2013年に入って2か月間も未来計画新聞を更新せずにいたが、別に記者活動を停止していたわけではない。このところは株価や為替だけでなく、経済活動も徐々にではあるが動きが出てきた印象はある。アベノミクス効果が様々なところに波及し始めているのかもしれないが、今後の動きを注視していく必要があるだろう。

日米構造協議のB-TRONパソコン問題の記事はお蔵入りに

 安倍首相はTPP(環太平洋経済パートナーシップ協定)交渉に参加する意向を固めたようだ。未来計画新聞でも、2013年1月1日付けで、TPP問題に関連して1995年の日米自動車摩擦のことを振り返る記事を掲載した。TPP交渉に参加する以上は積極的に交渉をリードするぐらいの意気込みで臨んでほしい。

 先の日米自動車摩擦の記事の最後には「つづく」と記載してあったが、続きを書くのは止めにした。半導体摩擦、自動車摩擦と来れば、最後は1990年の日米構造協議の中で現場記者として関わったB-TRONパソコン問題も書くつもりだった。しかし、未だに様々な見方があって、差し障りがありそうな内容が多いようだ。

 今年の情報サービス産業協会の賀詞交歓会に、当時の通産省の情報処理振興課長だった明治大学研究・知財戦略機構特任教授の林良造氏が来ていて、日米構造協議の裏話を聞くことができた。記者クラブで一緒だった通信社の記者からは「ほとんど知られていない話だから、ぜひ書いてよ」と勧めてもらったが、「今さら実名を出して書くことは止めた方が良い」という反応の方が大半だった。TORN開発者の坂村健東京大学大学院教授も第一線で活躍されているので、蒸し返す話でもないかもしれない。

 「まあ、日米構造協議は、他にも事情を知っている人も多いので、B-TRONの真相もいずれ明らかにされるだろう」と思っていたら、日経新聞の「私の履歴書」に3月から元米通商代表部代表だったカーラ・ヒルズ女史が登場した。日米構造協議の時の米国側の交渉責任者である。果たして、どんな日米交渉秘話が語られるだろうか。

最初からTPP交渉の足を引っ張るのは…

 2月に国土交通省の現役官僚と意見交換している時にも、TPP問題の話題になった。
 「東京の地場不動産会社のオーナーに会った時に、アベノミクスで不動産市場に集まってくる資金を活用するためにも、TPP参加で外国人が日本にどんどん流入してくることは大歓迎だと言っていたが…」と私から水を向けてみた。
 「確かに、そう考える不動産会社もあるだろうが、自分はTPPには慎重だ。まずはFTAで実績を積むことが先。一足飛びにTPPというのは危険だろう」と、消極的な意見だった。

 交渉ごとは、持ちかける方が何らかの思惑を持っているのは当然である。持ちかけられる方は受け身にならざるを得ないので、どうしても「何か落とし穴がないか」と慎重になってしまう。これまでの日米間の経済貿易交渉は、米国から仕掛けられるケースがほとんどだったから、日本は受け身に回って柔道で言えば返し技を狙うしかなかった。自ら何も仕掛けもせずに、交渉力が付くはずがない。

 TPP交渉では、当初から日本に不利と分かったなら止めれば良いといった意見が聞かれる。どのような交渉ごとにも決裂という選択肢はあるわけだが、最初から決裂ありきで臨んで交渉が成功するだろうか。国内の反対勢力も強く、日本に不利な材料が少しでも出てくれば、すぐに交渉離脱との声も出てくるだろうが、政府が覚悟を決めて交渉のテーブルに付くと決めたならば、最初から足を引っ張るのは避けるべき。具体的な中身を見てから判断しても遅くはない。

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