【不動産】既存の住宅産業をどう破壊するか!―ハ会第2回シンポ、新築の過剰供給問題を考える(2010-07-28)

 ハ会主催の第2回シンポジウム「新築バンザイ!?」が7月27日に開催された。人口減少が進むなかで、相変わらず新築住宅が大量供給され続ける現状に対して「新築総量規制」と「タワーマンション建設禁止」の視点からパネルディスカッションを行った。なかでも新築の過剰供給問題の本質を、さくら事務所代表の長嶋修氏は「業界団体」にあるとズバリと言い当てていた。前日の26日に開催された社会資本整備審議会住宅宅地分科会で、住宅生産団体連合会副会長の矢野龍・住友林業会長のピント外れ(?)なプレゼンを聞いた後だっただけに、長嶋氏の指摘に強く共感した。ただ、経済・産業政策の専門家が少ないので、具体的な政策アイデアまで落とし込めていないのが残念。自分も建築学科出身だが、建築系のパネラーが多いと仕方がないのかあ…。

人口減少が進むなかで空家の急増にどう対応するのか?

 第2回シンポのテーマは“新築バンザイ!?”となっているが、問題意識は「もう、新築は要らない!」。人口減少時代に入り、2015年には世帯数も減り始める状況では、新築を作り続けても空家がますます増えるだけ。防火・防災対策、治安対策などの社会コストが増大するのは必至で、社会実験などと悠長なことを言っていられる状況ではなくなりつつある。

 今回のシンポは2部構成で、1部のテーマが長嶋氏が提案した「新築総量規制の導入」、2部がリビタ常務の内山博文氏が提案した「タワーマンションの新築禁止」。6月の第1回シンポは少し遠慮した感じだったが、今回は反対意見が続出しそうなテーマを正面から議論して良かった。とくに1部のテーマは、不動産業界にとってはバブル崩壊を招いた悪夢の融資総量規制を連想させるところが上手いと感心した。

 1部の議論では、ツイッターからの参加者から新築住宅を規制すると価格が高くなって消費者にとって損といった意見も出た。それで高くなってしまう新築しか作れない住宅供給者は淘汰されていくだけ。規制が強化されても、適正な価格で良い新築を作り続けるところはあるだろう。それによって良い中古住宅、良い賃貸住宅が供給される環境も整っていくのではないか。

日本が抱える住宅問題に業界団体は無関心?

 本来なら、住宅業界で、ストック型住宅市場に対応した産業構造の転換を進めるべく業界ビジョンを描くべきだろう。しかし、相変わらず新設住宅着工戸数年間100万〜110万戸が“巡航速度”と言い続けている。

 審議会でも、委員たちが「低所得の若年層と75歳以上の高齢者の住宅問題をどうするか」「今年で65歳になった団塊世代に10年後に備えた住まいの準備をどう進めてもらうか」「急激に増えつつある空家問題にどう取り組むか」といった議論を展開するなかで、住団連の意見はあくまでも業界の立場を表明しただけ。

 「少しは今後の住宅業界をどうするのか?といった話をしてくれると思ったが…」と、さすがに国土交通省のある幹部も失望していた。確かに長嶋氏が指摘したように、業界団体に任せていても、その主要メンバーの利益を主張するだけで、いま社会が直面している問題などお構いなしである。

 審議会の専門員の福岡市都市局長からは、福岡市内にある空家の中で、とくに危険な住宅約100戸について取り壊しを要請したが、約50戸はまだ放置されているとの報告があった。今後も、どんどん新築を作り続けるのなら、放置自動車問題に取り組んだ自動車業界のように、これから急増する空家問題の解決策を業界団体で考えるぐらいの姿勢を見せる必要があるのではないか。

居住コストの「見える化」に業界団体が取り組まないのは何故か?

 2部のタワーマンション建設禁止は、残念ながら途中で何を議論しているのかが分からなくなってしまった。住まいは、基本的に個人でコントロール可能な範囲で作ったり、借りたりすべきだと考えている。マンションも万一、問題が生じても住民だけで問題解決できるのなら良いが、処理しきれない場合はどうなるのか?

 今回のシンポでも指摘されていたが、住宅に関連するコストが必ずしも消費者に「見える化」されていない。住宅を購入する時の費用ばかりが強調されて、その後の維持管理費がどのぐらいかかるのかが分からないので、目いっぱいに住宅ローンを借りて、買った後は放ったらかしになってしまう。

 もう7年も前に、私は「居住コスト」という考え方で、居住に関わるコストの「見える化」を提言した。その後も、折に触れて言ってきたつもりだが、住宅業界から居住コストの見える化を進めようという声を聞いたことがない。タワーマンションも、解体・廃棄まで含めて居住コストを見える化して、「区分所有法」の下で住民たちの自己責任の範囲で住み続けられる居住形態なのかを改めて検証する必要があるのかもしれない。

 蛇足で一言。長嶋氏から「これからは工務店の淘汰も進むのではないか?」との発言があったが、なぜ、新築大量供給型のハウスメーカーというビジネスモデルには言及しなかったのか?大手ハウスメーカー出身のパネラーは、新築総量規制よりも「売逃禁止」を提言していたが、工務店は簡単に潰れても、大手ハウスメーカーだけは必ず生き残るという意味か?ところで、スムストックの資産評価って、元施工企業が倒産しても影響ないのかな?