不動産仲介のインターネット取引解禁に向けた検討が始まった。国土交通省が先月「ITを活用した重要事項説明等のあり方に関わる検討会」を設置、年内に結論を出す。すでにソニーが新規事業第一弾として不動産ビジネスへの参入を表明したほか、賃貸住宅の空室を外国人観光客などにネットを使って短期賃貸借契約で提供する新サービスの事業化に取り組む地場不動産会社も現れた。ネット取引解禁は不動産市場を活性化させる起爆剤になる可能性がある。

 本コラムで不動産のネット取引解禁の必要性を提言したのは、ちょうど1年前の13年5月だ。その後、e-Japan戦略のあと停滞していたIT政策の立て直しに向けて政府が6月に世界最先端IT国家創造宣言を閣議決定。10月にスタートした新戦略推進専門調査会の規制制度改革分科会で不動産のネット取引の実現に向けた規制改革が浮上し、国交省でも具体的な検討に乗り出し、今月中にも実証実験を行う計画だ。

 「高額な不動産取引をインターネットで行いたいという消費者のニーズは感じていない。むしろトラブルが増えるだけ」と、不動産業界は相変わらずネット取引には否定的だ。確かに賃貸住宅を選ぶ場合でも物件を見ずに契約する人はいないだろう。しかし、現行制度では現地見学、重要事項説明、契約・決済と少なくとも3回は対面の必要がある。その負担を軽減するために重要事項説明と契約・決済を同日に行うケースも少なくない。

 「重要事項説明の内容をきちんと買主・借主が理解しているかどうかを確認するためにも対面で説明する必要がある」

 国交省の第一回検討会では業界側からこんな主張もあった。しかし、説明内容を正しく理解したかどうかは対面で判るわけではない。むしろITを使えば理解するまで繰り返し説明を受けやすくなるし、対面より理解が深まるという研究結果もあるという。

 中古住宅売買のトラブルを減らすには、第三者によるインスペクション(建物検査)が有効と言われており、対面での書面説明より検査現場に立ち会って説明してもらう方が役立つのではあるまいか。

 東京ディズニーランドのある浦安市の地場不動産会社ベイラインでは、定期借家制度を活用して賃貸住宅の空き家を数日から数週間単位で短期賃貸するビジネスモデルの実現をめざし、政府の国家戦略特区の提案にも応募した。短期賃貸契約でも現行制度では重要事項説明を宅建主任者が対面で行わなければならない。さらに定期借家契約には契約日数の制限はないが、1か月未満の契約には旅館業法による許可が必要で、フロント設置など宿泊施設としての規制がかかる。

 「重要事項説明はテレビ電話などを活用し、鍵やリネンの受け渡しは物件近くのコンビニを使うことでサービスの実現は可能だ。国家戦略特区に指定された江東区などと協議して旅館業法と宅建業法の規制緩和を求めたい」(青山真士ベイライン代表取締役)

 すでに米国企業が事業化した個人所有の住宅や部屋を旅行者などに提供するインターネットサービス「エアビーアンドビー」が世界中に普及し始めている。日本でも業法の規制対象外である個人が自ら部屋を貸し出すケースも出てきた。時代遅れの規制は自らのビジネスチャンスを潰すことにもなりかねない。(2014-08-12転載)

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