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「東日本大震災から1年を振り返って」と題した小冊子をまとめた。日本不動産ジャーナリスト会議と一般社団法人IT記者会の有志7人で記事を書いて残すことにしたものだ。被災地を取材したレポートや自らが主催した被災者支援イベントの報告など記者それぞれの視点で書いているほか、発災直後の社会の動きもコンパクトにまとめた。筆者は「東日本大震災から国土マネジメントのあり方を考える〜建設業が果たす役割とは?」と題する記事を書いた。1995年の阪神・淡路大震災当時と現在を比較しながら、「地域密着型労働集約」産業である建設業が施工能力不足に陥りつつある現状を分析した。国土交通省でも被災地での施工確保対策を打ち出し始めているが、上手く機能して被災地の復旧・復興に寄与するかどうかは、引き続き取材して検証していきたいと考えている。
 ―小冊子の頒布はIT記者会事務局へどうぞ。

 筆者の記事を少し紹介すると、今回は記録として残すことに重点を置いて、現状分析を中心に一般論的な話を書いた。昨年11月に被災地を取材して施工能力不足が復旧・復興の妨げになるという問題意識を、データや被災地取材などに基づいてまとめている。

 もちろん本格的な復旧・復興工事はこれからなので、実際にどのような問題が生じるかは判らない。被災地の建設会社と被災地外の建設会社がJV(共同企業体)を組む「復興JV」制度の試行も、上手く機能して施工能力不足を補うかもしれないが、実際には動かしてみるしかないだろう。

 記事をまとめる段階で、日本工業新聞(現・フジサンケイビジネスアイ)時代の1999年1月に執筆した阪神・淡路大震災を検証する記事を読み返してみた。発災から4年が経過して、被災マンションの建て替え、被災企業への公的融資、被災自治体の財政、企業の防災対策、建築基準法改正、不動産証券化や住宅販売での第三者による地盤・建物評価など、地震リスクに関する様々な問題を幅広く取り上げ、総文字数5万字もの記事を書いていた。

 大震災の後、時間経過とともに復旧・復興の局面は変わっていく。東日本大震災は、発災してまだ1年であり、これまでは「被災者や被災地への支援をどうするか」「復旧・復興をどうするか」に焦点が当たられていた。しかし、今後は検証すべきテーマも変化し、個別具体的な問題が増えていくことは間違いない。

 新聞社時代のように取材費もあって、取材に専念できる環境があるわけではないので、東日本大震災でどこまで細かな取材が続けられるかどうかは判らないが、引き続き阪神・淡路大震災の時の知見を生かしながら取材を継続していきたいと考えている。

「東日本大震災から国土マネジメントのあり方を考える〜建設業が果たす役割とは?」でまとめあ主な内容は下記の通り。
○施工能力不足が復旧・復興工事の足を引っ張る
○阪神・淡路大震災の発生当時に比べて国内建設需要は半分に
○東日本大震災の発生で東北6県の建設投資額は前年度比2倍に急増
○応急普及工事でインフラは仮復旧したもののガレキ撤去は進まず…
○復興特需に戸惑う地元建設会社―入札不調が相次ぐ
○過去最大の平成24年度予算で被災地の施工能力不足は深刻化?
○なぜ復興道路の建設が三陸沿岸地域の復興のシンボルなのか?
○復旧・復興工事から見えてきた国土マネジメントの4つの論点

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