もう半年以上も未来計画新聞の更新をサボっている。新聞や雑誌には記事を書いていたが、このブログに記事を書く気持ちになれなかった。その間に漠然と感じていたことがある。「未来にとって平和って大切なんだ」と。人を信用できなくなったり、憎んだり蔑んだりする気持ちが強くなると、未来を真剣に考えようという気持ちになれないものだ。勝つか負けるか、裕福になるか貧乏になるか、そのようなことばかりを考えていて、自分たちの未来を切り拓くことはできるのだろうか。

 バブル経済が崩壊したあと日本経済の停滞が続くなかで、未来のことを考えようと、このブログを立ち上げたのは8年前の2006年である。ちょうど第一次安倍内閣が発足した年だ。自由な発想で自分の専門分野以外の記事も書いてみようと思い、かなり好き勝手に書かせてもらってきた。商業メディアに記事を提供する場合は編集者の企画意図もあるし、書けないことも出てくる。何の制約も受けずに記事を書くことはある意味、楽しみであった。


 私自身は建設、住宅、不動産などの産業をメーンに取材している経済・産業記者だ。商業メディアから依頼される記事のほとんどは専門分野に関するものだが、未来のことを考える時には政治、外交、安全保障、マクロ経済などの問題も避けては通れない。自分なりの見方を置いたうえで未来を予想することになるが、その時に東日本大震災のような巨大自然災害を想定することはあっても、原発事故も、そして戦争を想定して未来を考えることはなかった。


 人類の長い歴史を振り返った時、世界各地では戦争は絶えることなく起きていて、平和な時期が続く方が珍しかったという人がいる。戦争で巨万の富を築いた人や企業もいたし、その富や資源で経済を発展させた国もある。戦争によって科学技術や産業が飛躍したのも事実だ。戦争は人類の経済発展に少なからず寄与してきたのかもしれない。


 そうであったとしても、戦争を想定して未来を考える人はどれぐらいいるのだろうか。どの国でも、万一の戦争に備えて軍事力を保有しているし、戦争が起きる可能性を排除するのは難しい。だからと言って南海トラフ地震のように「30年以内に起きる確率は70%」といった予測に基づいて、戦争に備えている人はまずいない。誰も戦争が起るとは思っていないから、真っ先に攻撃対象となるであろう東京への一極集中も都心居住も進むのである。


 もちろん国際情勢の変化に応じて防衛計画や集団的自衛権についても見直す必要があるのであれば、きちんと手続きを踏んで国民の合意を得て進めれば良い。いろいろな事態を想定することは不可能ではないし、そのための準備をすることも必要だろう。しかし、戦争後の未来となると残念ながら私には全く想像がつかない。戦争して必ず勝つという保証がなくても、負けることは誰も想定していない。もう一度、戦争に負けた時に日本がどうなるのか。巨大地震のような被害想定を事前に策定しておくこともまず不可能だ。


 重要なのは「負ける戦争はしない」ことかもしれない。そのために米国や友好国との同盟・連携強化、集団的自衛権の行使、防衛力の強化など考えられる手を打つ必要があるのだろう。そうすることで日本は二度と戦争には負けないのか。一般市民はもちろん、自衛隊員にも戦死者を出ないようにできるのか。核シェルターが必要になることはないのか。東京一極集中のリスクは減らさなくても良いのか。他にも考えなければならない問題は山のようにあるだろうが、そのような未来を考えるために「未来計画新聞」に記事を書くつもりはない。


 私程度の記者がブログにどんな記事を書いたところで、さほど気に留められることもないとは思っている。そんな私でもこの1年ほどは好き勝手に記事を書くのがやりにくい空気を感じ始めている。単なる思い過ごしと言われるかもしれないが、日本国憲法を取り巻く最近の状況を見ていると不安を覚えてしまうのだ。


第二十一条  集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

○2  検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。


 私が好き勝手に記事を書いてブログに掲載できるのも、憲法で表現の自由が保障されているからだ。日本国憲法が施行されて67年が経過したが、これまでは憲法に書かれている通りに表現の自由が保障されてきたから、安心して原稿を書くことができた。その憲法の解釈が政権によって簡単に変更できるようになれば、いつ表現の自由に関する解釈が変更されてもおかしくはない。


 「戦争なんて起きるはずがない。何を戯言を言っているのか」と思われるだろう。それでも、未来を語ることが苦しくなった。現在の延長線上で未来を予測しても、その通りにはならない可能性の方が高いのではないかと感じ始めている。それは一つの時代が終わりに向かって進み始めたということなのかもしれない。果たしてそれがどのように訪れるのか。現時点では何も想像できないが、「終わりの始まり」を確かに感じている。

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