中古マンションのリノベーション(改修、以下リノベ)物件への注目が高まっている。個人所得の低迷で若い世代を中心に割安感のある中古が評価されるようになったためだ。今後も新築物件の建築費上昇、今年4月に導入された買取再販用中古物件の登録免許税軽減措置で中古の割安感が一段と高まり、市場拡大は続くと予想される。

 リノベ産業も育ってきた。買取再販最大手のインテリックスは、累計1万4000戸のリノベマンションで培ったノウハウを生かして大手不動産会社のリノベ工事を受注したほか、同業のスター・マイカとも今年5月に業務提携。リノベ市場で「マンション新築工事で高いシェアを持つ長谷工コーポレーションのようなポジションをめざしたい」(山本卓也社長)と意気込む。

 東京電力から2012年に京王グループ入りしたリビタは、中古マンションの買取再販事業に加えて、遊休不動産の有効活用へと事業領域を拡大。横浜市から重要文化財のドックヤードガーデンを賃貸し、新しいシェアスペース「BUKATSUDO」を6月にオープンした。リノベで付加価値を高めた物件を自ら運用して安定収益を得るとともに、不動産オーナーへの提案力を強化するのが狙いだ。

 今後の課題は戸建て住宅のリノベ市場をどう育てるかだろう。今月末には5年ごとに実施されている総務省住宅・土地統計調査の最新データが公表される予定だが、住宅ストック数は概数で約6000万戸。居住世帯ありの住宅は約5000万戸で、その6割の3000万戸が戸建てだ。現在のリノベ市場は約600万戸の分譲マンションストックがベースなので、戸建てリノベで更なる市場拡大が見込める。

 戸建て住宅は、テレビ番組に登場する事例を見ても分かるように、壁や床を剥がしてみないと屋根や土台など劣化状態の判断が難しい。マンションに比べて事業採算を読みにくいのが難点だ。

 加えて新築時に完了検査を受けていない住宅では、大規模改修のために建築確認申請をしようとしても門前払いされて工事が難しかった。

 「完了検査に合格した検査済証のない建築物がどれくらいあるかは把握していない」(国土交通省住宅局建築指導課)と言うが、膨大な戸数であるのは間違いない。阪神淡路大震災があった1995年当時で完了検査の実施率は約4割だった。最近では9割近くまで上昇してきているが、95年以前が平均4割、それ以降が平均8割と仮定しても検査済証のない住宅は2000万戸を超える計算で、その大半は戸建て住宅だろう。

 国交省は今月「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」を公表し、特定行政庁(建築確認を行う地方自治体)に通達した。検査済証の有無が耐震改修工事やリノベ工事のネックになっているとの指摘から、検査済証に代わる事後の適合調査で対応する仕組みを整えたわけだ。

 ただ、民間確認検査機関の判断だけで適合調査を実施して建築確認が下りるわけではなく、特定行政庁への事前相談が必須。「門前払いはなくなったが、どれぐらい調査が実施されるかは役所次第」(指定確認検査機関の日本ERI)。安全の確保は不可欠だが、空き家を含めた住宅ストックの有効活用にも配慮した運用を望みたい。(2014-08-12転載)

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