宮城県女川町で駅周辺の中心市街地を造成する工事が本格的に始まった。お盆明けからは工区内の全ての道路を閉鎖し、公道を走れない鉱山採掘用の50トンダンプトラックなど超大型重機を投入。背後の山を一気に切り崩して約200ヘクタールの中心部地区を、商業業務地で約4m、住宅地で約10mかさ上げする。

 東日本大震災で津波被害を受けた市街地の造成工事をスピードアップするため、日本で初めてオープンブック方式によるCM(コンストラクションマネージメント)契約の公共工事が導入された。独立行政法人都市再生機構(UR)が女川町から発注業務を受託し、ゼネコンの鹿島と土木設計コンサルタントのオオバのJV(ジョイントベンチャー=特定共同事業体)と昨年10月にCM契約を結び、中心市街地と離半島部15集落の整備をまとめて行う。


 通常の公共工事の発注は、工事単位ごとに工区内の権利調整・用地買収が完了したあと、専門事業者と契約して測量、設計を実施。工事施工が可能になった段階で競争入札を行い、落札した建設会社と総価請負契約を結ぶ方式だ。ステップごとに入札・契約手続きを行うため時間と手間がかかる。


 CM方式は、多摩ニュータウンなど大規模造成工事の実績のあるURが、公募で集まった事業者から技術審査や価格交渉でコンストラクションマネージャー(CMR)を選定し、測量・設計・施工を一括で発注。女川町・URによる調整業務と並行しながら測量・設計を行い、完了した工区から、改めて価格交渉を行いオープンブック方式による工事請負契約を締結して工事に着手する。通常の発注に比べて大幅なスピードアップが期待されている。
 オープンブック方式は、工事にかかる原価を全て開示し、発注者と第三者の監査法人にチェックを受ける仕組みだ。下請け会社の選定プロセス、発注額、支払額を契約書、帳簿、金融機関の振込証明などでチェックし、四半期ごとの工事代金支払い時には監査報告書の添付も義務付けられる。


 事業プロセスの見える化のポイントは「標準化」だ。URでは、CM方式の標準契約書やオープンブックの標準実施基準などを短期間に開発。CMRの鹿島も、それに合わせて自前の経理システムを標準様式に合わせて現場に導入。下請け会社の選定プロセスの監査に対応するため、新たに国際監査基準に準拠した仕組みも導入した。


 「契約から9か月、新しい仕組みを軌道に乗せるために試行錯誤の毎日。2015年3月末までの女川駅開業をめざし、一日も早い復興を実現しようと取り組んでいる」(鹿島JV工事事務所長の高橋秀充氏)。


 東日本大震災の復興事業では、発注能力も含めた施工能力不足が表面化した。将来予測される南海トラフ巨大地震では、復旧・復興の迅速化をどう図るのか。耐震化などのハード対策だけでなく、縦割りの省庁、業界、企業間での効率的な相互運用性・補完性を高める「標準化」というソフト対策が不可欠である。(2014-05-16:未来計画新聞掲載)

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