【不動産】BEMS普及へ節電行動見直せ(2013-07-17:フジサンケイビジネスアイ掲載)

 猛暑の夏がやってきた。1年半前に原発1基分の節電効果を目標に経済産業省が開始したエネルギー管理システム導入促進事業だが、BEMS(ビル用エネルギー管理システム)の中小オフィスビルへの普及が遅々として進んでいない。目標値に対する申請件数は7月5日時点で8.8%にとどまっており、今年度中の目標達成は絶望的な状況だ。

 当初から中小ビルへのBEMS導入は「期待薄」との見方がささやかれていた。BEMSの節電効果は「見える化」による需給調整の寄与が大きく、テナントの協力が不可欠だ。ところが、日本では電気料金を共益費として定額で徴収する契約慣習が残っており、テナントに節電協力するインセンティブが働かないからだ。


 共益費はビル運営にかかった費用を賃料とは別にテナントが負担する仕組みである。必要な金額だけを徴収しているのであれば、リアルタイムで電気使用量を計測できるBEMSを活用して、欧米のように電気を使った分だけ費用負担する契約に切り替えても問題ないはずだが、日本では大手不動産会社ですら契約変更には後ろ向き。その理由は「実際の電気使用量に比べて高めに設定した共益費がビルオーナーの重要な収益源となっており、契約変更による打撃が大きいから」との見方がもっぱらだ。


 オフィス賃貸市場は、最新設備の大型ビルの供給増加で中小ビルの空室率は上昇傾向にあり、賃料水準も弱含みだ。思い切ってBEMSを導入して共益費軽減をアピールしてもテナントが集まる保証はない。補助金に釣られて投資しても、結局は共益費が減って収益が悪化するだけと判断しているのだろう。


 こうした状況に危機感を持った東京都が中小テナントビル向けのBEMS補助金制度を6月に立ち上げた。経産省の補助金と併用するとビルオーナーの費用負担は4分の1で済むという大盤振る舞いだ。しかし、自らの収益確保のためにBEMS導入に消極的な中小ビルに巨額の税金を投入する意味があるのだろうか。


 「ビル賃貸はサービス業。顧客志向のアイデアと自ら汗をかく決意で、節電効果は十分にあげられる」―日本郵船グループの郵船不動産では、東日本大震災直後の2011年4月からビル共用部の節電で削減された電気料相当額をテナントに還元している。


 11年度はテナント・オーナー双方の努力で得た果実を分け合うことで、目標15%を大きく上回る30%削減を達成し、東電管内のオフィスビル6棟で約1300万円をテナントに還元した。12年度は電力料金の値上げが実施されたため、テナントとビル全体の節電目標を共有し、目標達成を前提に電力基本料金契約の見直しを実施。ビル8棟で年間2000万円をコスト削減して値上げ分を吸収した。


 まだ暑い夏が続く。BEMSは道具で設置しただけで効果が上がるわけではない。実際に節電行動を起こすのはわれわれ自身である。


■追記:BEMS導入を補助するエネルギー管理システム導入促進事業費補助金は、復興関連予算を使って「全国向け事業に関わる基金」約1兆1570億円を使って行っていた。東日本大震災の復興とともに日本経済の再生を図る必要があるとして手当されたものだが、復興関連予算の流用批判を受けて、2013年7月2日に使途の厳格化の徹底を図ることから見直しを実施。BEMS、HEMS(ホーム・エネルギー管理システム)の補助金ともに執行見合わせと不用残高の国庫返還を通知した。


 経済産業省は、9月13日付でBEMS、HEMSの補助金事業の打ち切りを発表。BEMS補助金による普及促進効果がどの程度発揮されたのかは検証されることなく、うやむやのままとなった。


 その後、2013年度補正予算で「住宅・ビルの革新的省エネ技術導入促進事業費補助金(HEMS機器導入支援事業)」が復活し、2014年3月から事業が開始された。ただし、対象は家庭用だけで、BEMSへの補助は行われていない。
(2014-05-08:未来計画新聞再掲・追記)