住宅リフォーム詐欺事件では、その騙しの手口が明らかになってきました。無料点検と称して家に上がりこみ、建物が今にも壊れそうな状態にあると信じ込ませて、工事契約を迫る―。詐欺というより恐喝に近い、強引な手口を使っていたようです。

 ただ、新聞などで大きく報道された被害事例は、認知症の方だったり、一人暮らしの高齢者だったり、いわゆる社会的弱者と言われる人がほとんど。無料点検サービスや訪問販売に気を付ければ、そうした被害に遭わないと思われるかもしれません。

 「リフォーム詐欺事件になんかには引っかからない」―そう思っている人でも、自分の家のリフォーム工事を行おうときに、安心して頼める工務店やリフォーム業者をご存知でしょうか?

 「安心してリフォーム工事を依頼できる業者は知っている」―そうおっしゃる人でも、適切な費用で適切なリフォーム工事を発注する自信はあるでしょうか?

 最初に家づくりを行うときと同様に、安心してリフォーム工事を依頼できる施工業者をどう選ぶのか。決められた予算で満足のいくリフォーム工事を行うにはどうすればよいのか。この2点は、ある意味、新築するとき以上に難しい問題なのです。

 前回のコラムで、「その家を建てた元請け業者が改修工事を行うのが、当たり前の常識だった」と申し上げました。元請け業者であれば、その家をどんな材料を使ってどのように建てたのか、詳細に判っていますから、本来なら最も安心できるはずです。

 自動車の保守・整備を考えてみても、その車を購入したディーラーの整備工場か、メーカー系列の整備工場に持ち込む人がほとんどではないでしょうか?少なくともトヨタ車を、日産車専門の整備工場に持ち込もうとはしないはずです。

 独立系の自動車整備工場もありますが、当然、トヨタ車や日産車などの整備マニュアルと交換部品を入手できるルートを持っていて、整備経験も十分にあるでしょう。

 住宅も基本的には同じ。木造の在来工法と言っても、工法が完全に標準化されているわけではありませんし、使う材料も施工業者によってバラバラです。ディテール(詳細部分)を含めた違いも、元請け業者であれば間違いなく対応できます。

 さらに在来工法では経験豊富でも、2×4工法を詳しく知らない工務店もあります。もちろん依頼されれば、工法が違ってもリフォーム工事を引き受けるでしょうが、米国車を、トヨタ車など国産車の整備工場に持ち込むようなもの。交換部品なども新たに揃えなければなりませんし、一般的には費用も高くなると考えられます。

 私の父も、2×4工法は全く手がけたことがありませんでしたが、1度だけ「ぜひに」と乞われて、某ハウスメーカーの2×4工法で建てた個人病院併設住宅のリフォームを手がけたことがありました。

 病院長と父とは古い付き合いでしたので、病院長の息子の代になって病院を建て替えるときに、父にも建て替えの相談があり、建設コストを考えれば、同じグレードの病院をハウスメーカーに依頼するよりも2割安く、しかも施工品質の高い建物を施工する工務店を紹介すると、ずいぶん勧めたようです。

 実際に建て替え計画を進めていた病院長の息子は、零細工務店に依頼するよりも、ハウスメーカーに頼んだ方が安心できると譲らず、病院長も折れて息子の言う通りに発注することにしたのです。

 しかし、建物が完成して何年も経たずに、その病院長から、父に建物を見て欲しいとの依頼がありました。交通量の多い道路側に面したところに設けられた聴音検査室の防音が不十分で使えない。住居側の玄関と診察室との壁の防音が不十分で話し声が筒抜けとなり、診療にならない。屋根の雪が凍結して雨漏りがするようになった。

 「聴音検査室を道路側に作ったら音がうるさいことぐらい、素人にも判りそうなものだ」―その建物を検査して父もあきれていましたが、結局、屋根や壁の大掛かりな改修工事は元請け業者ではなく、父が引き受けることになったのです。

 居住者にとっては、一度発注した経験があって何年もその家に住み続けてみれば、元請け業者が信用できる業者であるかどうかの判断材料はいろいろと得ることができます。全く知らない業者に改めてリフォーム工事を依頼するよりは、リスク判断もしやすいでしょう。

 元請け業者に多少不満があったとしても、その点を発注者がカバーしながら、元請け業者をできるだけ上手に利用した方が賢明であることは間違いありません。しかし、先に示した事例のように、元請け業者をいろいろな理由で変えざるを得ないケースもあります。

 そのときに最も重要なのが、住宅の「設計図面」です。自動車を整備する場合も、整備マニュアルがなければ手間ばかりがかかったり、修理ができなかったりするように、住宅でも設計図面があるなしが、リフォームに大きく影響するのです。

(つづく)

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