2009年度の第2回囲碁マンガ原作大賞でグランプリに輝いた「玉精公記」(著者・大石直紀氏、小学館文庫、本体476円)が小説化されました。原作者の帯坂篁太郎氏は、前田建設工業の経営管理本部総合企画部長兼CSR・環境部長の大川尚哉さん。「三種の神器」である八咫鏡(やたのかがみ)、八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)、草薙剣(つさなぎのつるぎ)のうち、八尺瓊勾玉が「碁盤(&碁石)」だったという奇想天外な設定から、碁盤に導かれて織田信長が天下統一を果たしていくストーリーが展開。史実と空想が見事に融合したエンターテインメント小説に仕上がっています。

 初版が出たのは今年7月。ちょうど本執筆に忙殺されていたため読む時間がなかったのですが、ようやく手に取ると面白くて一気に読み終えました。小説化が先行しましたが、マンガの原作として書かれているだけに、アニメなどでビジュアル化されると一段と面白くなりそうです。

 私が大川さんにお会いしたのは今年3月。岐部執行役員の後任としてご挨拶しただけでしたが、もとは“技術士”の資格を持つ土木エンジニアです。その大川さんが玉精公記を執筆するきっかけは、小説のあとがきにもあるように、前田建設が社会貢献活動の一環として日本棋院の囲碁普及活動に協力することになり、その仕事を大川さんが担当することになったからでした。

 近年、若年層の囲碁離れが進み、日本棋院では危機感が高まっていました。2001年にテレビアニメになった人気漫画「ヒカルの碁」が大ヒットしたものの、ブームは長く続きません。そうした中で、2004年6月に加藤正夫名誉王座が理事長に就任し、本格的な日本棋院の改革に乗り出しましたが、半年後の12月に急逝してしまいます。

 加藤さんがお亡くなりになる直前、前田建設前会長の前田又兵衛さんを訪ねていました。前田さんは囲碁好きで有名ですが、2005年2月に日本棋院の副理事長に就任される予定だったので、棋院改革への協力を依頼しにきたのでしょう。前田さんの部屋には、いまも加藤さんの写真が飾られています。

 経済界にも、かつては囲碁好きが多くいました。大手自動車メーカーの役員から「週2回は、インターネットで囲碁の対局をするので、その日は夜回り取材に来るな!」と言われたこともありましたが、最近は囲碁の話題もあまり聞かなくなったように思います。

 大川さんも、社会貢献活動で日本棋院の担当になるまで囲碁はやらなかったようですが、それでも囲碁のゲームとしての面白さを感じさせる素晴らしい原作を書き上げました。建設業界も、日本棋院と同様に様々な構造的な問題を抱えているわけですが、新しい発想や知恵を外部から積極的に導入して思い切った改革を進めていただきたいと思っています。

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