【住宅】住宅リフォームに不可欠な竣工図面―家づくりの経済学(2005-08-15)

 住宅リフォームの問題を考える上で、真っ先に議論されるべきテーマは「図面」ではないでしょうか?

 前回のコラムでも触れましたが、自動車を点検・修理する場合には、車種ごとに必ず整備マニュアルが用意されています。整備マニュアルがなくても点検・修理を行うことは不可能ではないかもしれませんが、時間と手間とコストがかかってしまうでしょう。

 建物も基本的には同じなのです。

 図面があれば、どこに問題が生じているか、原因を特定する重要な手がかりになりますし、間取りを変更する場合にも構造的に大丈夫かどうかを検討しやすくなります。コンセントを増設するといった場合も、図面を見ながら簡単に打ち合わせて工事を始めることもできますし、壁に重いものをかけるときも柱の位置がすぐに判ります。

 建物の図面とは、建物を建てるために必要であるのと同時に、維持・管理するために必要不可欠なものなのです。とくに、木造在来工法や2×4工法などのような、ある程度標準化された施工方法で建てる住宅の場合には、詳細な図面は建てる時よりも、むしろ維持・管理するために必要なものであると考えられるのです。
 家づくりに取り組もうとしている皆さんは、建築図面をご覧になったことがあるでしょうか?

 住宅の間取りを真上から見て表現した「平面図」を知らない方はいないでしょうし、建物の外観を真横から見た「立面図」もご存知でしょう。

 最近では、住宅デザインソフトも数多く商品化されており、パズル感覚で間取りを簡単に平面図で書き表すこともできるようになりました。平面図が出来上がると、それに合わせて立面図も簡単に描くことができ、3次元画像処理で外観を立体的に表現したり、内部をウォークスルーしたりする機能もあります。

 しかし、建物の図面はこれだけではありません。敷地における建物の位置を示した「配置図」、建物の土台である基礎の部分、床の骨組み、屋根の骨組みなどを真上から見て描いた「伏図」や、建物の垂直方向に切断したように表現した「断面図」、詳細な断面構造などを書き表した「矩計図(かなばかりず)」、建物内部を立面的に表した「展開図」、水道、下水道、ガスなどの「配管図」、電気や通信・テレビなどの「配線図」など、必要に応じて多くの図面が書かれることになります。

 さらに、図面には「設計図面」と「竣工(完成)図面」の大きく2種類があることをご存知だったでしょうか?建物を建てる前に書く図面が「設計図面」で、それで役所に建築確認申請を行うわけですが、着工したあとに設計図面の問題が判明したり、発注者側の急な要望などで図面変更が行われるのは珍しいことではありません。それらの変更を図面にきちんと反映しておかなければ、完成した建物と図面とが異なってしまいます。完成した建物を正確に書き表したものが「竣工図面」なのです。

 住宅の維持・管理やリフォームにとって重要なのは、間取りや外観を表した平面図や立面図といったお馴染みの図面以上に、建物の躯体構造が判る「伏図」、「断面図」、「矩計図」や「配管図」、「配線図」などの図面類と、材料に何を使用したのかを示した「仕様書」であり、それらが設計変更を反映した「竣工図面」となっていることでしょう。

 6年前(1998年)に友人に設計を依頼し工務店の施工で私も家を新築しましたが、ちょうど同じ時期に知り合いが大手ハウスメーカーに発注して家を新築したので「図面」を見せてもらったことがあります。

 設計図面は、A2サイズの紙に、縮尺100分の1で平面図と立面図などが描かれたものが2枚だけ。私の友人が書いてくれた図面とあまりに違っていたので驚きました。

 私が自宅が完成したあとに手渡された竣工図面は、A3サイズの紙に縮尺50分の1の図面と仕様書あわせて約40枚。もちろん設計図面の段階でも、スケッチや模型の作成を含めて膨大な枚数が書かれており、それらの図面も含めてファイルにして大切に保管しています。

 発注者や設計者が、大工や左官などの施工者に自分たちの意思を正確に伝える方法は、本来「図面」しかありません。2級建築士で大工の棟梁だった私の父が書いていた設計図面も、知り合いが大手ハウスメーカーから渡された図面と大差ないものでした。しかし、父の場合は設計者が自ら施工するわけですし、完成後の建物の維持・管理、修繕工事まで全て面倒を見るのですから、詳細な図面を書かなくても許されていた部分はあるでしょう(廃業したりして面倒を見られなくなったときには問題があるとは思いますが…)。

 しかし、ハウスメーカー・ビルダーとリフォーム業者とで分業化が進み、新築工事を行った大工が維持管理・修繕まで面倒を見なくなった時代になっても「図面」は昔のまま。大工の棟梁が書く図面と、大手ハウスメーカーが書く図面とが大差ないというのでは、なんとも情けない話ではないでしょうか?

 裏を返せば、父と同じように施工後の面倒を見るわけでもなく、簡単な図面を消費者に渡すだけで済ませてきたハウスメーカー・ビルダーは、維持・管理、修繕のことは真面目に考えてこなかったと言われても仕方がないと思うのです。

(つづく)