【住宅】新築の時から将来のリフォームを考える―家づくりの経済学(2005-07-18)

 高齢者を狙った住宅リフォーム詐欺事件が、今年5月に埼玉県富士市で発覚して以来、新聞やテレビなどでも同様の事件が大きく取り上げられるようになりました。今回は、住宅リフォーム問題について、考えてみたいと思います。

 これから家づくりを始めようという方に、住宅リフォームの話をしても、ほとんど興味を持たれないかもしれません。

 しかし、住宅リフォームは、家づくりを始めるときから、始まっているのです。

 新聞やテレビで盛んに取り上げられる欠陥住宅問題や住宅リフォーム問題の背景には、消費者が「新築」と「メンテナンス」と「リフォーム」をバラバラに考えるようになってしまったことが原因ではないかと思うのです。

 もちろん、消費者がそう考えざるを得ない状況を作り出したのは住宅産業、さらは国土交通省住宅局など政策サイドの責任でもあります。効率的に住宅を新築することばかり考えてきたツケが回ってきたということなのでしょう。

 「家づくりを始めるときから、リフォームのことを考えておく」―それが、最も有効なリフォーム詐欺対策なのです。

 先日、実家(いまは廃業した工務店)の母と電話で話しているときに、住宅リフォームの話題が出てきました。父が30年以上前に建てた元・大学教授の家に、リフォーム業者が訪れて、床下の状態などを“無料点検”しましょうと持ちかけてきたというのです。

 元・大学教授も、父が工務店を廃業してしまったので、少し、心が動いたのかもしれません。父に電話をかけてきて「どうしたものだろうか?」と相談してきたのです。父は、自分が設計・施工した家の状態が、築後どうなっているのかは十分に把握していますから、「何か、予想していなかった問題が生じたのだろうか?」と驚いて、すぐに見に行ったのです。

 すぐに、床下から天井まで点検したのですが、全く異常なし。「土台もしっかりした状態ですから、何ら手を加える必要はありません」そう元・大学教授に説明すると、すっかり安心して、事なきを得たのです。

 「元・大学教授のような教養のある人でも、“無料点検”などと言われて、コロッとだまされそうになるんだから、怖いわよね」―母は、そう言ってため息をついていました。

 私の実家は、以前にも書いたように、両隣も向かいも、近所に、父が建てた住宅が数多くあり、家を建てた後も、発注者の方々と長いお付き合いをしてきました。

 「建物の改修工事は、元請け業者が請け負うもの」―それが、建築の世界では、当たり前の常識だったのです。

 元請け業者であれば、どこにどんな材料を使ったのか、建物のどこに傷みが出やすいのか、建物の隅から隅まで把握しているわけですから、改修工事を行う場合にも元請け業者に任せるのが、もっとも安心で確実なやり方であるはずなのです。

 ところが、いつの頃からか、住宅を新築するハウスビルダーと、リフォームする住宅リフォーム業者が徐々に分離し始めてきました。ハウスビルダーにしてみれば、手間のかかるリフォームは専門のリフォーム業者に任せて、新築をどんどん手がけた方が、経営効率が良いからでしょう。

 一方、リフォーム工事も、ペンキ屋や水道屋などの専門工事業者にとってみれば、ハウスビルダーや工務店の下請け仕事よりは儲けが期待できるので、新規事業として手を広げてきたわけです。リフォーム工事も、外壁を塗り直したり、古くなった配管や便器を入れ替えたりするぐらいなら、専門工事業者に任せても問題はないでしょうが、土台や柱、壁や窓などの木工事を含むリフォーム工事を大工以外に任せるのはそもそも無理があるのです。

 それでなくても、リフォーム工事は、既存の住宅にあわせて、その場で木材を加工して作業するわけですから、大工にもより高度な技術が求められる仕事です。肝心の大工も、ハウスメーカーの住宅は工業化されて単に組み立てるだけ。在来工法の住宅でも部材のプレカット化が進んで、すっかり腕も落ちてしまったと言われ、本当に優秀な職人は数少なくなっているのです。

 最近では「ハウスメーカーもアフターサービスに力を入れている」といった話も聞くかもしれません。しかし、ハウスメーカーは実際の施工部隊を抱えているわけではなく、新築を担当した大工が、アフターサービスで訪れることはまずないでしょう。

 あるリフォーム業者に聞いた話ですが、ハウスメーカーで新築した建築主が、メンテナンスやリフォームのときにリフォーム業者に依頼する理由は簡単だというのです。

 不具合が生じて急いで直してほしい場合でも対応が画一的で遅い。派遣されてくる職人の質に問題がある場合が多い。結局はリフォーム業者に頼んだ方が「まだ、まし」。

 ハウスメーカー経由で依頼しても、ハウスメーカーの協力リフォーム業者が下請けで来るだけなら、ピンハネされない分、直接リフォーム業者に依頼した方が良いと消費者も判断しているのかもしれません。

 「住宅リフォームは、家づくりを始めるときから始まっている」―そう冒頭で書いたのは、最初に施工業者を選定する時点で、将来、誰にリフォーム工事を依頼しなければならなくなるかが決まってくるからなのです。(つづく)