新築住宅の消費税率アップに伴う駆け込み需要が先月末で一段落して、住宅業界では中古住宅流通とリフォーム工事受注に力を入れる動きが活発化してきた。中古住宅は個人間で売買する場合は消費税がかからない。政府は、反動減を抑制するために新築住宅と不動産事業者が買い取ってから販売する中古住宅を対象に所得に応じて10万―30万円を助成する「すまい給付金」制度を導入するが、良質な中古住宅を購入してリフォームした方が割安と考える消費者は増えていくだろう。

 今後の成長が期待される中古住宅市場で根深い問題とされてきたのが、不動産仲介の「両手取引」だ。不動産の仲介手数料は物件価格(400万円以上)の3%+6万円+消費税が上限だが、売主と買主の双方から仲介手数料を得るのが両手、どちらか一方から得るのが片手。宅地建物取引業者は1度の取引で2倍の手数料を稼げる両手取引に持ち込みたがる。


 売主から中古住宅の販売を依頼された宅建業者は、国土交通省が指定した公益財団法人が運営する不動産事業者向け情報システム「レインズ」に情報を登録することで、多くの宅建業者の紹介で買主を見つけてスムーズに売買を成立させるのが役目。しかし、両手にしたい宅建業者は、他の業者がレインズを見て買主に物件を紹介しようと問い合わせても「商談中」などの虚偽の理由で断って物件を「囲い込み」する行為が後を絶たない。


 2009年の総選挙で政権交代を実現した民主党は、マニフェストと同時にまとめた「政策集INDEX2009」の中に中古住宅市場の活性化策として「両手取引の原則禁止」を盛り込んだ。政権交代後、民主党本部には全国の宅建業者から抗議の電話が殺到。その反響の大きさを全く予想していなかった民主党執行部は早々に看板を下ろしてしまったと元民主党国会議員は証言する。ただ、業界内だけに隠されていた「両手取引」や「囲い込み」の問題が一般消費者にも広く知られる効果はあった。


 国交省は米国などに比べて10分の1以下の規模の日本の中古住宅市場を育成しようと、昨年6月に業界関係者や有識者による不動産流通活性化フォーラムの提言を取りまとめた。価格など情報の透明化に加えて「囲い込み」のような不透明な商慣習を改善する必要があるとの意見が出され、宅建業界では何らかの改善策を講じる必要に迫られていた。


 今月1日、レインズを運営する4公益財団法人のうち東日本不動産流通機構がレインズの利用規定を改定し、「囲い込み」の原則禁止と処分規定を盛り込んだ。「購入等の申込」などの正当な理由なしに物件紹介を断った場合には、戒告や注意の処分を行い、宅建業者名を広報誌などで公開する。もう「商談中」といった曖昧な理由は通用しなくなったわけだが、果たして業界の自主規制で問題解決できるか。もし失敗すれば、あとは「両手取引の禁止」しか残されていない。(2014-05-16:未来計画新聞掲載)

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