東日本大震災から半年間、仕事の依頼が激減して専業主夫に近い生活を送りながら「稼ぐこと」の意味を考えた。昔から「働かざるもの食うべからず」(新約聖書の言葉らしいが…)と言われてはいるが、働いたからといって必ず食えるほど稼げるとは限らない。自分がやってきたことが「稼ぐ」に値することなのか?本当に人の役に立っているのか?「食う」ためなら、どんな仕事でもやるべきなのか?東日本大震災で仕事を失った方々や、学校を卒業しても就職できずにいる若者たちには申し訳ないと思いつつ、のん気にそんなことを考えていたら、あっという間に時間だけが過ぎた。いまや記者でなくても当事者が自らブログやソーシャルメディアでいくらでも情報発信できる時代だ。記者が記事を書くことの意味はどこにあるのだろうか。

 未来計画新聞を更新していなかった3か月間、全く仕事をしていなかったわけではない。4月下旬に続いて7月中旬にも被災地を取材して雑誌などに寄稿したり、単発の仕事は引き受けていた。日本不動産ジャーナリスト会議の事務局として研修会には必ず出席し事務処理をこなす。自分の会社の経理処理も、税務署に事情を説明して、何とか相談しながら済ませた。もちろん興味の赴くままに、あちらこちらへと取材にも出歩いていたので、いろいろと忙しくはしていた。

 ただ、最近では何のために取材するのかが分からなくなってきたというのが正直なところだ。建設・住宅・不動産市場が活性化され、消費者から信頼され、そこで働く人たちが誇りを持って働いて正当な報酬を得られる環境づくりに貢献したいと考えてきた。そうすれば自分の食い扶持ぐらいは何とか回ってくるだろうと思っていたが、世の中、それほど甘くはない。

 自分の活動が社会にとって役に立っているのか?自分が記事を書くことが社会的に意味のあることなのか?自分が正しいと考えていることが間違っていないのか―。できるだけ多くの関係者を取材して意見を聞き、関係する本や資料を調べて情報発信することを記者の役割だと考えてきたが、取材活動のための経費も稼げないような体たらくでは、ジャーナリストを名乗るのもおこがましい話である。

 大学を出て新聞社に入社して以来、実は記者以外の仕事をやったことがない。自ら営業活動をしてカネを稼いだ経験がほとんどないのだ。フリーになってからも自分から記事や企画を売り込んだこともない。依頼された仕事を黙々とこなす職人みたいな生活を続けてきた。それで何とか食ってこれたわけだが、いまや記者が記事を書くだけでは稼げない時代になっている。

 新聞社に入社当時、産経新聞経済部から日本工業新聞に移ってきたベテラン記者がこう言ったことをよく覚えている。
 「記者にとって大切なのは、目配り、気配り、心配り。取材相手にどれだけ気持ち良くしゃべってもらうかが重要だ」
 大手ゼネコン首脳に、営業の極意を聞いた時にも、同じような話を聞いた。新聞記者も営業マンも本質は同じなのかもしれないが、やはり自分には営業の資質が欠けているように思える。

 もともと未来計画新聞は、自分自身が本当に書きたいことだけを、誰に遠慮なく書くために開設した。だから、3か月更新しなかったからと言って、誰から文句を言われるわけでもない。記者としては原稿料にならない記事を書くのは、モチベーションが高くなければ書けないものだ。自分のプレゼンスを高めるために書くと思えば、なおさらである。だからと言って、記者を名乗る以上は稼げるかどうかは別として、とにかく書き続けるしかない。記者が記事を書くことの意味とは、自身の存在証明みたいなものである。

3か月間で20?減量して、10年分の体重増をリセット

 どうも泣き言と言い訳ばかりになったので、そろそろ切り上げるが、この3か月で大きく変わったこともある。記者活動とは全く関係ないことだが、自分の体重を20?落としたことだ。

 10年前に新聞社を辞めた時にタバコを止めたのに加え、現役時代ほど取材に飛び回らなくなったこともあって、もともと90?以上あった体重が増え続けていた。途中まで出していた活動報告葉書に半年ごとの私の顔写真を掲載していたが、年々、顔が丸くなっていた。

 3か月ほど前、何度か取材させていただいている民主党の中村哲治参議院議員のツイッターを見ていたら、炭水化物と糖質の摂取を制限する「かまいけ式食事術」を紹介していた。「働かざるもの食うべからずとも言うし、米や小麦の飯を食べるのを止めてみるか…」と、ふと思い立ったのがキッカケだ。

 始めてみると、あっという間に10?ほど体重が落ちた。そのあとは、朝早く1時間ぐらい1?のダンベルを両手に持ってウォーキングを続けている。ちょうど3か月で、新聞社を辞めた時の体重95?に戻って、この10年間をリセットしたような気分だ。久しぶりに会った不動産経済研究所の高橋取締役編集部長からも「すっきりして、むしろ健康的になった感じだ」と言っていただいた。今後も体調に気をつけながら、記者活動を続けて、徐々に書くペースが上げていこうと思っている。

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