K-POPアイドルのMAMAMOO(ママム)にハマる(2016-04-26)

 今年4月で58歳になった筆者が、半年ほど前からK-POPアイドルの4人組ガールズグループ「MAMAMOO(ママム)」にハマっている。YouTubeに流れている楽曲映像を見ているだけで、楽しめるし元気が出る。昔から音楽は好きだし、いろんなジャンルの音楽を聞いてきたが、いわゆる「アイドル」にハマったのは初めてだ。なぜ、この年でアイドル、それもK-POPなのか。自分でもよく判らないが、「冬ソナ」で多くの日本のオバサンたちがヨン様にハマったのと同じ感覚なのか?

親バカにも程がある?

 ママムを知ったのは、最近の音楽の事情を少し調べようと思ったのがきっかけだ。住宅・建設・不動産分野を取材している経済記者の筆者が、音楽事情を調べ始めたのはもちろん仕事ではない。大学を卒業したあと就職もせずにいた息子が音楽プロダクション会社に就職することになったからである。本人が好きで就職したのだから、それなりに頑張るだろうが、最近の音楽業界の内情が良く分からない。今年になって話題となったSMAPを巡るジャニーズ事務所騒動を見ても何だかドロドロしてそうだし、親バカと笑われても心配なのである。

 息子が音楽業界で働きたいと言い出した責任の一端は自分にもあると思っている。音楽に興味を持ち始めた中学生の頃に、自分も中学・高校時代にバンドをやっていて、メンバーの中に90年代に注目されたシブヤ系サウンドの元祖と言われた「ピチカート・ファイブ」の小西康陽がいたという話をしてしまったからだ。小西とは大学以来、音信不通で大人になって一度も会っていないが、息子としては父親の昔のバンド仲間がプロで成功したと知って強い憧れを抱いてしまったようだ。

 小西とは札幌の中学時代はほぼ毎日一緒に過ごした。小西の実家は印刷会社を経営していて結構、裕福だったので家に遊びに行くと100枚以上のレコードアルバムがあった。バンド仲間でレコードを持ち寄り、ロック、フォークからジャズ、ソウルまで様々なジャンルのレコードを聞きまくった。ライブにもよく出かけた。親たちも中学生をよく夜に遊びに出してくれたと思うが、アルバム「狂気」が発売される直前の「ピンクフロイド」、2005年に亡くなった高田渡の「武蔵野たんぽぽ団」、カレーライスの「遠藤賢司」、松任谷正隆が在籍していた「小坂忠とフォー・ジョー・ハーフ」などが印象に残っている。

 高校は2人とも同じ進学校に入学した。歌も楽器も下手くそだった自分は音楽の世界に進もうなどとは夢にも思わなかったので、小西も当然、プロになるつもりはないと勝手に思っていた。音楽的センスは当時から抜群だったが、音楽の基礎訓練を受けていなかったのでプロは無理だろうと決めてかかっていた。今から思えば、自分は全く小西のことが判っていなかったと深く悔いている。そんな自分の息子が音楽業界で食っていこうしているのだから因果な話だ。

歌唱力で聞かせるアイドルはいないのか?

 小西と別れてから真剣に音楽を聞くことが少なくなった。自分から新しい音楽を探して聞こうということもなくなり、普段に聞くのは中学・高校時代に聞いていたものばかり。ジャズを聞くことが多いが、日本のアーティストだと「はっぴいえんど」、海外でも「CSN&Y」、「ザ・バンド」、「リトル・フィート」など1960〜70年代もの。あとはテレビなどで流れてくる音楽を聞くぐらいで、90年代以降の音楽事情は全く疎い。

 最近のJ-POPのランキングを調べてみると、とにかくオジサンが聞きたくなるような音楽が全く見当たらない。ある程度は予想していたことだが、ジャニーズ系、AKB48系、EXIEL系の3つにアニメ系を加えた音楽でランキングがほぼ埋め尽くされている。いろいろと音源を加工して聞ける音楽にはなっているが、歌唱力や演奏力で聞かせるミュージシャンがあまり見当たらない。率直に言って「音楽」よりも「パフォーマンス」を見せられている感じだ。

 最近は音楽に映像を加えたミュージックビデオの重要性が高まり、「アイドル」の音楽もそれなりに楽しいとは思う。しかし、プロらしい歌唱力や演奏力で音楽そのものを聞きたいというニーズがなくなったわけではないだろう。自分も「アイドル」に憧れないわけではなく、小学校の頃はテレビでザ・モンキーズを夢中で見ていたし、おこずかいで最初に買ったレコードは初期のザ・ビートルズだった。日本の「アイドル」に関心がなかったのは、音楽そのものに魅力を感じなかっただけだろうと思っている。

 しかし、日本にもスーパーアイドルがいなかったわけではない。戦後に登場した「美空ひばり」はアイドルの先駆けと言える人だが、とにかく抜群の歌唱力で何を歌わせても超一流。若者だけでなく大人からも高い支持を得ていた。一度、ジャズを歌っているのを聞いた時は思わず聞きほれた。同世代の「江利チエミ」や「雪村いづみ」もアイドル的な役割を果たしながら歌手として一流だった。ちなみに小西が2002年に雪村いづみの1950年代の音源をリミックスして3枚組アルバムを発売したが、そのあたりの音楽センスの良さはさすがだ。

英、米、韓で実力派ガールズグループが相次いで登場

 世界を見ても「アイドル」と言えば、最近の日本のようにジャニーズ系やAKB48系みたいなグループばかりなのか。そう思って米ビルボードランキングを見ると目に留まったのが、2012年に米国でデビューした5人組の女性ガールズグループ「フィフス・ハーモニー(5H)」だ。米国の音楽オーディション番組でスカウトされたらしく、18、19歳が中心ながら5人とも歌唱力はなかなかのもので、今年になって全米チャートで1位を獲得するなど人気は高い。

 英国では11年にデビューした4人組ガールズグループ「リトル・ミックス」が、今年で活動を中止した人気ボーイズグループ「ワン・ダイレクション(1D)」の女性版として人気を得ている。では、アイドルグループの「KARA」「少女時代」などが日本でも人気を得ていた韓国はどうか。最近は日本と韓国の関係がギクシャクしていたこともあって、日本でデビューするK-POPアイドルも減っているが、相変わらず中国やベトナムなどアジア地区では高い人気を得ているようだ。そこで異彩を放っていたのが「ママム」である。

 デビューは2014年で、欧米でリトル・ミックスや5Hなどの人気が出始めた頃に登場した。メンバーはリーダーのソラ(25歳)、ラッパーのムンビョル(23歳)、同級生のフィイン(21歳)とファサ(20歳)の4人。オジサン好みのレトロ感のあるジャズっぽい楽曲や、ソウル、R&Bから、最近のラップミュージックまで何でもこなす。それが出来るのもガールズグループの中では飛び抜けた歌唱力があるからだ。とくに最年少のファサが歌うジャズをユーチューブで聞いた時は思わず舌を巻いた。

 2015年8月にリリースした楽曲で、ママムは韓国でもそこそこ人気は出ていたが、トップアイドルになるとは思っていなかった。ところが、今年2月下旬に発売したファーストアルバム「メルティング」からシングルカットした「You're the Best」が3月に韓国音楽番組でランキング1位を軒並み獲得。何と一躍トップアイドルグループの仲間入りをしてしまった。音楽番組で見せる本格的な歌とダンス、バラエティ番組で見せるアイドルらしい弾けっぷりのギャップが最大の魅力だ。

日本でオジサンが喜ぶアイドルグループは登場するか

 韓国の芸能事情はほとんど知らないが、韓国のアイドルグループも日本と同様に「音楽プロダクションによって作られたアイドル」というイメージがあった。一般的にアイドルと言えば、ガールズグループなら男性ファン、ボーイズグループなら女性ファンを中心に獲得して人気が高まっていく。日本のAKB48も最近では幅広いファン層に支持されるようだが、当初は秋葉原の専用劇場に集まるオタク男子から人気に火がついたと聞く。K-POPのガールズグループを見ても、男性ファンを狙っているのは明らか。とかく美容整形のウワサが多いのも、似たような感じの美形アイドルが多いからかもしれない。

 そんなK-POPアイドルのなかで、ママムは“ガールズ・クラッシュ”の異名を取るほど同世代の女性ファンの支持で人気を得てきた。mamamooのmooは韓国語で大根を意味し、ママムのファンはmoomooと呼ばれているが、圧倒的に女性ファンが多い。顔もすぐに見分けがつくし、身長も160センチ前後で普通。ファサのスッピン顔を見たら美容整形とも無縁だと納得する。リーダーのソラはたまにステージで日本語を使ったりしているようだが、いま歌っている曲に日本語の歌詞は載せにくそうだし、日韓関係も相変わらず微妙なので、日本デビューはあまり期待していない。これからもユーチューブの映像で楽しませてもらうつもりだ。

 さて、気になるのは日本の音楽業界の現状と今後。音楽配信サービスの登場で、CDは売れなくなっていると聞くし、週刊誌などでジャニーズ事務所騒動の記事を読むと業界の体質はかなり古そうな感じ。今年になって日本のメタル系アイドルユニット「BABYMETAL(ベビーメタル)」が英国などで人気を得たと話題になったが、海外戦略ではK-POPの方が自国の市場が小さいだけに積極的だ。毎年3月に米国で開催される音楽関連ビジネスの大規模展示会「サウス・バイ・サウスウエスト(S×SW)」も、ツイッターを有名にしたことで朝日新聞が“ベンチャー企業の登竜門”として紹介記事を掲載していたが、日本からは音楽関係よりもIT系企業の進出が目立つ。

 今後、急速に少子高齢化が進む日本では、音楽市場を取り巻く環境はますます厳しくなるのだろう。最近も「小田和正」が発売したベストアルバムが最年長記録を更新する68歳7か月でオリコンの週間アルバムランキングで1位を獲得したとのニュースが流れていたが、この手の話は今後も増える可能性がある。ベテランが頑張るのはうれしいことだが、若くてフレッシュな才能がどんどん出てこないと音楽市場も活性化しないだろう。ママムや5Hが韓国や米国で人気を得ているのを見ると、同性からの支持が得られてオジサンが聞いても楽しめるアイドルグループが日本でも出てきても良いのではないか。音楽業界の関係者は気を悪くされるだろうが、何事も調べたことは文章にまとめたくなるのが記者の習性。親バカの戯言と思ってご容赦願いたい。

【追記】息子は音楽プロダクション会社を辞めて、現在は渋谷のライブハウスでブッキング担当として働いている。私には断りもなく、一度、小西にも会いに行ったらしい。(2018-03-08)