建設業界では、復興に向けて緊急災害対策本部を立ち上げて取り組みをスタートさせました。今後はスピード感を持って復興需要を立ち上げる必要があると思います。財政状況も厳しく、日本経済を取り巻く環境も良いとは言えませんが、このままでは日本社会を覆っている閉塞感は深まっていくばかりです。被災者支援と復興対策を進めながら、将来を見据えて日本全体が元気になるような経済対策も講じなければ震災復興もなかなか進まないのではないでしょうか。
さいたま市には福島県双葉町の方々が避難されてきました。まさに戦争当時の集団疎開と同じです。ただ、戦争の時と違うのは、福島原発の処理が終わったとしても、地元に戻って生活再建できるかどうかが不透明なことです。チェルノブイリ原発事故のような事態も覚悟する必要があるかもしれません。津波被害で壊滅状態の街も同様ですが、地元を離れて生活再建するとなれば大変な困難が予想されます。
被災者の方々には、災害弔慰金支給法に基づいて生計維持者が亡くなった被災者には500万円の支給が行われるほか、阪神淡路大震災後に制定された被災者生活再建支援法で住宅全壊に100万円、住宅再建で最高200万円が支給されます。全国から義援金もどんどん集まっていますが、阪神淡路大震災で配られた義援金は親を失った子供で100万円、その他の被災者でも10万円程度と聞きます。他にも支援はあるでしょうが、生活再建には十分とは言えません。
東北地方太平洋沖地震の復興には、阪神淡路大震災以上の長い時間がかかることが予想されます。日本の財政状況、経済状況も当時とは大きく異なります。雇用情勢も深刻です。少子高齢化が進んでいる東北地方では、経済活動の規模縮小が一段と進む懸念もあります。そうした厳しい状況で、仕事をつくり、働くことで生活再建が果たせる環境を整えていかなければ、本当の意味での震災復興は望めません。
失われた20年を振り返ると、従来型の日本システムが行き詰まっていることは明らかです。あらゆる制度や仕組みの再検討は必要でしょう。福島原発事故の報道を見ていても、国民の安全を優先するよりも、今後の原子力政策への影響をできるだけ小さくしようとの思惑が働いている印象がありました。福島原発の処理が終わらない段階で、東京電力がお詫びのテレビコマーシャルを流し始めたのも、今の事態さえ収拾すれば元に戻れると思っているからでしょう。
復興対策が進めば、日本経済は震災前の状況に戻り、それをきっかけに景気が良くなる―そのような明るいシナリオを描くことはできるのでしょうか。被災地の住宅や道路などのインフラを元に戻すだけでは、東北地方の経済も、日本経済全体も復活させることは難しいのではないかと思います。失われた20年の時間を一気に取り戻すぐらいの気持ちで、REVIVAL(復興)ではなくREBORN(新生)に取り組まなければ、この大きな困難を乗り越えられないのではないでしょうか。
震災復興後の日本の姿をどのように描くのか―。当面の復興需要の反動が出ると予想される2年後を視野に本格的な議論を始めてほしいと思います。